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酔いどれ男のさま酔い飲み歩記~第75回「大阪環状線ぐるり一周飲み」

「一人酒」、それは孤独な酒飲みのように聞こえるだろうが、実はそうでもない。私は一人酒という言葉を酒場で飲み歩く時に使っている。にぎやかな雰囲気に包まれれば、その店に居る人は全員、飲み仲間だ。

withコロナでようやく一人酒が再開した。が、まだまだ心置きなく飲めるようになるまでの道のりは遠い。ならば、体験談エッセイでも書くとするか。酔いどれ男のさま酔い飲み歩記~第75回「大阪環状線ぐるり一周飲み」である。


はじめに

今回は、まだ大阪での飲み歩きに慣れていない頃の話を書こう。大阪のまちを巡り歩くのに好都合なのが大阪環状線。東京の山手線よりも一回りコンパクトで、一周ぐるりと乗り通しても40分。それでいて乗り入れている電車はバラエティーに富んでいる。

2010年3月も恒例の大相撲春場所観戦のため大阪へやって来た。宿を取ったのは大阪ミナミの中心地なんば。この界隈で飲み歩いてもよかったのだが、ふと「行ったことの無い大阪環状線の西側のエリアに行きたい」と頭をよぎった。

これが大阪環状線ぐるり一周飲みの始まりだった。

西九条「福家」~ちんちん焼きがお出迎え

JR難波から今宮に出て、時計回りで4駅目が西九条だ。2つ手前には大正駅があり、ここも酒場が揃っているらしい。ただ今回は、なんばからのアクセスがいい阪神電車を利用しているので大正には寄らず、西九条に直行した。

目の前に「ちんちん焼き」の屋台・・・

西九条の駅前に降り立って、すぐ目に飛び込んできた。いきなり破廉恥な屋台が現れたのか?と思ったが、そうではない。ちんちん焼きとはベビーカステラのこと。金型を回す歯車の音から名づけられたらしい。

人通りはそれほど多くないが、それゆえか遠くから演歌が聞こえてくる。どこかの酒場なのか、商店街のBGMなのかは定かではない、でも昭和っぽい雰囲気がしていいなあ。と、ノスタルジーに浸ってばかりもいられない。酒場に入ろう。

駅近くにある居酒屋「福家」に来店。タイムサービス「酒+串5本+付き出しが800円」という売り込みにつられたと言えば、それまでだ。酒は生ビール、串は焼きか揚げかを選べるので、串揚げを頂戴する。

串揚げはアスパラ、エビ、串カツなど小ぶりの一口サイズで、生ビール一杯分としては手ごろな量である。口開けで飲むのには好都合。サッと食べ終え、店を後にする。

西九条「三平」~トンネルの中にある渋い酒場

西九条駅周辺を見渡すと、面白そうな看板がある。「トンネル横丁」と書かれたネオン文字と、それを取り巻く酒場名。場所は大阪環状線のガード下。ディープさがあるロケーションも抜群だし、これはイケそうだな。

トンネル横丁に潜り込むと、人がすれ違うにもやっとという通路の両側に酒場が点々。そのなかの一軒である「三平」が激渋そうで、これは入ってみるしかなかろう。

開き戸をガラガラと開けると、長いカウンター席が目の前にある。その一角に陣取って、女将さんにレモンハイと炙りシメサバをお願いする。カウンターには一人客がポツポツ。ほかに座敷があるのか、グループ客の声も聞こえている。

レモンハイが出てきて「失敗した!」と思った。

あては確か炙りシメサバ。関西流だと、きずしを炙ったもの。当然だが酢締めしてある。これに酸っぱいレモンサワーではミスマッチじゃないか。「日本酒にすればよかった」との後悔先立たず。まあいいや、ここもサッと飲むだけにしておこう。

各駅エリアウロウロの挙句、天満「酒の奥田」へ

西九条から大阪環状線に乗り、次の野田駅で降りた。ここも全く初めてのうえ、下調べもしていない。頃合いのいい酒場を探したが、見当たらない。立ち飲みくらいあるはずなのだが、探し方が悪かったのか・・・

やむを得ず、野田を後にして再び大阪環状線に乗る。次の福島駅で探そうかと思ったのだが、車中の高架から眺めた限り、パッとした感じには見えない。降りそびれているうちに乗降ドアが閉まり、福島でも飲めずじまいとなった。

次の大阪駅からの大阪環状線は行き慣れた東側のエリア。こうなったら見知った駅に降りるしかなかろう。ならば、次の天満駅だな。

天満となれば、お馴染みの立ち飲み「酒の奥田」。

カウンターの中には相変わらず元気なおばちゃん店員や兄さん店員がいる。以前に昼酒で訪れた時に比べ、客層が少し若返った気もするが、気のせいか。まあいい、早速注文しよう。日本酒、湯豆腐、カニ刺しでいくか。

カニ刺しといっても、茹でカニの身をほぐしたもの。ホンモノの刺身が出てきたらビックリだが、それはない。湯豆腐も鍋物ではなく、冷奴ならぬ温奴。これも大阪では定番だ。

若いカップルが隣に立った。すると、おばちゃん店員が「初めて来られたんやね」と元気よく声を掛けてくる。どうやら、若い人は珍しいらしい。それが証拠に、ほぼ一見客なのに私はスルーされた。ジャンバー姿の中年オヤジなので常連だと思ったのか?

まあいい。日本酒のおかわりをアジの南蛮漬けでいただき、たっぷり酒場の雰囲気を堪能してから店を出た。

なんば「赤垣屋」~シメもミスマッチ

酒の奥田のあと、生ビール一杯目100円でおなじみの串カツ店「七福神」に寄って、軽く飲ませてもらってから天満駅に戻る。大阪環状線に乗って鶴橋駅で下車。鶴橋も飲み屋がたくさんあるが、ここは乗り換えだけ。

地下鉄でなんばに戻ったので、お開きにすべきところ・・・だが、お立ち呑み処「赤垣屋」に寄ってからシメにしよう。サラリーマンらでにぎわうカウンターの一角に滑り込み、まずはチューハイを注文する。

と、そこに「ナマコ酢」の文字。

条件反射で頼んだあと、ふと考える。チューハイは確かレモンハイだったな。そこに酸っぱいナマコ酢か。またやっちゃった。日本酒にすべきだったが後の祭り。ナマコは好物だからいいか。ついでにウズラの卵4個80円を頼み、しばし酒場のひと時に酔いしれた。

ミスマッチもあったが、まずまずの大阪環状線飲み歩きだったよ。

〇〇〇
今回はここまでとします。読んでいただきありがとうございました。なお、このエッセイは2010年3月の忘備録なので、店の情報など現在とは異なる場合があります。


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マイケルオズ@日々挑戦する還暦兄さん(フリーランスライター)
noteでは連載コラム、エッセイをほぼ毎日書いています。フリーランスのライターとして活動中ですが、お仕事が・・・ご支援よろしくお願いいたします!