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酔いどれ男のさま酔い飲み歩記~第63回「パンチの効いた酒場と肴に遭遇す」

「一人酒」、それは孤独な酒飲みのように聞こえるだろうが、実はそうでもない。私は一人酒という言葉を酒場で飲み歩く時に使っている。にぎやかな雰囲気に包まれれば、その店に居る人は全員、飲み仲間だ。

withコロナでようやく一人酒が再開した。が、まだまだ心置きなく飲めるようになるまでの道のりは遠い。ならば、体験談エッセイでも書くとするか。酔いどれ男のさま酔い飲み歩記~第63回「パンチの効いた酒場と肴に遭遇す」である。


はじめに

大阪市内でもディープさが漂うまちの一つが鶴橋と言われている。ただ、行き慣れている者にしてみれば、そんなにディープさは感じない。どちらかというと、焼き肉やらコリアンタウンやらのイメージの方が強い。

今回は鶴橋と、その隣の上本町を探索してみる。上本町は初出没だが、ハイハイ横丁という面白そうな酒場街があるようだ。宿泊先の都合上、まずは鶴橋、そして上本町へのはしご酒が効率良さそうなので、そうしよう。

どんな酒場と肴が待ち構えているのやら。

鶴橋「源氏」~店員の圧倒的な存在感がスゴイ

鶴橋駅に降り立ったのも久しぶり。焼き肉店がずらりと並ぶエリアだが、以前から気になる酒場がある。それも鶴橋駅の改札口真ん前という場所にだ。

その名は大衆酒場「源氏」。口開けはここしかない。

店構えはディープタウン鶴橋を象徴するような激渋。一見客でこの店に怯まず入れるところが私の強みじゃないか。厨房をグルリと囲むカンターの立ち飲みで、複数の酔客が美味そうに飲んでいる。その一角に陣取り、生ビールをいただく。

源氏のウリは串カツだとの事前情報を得ており、ジャガイモとアジを注文。すると、威勢のいい店員の兄さんが間髪入れずに目の前に出してきた。揚げ置きがあったらしい。他の串カツ店なら「温め」をしてもらうところだが、勢いに押されて言い出せずじまいだった。

熱々ではない串カツを中濃のソースにつけていただく。まあまあかな。でも、キャベツは食べ放題なのがありがたい。

それにしても兄さんが非常に個性的だな。鼻歌交じりで注文を裁くのはご愛敬として、時折奇妙なアクションをしながら厨房内を動き回っている。そして盛り付けがダイナミック、悪く言えば雑やな。

あまりにも兄さんがおもろかったので、さらにおでんの大根、スジを頼んで、しばらく様子を見る。常連との会話がタメ口なのも当然らしい。他店の悪口を常連とバンバン言い合っているのもスゴイ。

何か何まで破天荒なディープ酒場だったぞ。

鶴橋「酒の中島」~外観が渋い賑わい酒場

鶴橋でもう一軒はしご酒をしよう。今度は大通りに面したところにある酒場「酒の中島」を訪れる。「清酒春鹿 酒の中島」という巨大かつ歴史のありそうな看板と激渋っぽい店構えが出迎えてくれる。ここもディープ酒場なのか?

が、店内はそうでもなく、ごく普通の居酒屋。お客さんでいっぱいだったが、幸いにもカウンターの隅が空いており、そこに滑り込む。女将さんにハイボールを注文し、肴にはマグロガーリックとカキおでんも頂戴する。

マグロガーリック、これはガツンと来るぞ。

マグロの竜田揚げ風ガーリック味とでも言おうか、これが酒の肴にはピッタリ。出てきた時のボリューミーさに圧倒されかかったが、マグロの身だけではなく、アラの部分も揚げているので、見た目よりも量は多くない。

それでもハイボール一杯で流し込むには酒が足りず、追加で麦焼酎おこげの水割りをいただこう。店内は程よい騒然さがあり、「ナカジマヤ」とプリントされたシャツを着た店員さんたちもキビキビしていていいぞ。

この店は魚が美味しいと評判のようで、ほかにも目を引くメニューが並んでいる。腰を据えてとも思ったが、次に上本町も控えているのでキッパリと店を出よう。

上本町「天山閣」~日本一長いカウンターで飲む

鶴橋駅から近鉄線に乗って上本町駅に降り立つ。改札口を出てすぐの地下街に「ハイハイ横丁」がある。雰囲気は東京新橋のニュー新橋ビルに似ている。大阪で10年近く飲んでいるが、ハイハイ横丁の存在を知ったのはつい最近のことだった。奥が深いな。

ハイハイ横丁には、ここでしか体験できない名物酒場がある。居酒屋「天山閣」だ。実はハイハイ横丁を知った時、天山閣には絶対寄ろうと思っていた。酒の中島で注文をセーブしたのもそのためだった。

さてと「日本一長いカウンター席」に陣取るか。

これにはさすがに圧倒される。長さは約30メートルあり、満席なら何人が座れるのだろうかと思わず笑ってしまう。それはさておき、レモンハイと豆もやしを注文。ここはさっぱりした肴でしのごう。

これだけカウンターが長いと、注文を聞く店員の効率も悪そうに思えるのだが、意外と客の回転は良さそうだ。話のタネにはもってこいの酒場だが、いかんせん店員や他の客との距離がありすぎる。「横に遠い」という経験はむろん初めてのことだ。

2杯目のウメチューをいただく。まだ先ほどのマグロガーリックの余韻が残っている感じで、さっぱり系のアルコールを体が欲したのだろう。一息ついたところで、最後のはしご酒に向かうため長大カウンターの席を立った。

上本町「鉄道バー駅」~マニアぞろいの酒場に潜入

本日のラストに訪れたのは「鉄道バー駅」という立ち飲み。肴は缶詰がメインなので、どちらかと言えば角打ちスタイル。小さなカウンターだけの店内には、鉄道グッズがズラリと並んでおり、外観も列車の車両風というこだわり抜かれた酒場だ。

河内ワイン白とチキンのインドカレーの缶詰を注文。インドカレーの缶詰はスパイスが効いており、辛さでガツンとやられた。ワインだけでは辛さをしのげず、ジンビームハイボールを追加する羽目になってしまう。

そして常連客とマスターとの会話。当たり前だが、鉄道のマニアックかつ専門的な話ばかり。鉄道からちょっとエロ話になった時だけ、やっと会話に加われたとさ(苦笑)。

個性的すぎるバーだった。でも面白かったぞ。

〇〇〇
今回はここまでとします。読んでいただきありがとうございました。なお、このエッセイは2016年11月の忘備録なので、店の情報など現在とは異なる場合があります。


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