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酔いどれ男のさま酔い飲み歩記~第16回「新宿にもあったディープゾーン思い出横丁」
「一人酒」、それは孤独な酒飲みのように聞こえるだろうが、実はそうでもない。私は一人酒という言葉を酒場で飲み歩く時に使っている。にぎやかな雰囲気に包まれれば、その店に居る人は全員、飲み仲間だ。
一人酒ができなくなって幾歳月・・・再開の日を、ただ黙々と待ち続けていても仕方ないので、体験談エッセイを書こう。タイトルは、酔いどれ男のさま酔い飲み歩記。第16回「新宿にもあったディープゾーン思い出横丁」である。
はじめに
私にとって東京新宿は、旅行や一人酒の重要な経由地である。中央東線を利用しても、中央高速バスを利用しても、終点は新宿になるからだ。ゆえに、このまちで飲むことはザラにある。ただし、行き帰りの短時間での滞在が多いため、飲み歩きとは無縁だった。
新宿には歌舞伎町という東京屈指の大繁華街がある。が、ピンクゾーン林立の歌舞伎町では、飲み歩きにどっぷり浸かれず、怪しげな方向に行ってしまうだろう。そんなところより、もっとディープで、飲み歩きに徹せる一角があるじゃないか。
さあ、行くか。夜の新宿西口、思い出横丁へ。
思い出横丁飲み歩き前史~3か月前に初出没
思い出横丁へは2回目の出没となる。まだ記憶に新しい3ヵ月前、東海道飲み歩きのラストとして思い出横丁に繰り出した。いつものように新宿からの帰りの列車待ちを利用した短時間の酒だったし、その前に小田原でしこたま飲んだ帰りでもあった。
新宿には数えきれないほど来ているのに、なぜか思い出横丁は避けていた。あまりにもディープなゾーンだったからだ。だが、今の私には平気に平左である。
人がすれ違うのがやっとという小路の両側に、長屋のようにびっしり店が居並ぶ。東京にもこんな飲み屋街があったのかと感心する。そんな思い出横丁デビューの店は「つるかめ食堂」。界隈でも有名店である。その理由はメニューを見ればわかる。
「バカ」シリーズ・・・こりゃ、なんだ?
何だか訳が分からないけど、一つ頼んでみるか。ウーロンハイと一緒に「バカコンポジャ」を注文。牛すじをササミではさんで揚げたフライだった。美味かった。
あまりキョロキョロしてはいけないが、店内を見ると、なんだか怪しげな文化人が何人かいる。どんぶり物をかっこんでサッと出ていくフリーターの兄ちゃんもいる。人間模様を観察しているだけでも面白い、むろん、皆さん
「バカ」ではないだろう。
あまり字数を重ねていると、本チャンの「思い出横丁編」が書けなくなるので、この辺でお開き。
思い出横丁「カブト」~ウナギ一通りを食わせる
ここからが、夜の思い出横丁一人酒編の始まりだ。横丁のなかでもひときわ目立つ店がある。一見屋台風に見える店、煙がモクモクと立ち込める店、そして常にお客で賑わっている店。それが、うなぎ「カブト」だ。
カウンターだけの店で、串焼きウナギを大将がせっせと炭火で焼く。その煙が店の外に出まくっている。この匂いに誘われて酔客がやって来る。天井から吊るされた白色電球は、ウナギのタレがこびりついていて真っ黒だ。
この店は「一通り」を頼むのが基本である。
一通りとは、串焼きウナギのフルコースである。エリ、ヒレといったふつうのうなぎ屋では食べられない部位が出て、最後は蒲焼きで締める7本ワンセット。早い時間帯なら、希少部位のレバも食べられるらしい。この日は品切れだったが。
酒はビール。おかわりは焼酎。焼酎は小さなコップになみなみと注がれている。ストレートで飲むのはかなりキツイ。でも、テーブルの醤油差しには割り材が用意されている。この時は正体が分からなかったが、2回目の来店で「梅エキス」だと知った。
大将は口が悪い。常連客には平気でタメ口をきく。だが、怒り出す客などいない。これが大将のキャラだと分かっているからだ。むろん、一通りが美味いからでもある。ゆえに、客が次から次へと入ってきて、常にカウンターは満席状態なのだ。
思い出横丁「串衛門」~水だけ飲んで立ち去るおばちゃん
「カブト」で思い出横丁の洗礼を思い切り浴びた。次にどの店に入っても、驚くことはなかろう。ここは居酒屋ばかりではない。小路の両側には、老舗もあれば、新しそうな店もあるし、ラーメン屋や食堂もある。迷っていても仕方ない。「串衛門」に入ろう。
立ち飲みと書いてあったが、椅子が置いてあったのはありがたい。そのせいか、ちょっと店内が狭苦しいが、これも思い出横丁っぽい。お茶割りを注文し、懐かしいクジラカツ、それから砂肝と鶏皮の焼き鳥を頼んだ。
カブトにやって来るおっさん連中と比べ、客層はやや若く、ちょうど私(当時40代)と同世代の人たちだった。でも、ディープゾーンには違いない。店先に現れた酔っ払いのおばちゃん2人、さんざん店の人にベラベラとしゃべりまくった挙句・・・
水を一杯だけ飲んで立ち去ったのだ。
私含め、一緒に飲んでいた人たちも唖然としておばちゃんたちを見送った。だが、店の人は平然としている。これが思い出横丁なのかもしれない。
その後、串衛門は屋号が変わったのか、店自体辞めてしまったのか、いつの間にか横丁から姿を消していた。新陳代謝が激しいのも、こういう横丁の特徴だろう。それでも、ご常連がしっかりついている「カブト」のような店は、ちゃんと生き残っていく。
思い出横丁「道産子」~珍味盛り合わせは最高
カブト、串衛門と吹きっさらしのような感じの店で飲んできたので、そろそろ店舗を構える居酒屋で腰を落ち着けて飲みたい。思い出横丁の表通りに面した一角に、北海道居酒屋「道産子」を見つけた。ここに入ろう。
海の幸もいいなあと思っていたところである。日本酒の北の誉に合わせたのは「珍味盛り合わせ」。かにみそ、アンキモ、塩辛、イクラ、ホヤという、一品で頼んでも十分楽しめる肴ばかり。これは楽しい。
徳利は、2合は入ろうかという大ぶり。珍味盛り合わせにはうってつけのサイズである。唯一の欠点は、飲み過ぎてしまうこと。しかもテーブル席で腰を落ち着けて飲んでいる。本日は横丁の雰囲気に飲まれ、自然と酒量が増えていたのに気が付かなかった。
案の定グデングデンになったが、後の祭りであった。
〇〇〇
今回はここまでとします。読んでいただきありがとうございました。なお、このエッセイは2009年5月の備忘録なので、店の情報など現在とは異なる場合があります。
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![マイケルオズ@日々挑戦する還暦兄さん(フリーランスライター)](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/81726822/profile_fccc35a25241ef4de2d3bf385a9c3046.jpg?width=600&crop=1:1,smart)