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酔いどれ男のさま酔い飲み歩記~第39回「神戸新開地の個性豊かな酒場と酔客」

「一人酒」、それは孤独な酒飲みのように聞こえるだろうが、実はそうでもない。私は一人酒という言葉を酒場で飲み歩く時に使っている。にぎやかな雰囲気に包まれれば、その店に居る人は全員、飲み仲間だ。

一人酒ができなくなって幾歳月・・・ついに再開の日を迎えた。が、本当の一人酒はこれからだ。さあ、体験談エッセイを書こう。タイトルは、酔いどれ男のさま酔い飲み歩記。第39回「神戸新開地の個性豊かな酒場と酔客」である。

はじめに

大阪では何度となく飲み歩きをしてきたが、お隣の神戸市で飲んだことはほとんどない。観光都市というイメージが強いのだろうか。でも、同じ関西エリアにあるのだから、大阪と同じようなディープな大衆酒場がきっとあるはずだ。

神戸といえば、今は元町や三ノ宮がメインになっているが、かつて繁華街として有名だったのは新開地だ。その昔は東の浅草、西の新開地とまで言われていたという。浅草と並び称される地。ならば、足を踏み入れてみるしかないだろう。

新幹線の新神戸駅から地下鉄で出発だ!

湊川公園「世界長佐藤商店」~自分で作るお湯割りで口開け

新神戸駅からターミナルの三宮駅を過ぎ、合わせて4つ目にある湊川公園駅。新開地への北側の玄関口にあたる。ここで降りるが、乗降客はあまりいない。

湊川と言えば、歴史好きなら「楠木正成」の名が浮かぶだろう。湊川は正成が足利軍と最期の戦いをした地だ。「七度生まれ変わって朝廷の敵を倒す」と言い残して壮絶に散った人生だった、私流にその言葉を借りれば「何度生まれ変わっても飲み歩く」だな。

余談はさておき、早速口開けといくか。

まずは湊川公園駅からほど近いところにある立ち飲み。新開地界隈に何軒かある「世界長」を屋号とする店の一つ。「佐藤商店」という酒場だ。店員はポロシャツ姿の兄さんだけ。どこかダルな雰囲気が漂っている。

店にメニューはない。店内のホワイトボードや短冊を見て注文するようだ。まずは芋焼酎のお湯割りを頂戴する。出てきたのは焼酎の中身とお湯。お湯割りを自分で作るスタイルというのは、おそらく初めての体験ではないだろうか。

目の前の厨房には小皿もの、大皿料理が並んでいてどれも美味そう。その中からタケノコの煮つけをいただく。手作りお湯割りは、大衆酒場らしく中身の量がハンパない。お湯をおかわりして2杯目を作って飲む。

見慣れないミートソースパスタが気になったので注文してみた。他の客が「ペンネ」と言っていたが、正直「そうか?」と思ったほど。でも不味いわけではない。小粋な酒の肴を用意しているとは、なかなかやるなあ。

常連さんが揃い始めたところで、席を明け渡すとするか。

新開地「世界長新開地直売所」~馬蹄形カウンターの常連さんたち

佐藤商店を出て、新開地のアーケード街を歩いてホテルへと向かう。浅草と並び称された新開地だが、アーケードはイマイチ元気がなさそう。ただ、毛細血管のような細い小路が幾つもあり、その先には未知のゾーンが隠れていそうな気もした。

ホテルをチェックインし、荷物を置いてから本腰を入れて飲むとするか。本日のメイン酒場は決まっているので、まずは前座としてホテル近くの立ち飲みに寄る。生ビールと串カツで軽く飲み、とくに記載するようなエピソードもないので店を出る。

さあ、メイン酒場へ繰り出そう。

口開けで立ち寄った佐藤商店と同じ屋号「世界長」の看板を背負う立ち飲み「世界長新開地直売所」だ。この店は知る人ぞ知る有名な酒場。呑んべえを自称するなら、一度は必ず立ち寄りたい。

馬蹄形をした独特のカウンターで、カウンター内には年配の大将、女将さん、若い兄さんがいた。家族関係かどうかは定かではない。カウンターには酔客がびっしりで、皆さんすでに上機嫌。これは乗り遅れてはならないぞ。

そんなわけで燗酒とマグロのすき身を頂戴する。酒の銘柄はたぶん世界長だろう。熱燗が体にしみいって美味い。

私が来店する直前、お客さんたちがあみだくじをしていたらしく、当たりを引き当てたおばちゃんに、幻の焼酎「森伊蔵」のグラスが振る舞われた。上機嫌なおばちゃんは、お仲間のご常連にも一口ずつ味見をと、回し飲みを始めたのだが・・・

酔っ払いオヤジが、グラスをグイっと飲み干した!

これには爆笑の渦。当のおばちゃんも笑うしかない。オヤジに言わせれば「酒に高いも、安いもない」といったところか。まるで吉本新喜劇を見ているかのような光景に、思わずニタニタしてしまったほどだ。

ある客はトイレに立ってスイッチを入れようとしたら、間違えて店内のスイッチを触ってしまい、一瞬停電かと思わせる真っ暗闇に。そして再び爆笑の渦。この連続である。

さすがは世界長の総本山と言われるだけのことはある。お客もツワモノぞろいだぞ。

新開地「八喜為」~元気になるチューハイでシメ

世界長新開地直売所でずいぶん楽しませてもらったが、あまりにも面白すぎて追加注文ができなかった。もう少し余裕がありそうだったので、もう一軒だけ寄ってみるか。本日はずっと立ち飲みが続いている。座って飲めるところにしよう。

立ち寄った居酒屋「八喜為」。はきだめ、と読ませる。

テーブル席にドッカと腰を下ろし、カチワリワインと串カツセットを注文する。串カツはイモ、タマネギ、豚、鯨、エビ、アジのラインナップ。もちろん大阪流の「ソース二度漬けお断り」であることは言うまでもない。

もう一杯何か飲もう。と、そこで目に入ったのが「元気になるチューハイ」の張り紙。店のおばちゃんの話では、精力剤になるようなエキス類が混ざっている割り物のようだ。面白半分というか、酔った勢いで注文してしまった。

ジュースのような味だったが、明らかに怪しげなエキスが入っている感じもする。おばちゃんに感想を聞かれ、思わず「これはマズいっすね」と口走ってしまった。むろん不味いではなく、ヤバイという意味だよ。

でも、はしご酒で、もはや体力は残っていない・・・もうちょっと早く飲んでおけばよかったかな(苦笑)

今回はここまでとします。読んでいただきありがとうございました。なお、このエッセイは2014年4月の忘備録なので、店の情報など現在とは異なる場合があります。

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「ひとり旅で全国を巡ろう!旅道楽ノススメ」→note連載中の「酔いどれ男のさま酔い飲み歩記」もヨロシク!


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