酔いどれ男のさま酔い飲み歩記~第90回「まだまだあった!越前の冬の味覚・福井市編」
「一人酒」、それは孤独な酒飲みのように聞こえるだろうが、実はそうでもない。私は一人酒という言葉を酒場で飲み歩く時に使っている。にぎやかな雰囲気に包まれれば、その店に居る人は全員、飲み仲間だ。
withコロナでようやく一人酒が再開した。が、まだまだ心置きなく飲めるようになるまでの道のりは遠い。ならば、体験談エッセイでも書くとするか。酔いどれ男のさま酔い飲み歩記~第90回「まだまだあった!越前の冬の味覚・福井市編」である。
はじめに
晩秋の越前福井の旅は、セイコガニ三昧となった敦賀市での一泊目に続き、二泊目は福井市泊まり。この旅行以前にも北陸でセイコガニ(コウバコガニ)を味わってはいるが、何度食べても美味い物は美味い。それを思い切り再認識させられた敦賀の夜だった。
日本海の海の幸は豊富だ。越前ガニやセイコガニのほかにも、美味しいものがあるはず。それを見つけるのも旅の醍醐味に違いない。もちろん食べるだけでなく、飲む方もしっかりと堪能したいものだ。
さあ、福井市での夜酒を始めようか。
福井「弥吉」~越前ガニにチャレンジしてみる?
敦賀から福井に移動する途中、越前市に立ち寄った。昼食はともにご当地グルメの「越前おろしそば」か「ソースかつ丼」か迷ったが、越前おろしそばをチョイス。辛味大根をまぜたつゆをかけて味わうそばは絶品だった。これはぜひおススメしたい。
さて、福井市での飲み歩きに備え、ホテルへのチェックイン前に軽く下見をする。昨夜の敦賀はセイコガニ一択だったが、本日はこだわらなくてもいい。良さげな店が結構あるなあ。そして、いろいろな酒場の店先ボードには「セイコガニ」の文字が目立つ。
思っていた以上にセイコガニは、この時期の食材としてメジャーだった。飲食店だけでなく、鮮魚店やスーパーにも普通に売っている。そういえば、敦賀のバーで「地元民はセイコガニを自分でさばく」という話をしていたなあ。
夜になったので改めて繁華街に出向き、一軒目は「弥吉本店」に入る。ここは鮮魚や炉端焼きが看板の酒場。ホワイトボードには「ズワイガニ、セイコガニ」の文字。ズワイガニつまり越前ガニも、チャンスがあれば食べてみたいところだが・・・
値段は・・・じゅう、ひゃく、せん、まん・・・5ケタか!
これはとてもじゃないが手が出ない。チャレンジは断念しよう。となれば、やっぱりセイコガニがいい。一緒にアワビの刺身も頼み、合わせるのは勝山市の一本義生酒。これだけ頼んでも、越前ガニ一杯の値段には到底届かない。
出てきたセイコガニは、きれいにむき身にしてあって食べやすい。地元民じゃないから、ありがたいぞ。爪の部分には黄色いタグが付いている。「越前港」と書いてあり、正真正銘の地元で獲れたカニの証拠。そう思うと、余計美味しくなる。
5ケタの越前ガニもタグ付きなのだろうか? 誰か頼む人がいれば確認できるのだが、小一時間店にいたが頼む人は皆無。これじゃあ確かめようがないじゃないか。
福井「越前鮮魚店」~ほかにもあるぞ、越前の海の幸
弥吉を出てから、しばし界隈をぶらつきながら次の店を探す。よりどりみどりのはずなのだが、どうも決めかねている。歩き回った挙句、再び同じ所へ戻ってきた。弥吉の隣にも海鮮居酒屋があるじゃないか。ここにしよう。
店名は「越前鮮魚店」。屋号は魚屋っぽいが、魚河岸酒場を名乗る居酒屋。トロ箱をテーブルに施すなど、漁師をイメージした店内装飾が楽しい。もちろん料理にも期待できそうだ。
日本酒は永平寺町の越前岬一番搾り。それとメゴチの天ぷら。メニューにセイコガニがあったかどうか定かではないが、あったとしてもさすがにもう十分。それよりも、今まで訪れた酒場のメニューで目にしながら、注文しそびれていたものを頼む。
「だだみ」・・・これはいったい何なのか。
店員に聞いたら「タラの白子」とのこと。雌のタラならタラコなのだから、これは雄のタラだな。生白子は新鮮でなければ食べられないそうで、ポン酢に合わせていただくと、トロリとした食感が心地いい。これは酒を頼むしかないな。
福井市舟木酒造の北の庄純米神力という、やや癖のある日本酒を頂戴し、肴に塩うにを追加。チビチビとやりながら、海の幸をたっぷり満喫させてもらったよ。
福井「秋吉福井片町店」~やきとりの名門と呼ばれる老舗
ここまで魚介類をしっかりと食べさせてもらった。ここでちょいと肉系も食べたくなった。手ごろな店はないかと調べてみると、やきとりの名門と呼ばれる老舗かつローカルチェーン店があると聞いた。やきとり「秋吉」である。
カウンターにはお客さんがズラリと並び、人気店だということがよく分かる。まずはレモンハイと口直しのキャベツ。それから名物のやきとりは、よりどり1本ずつ頼むとするかな。
だが、秋吉の注文は「5本1セット」だった。
これじゃあ1種類しか頼めないなあ。ならば、店イチオシの純けいという雌鶏でいこう。5本は多いかなと思いきや、肉が小ぶりだったので難なく食べられた。一人だと頼むのも大変だが、2~3人で来てシェアすれば意外にお得かもしれないな。
ちなみに5本1セットにしている理由は「炭火の火力が分散されるから」とか。決して、個人客を敬遠するためではない、ということを記しておこう。
福井「ニュー淀」~マスターの驚愕テクニック
食べて飲んで、お腹は膨らんだ。アルコールの方はもう少しイケそうなので、ラストは「ニュー淀」という渋そうなバーに潜り込むことにする。年配のマスターが一人で切り盛りしているが、実はスゴイ方だった。
話術が巧みで蘊蓄も豊富。それに加えて驚愕なテクニックの持ち主なのだ。
ブランデーグラスを取り出したマスター。店内を暗くしておもむろに火をつけると、グラスの中に青白い炎が・・・これでもビックリだが、マスター曰く「これは余興。ここからが本番」。いったい何をしようと言うのか。
そのグラスにブランデーを注ぎ、一定量に達するや否や、おもむろにグラスを横倒しにする。「こぼれるじゃないか」と思いきや、転がしてもブランデーはこぼれない。長年の経験で、ギリギリの量を見極めているのだ。う~ん、凄いぞマスター。
思う存分、福井の夜酒を楽しませてもらった。満足満足!
〇〇〇
今回はここまでとします。読んでいただきありがとうございました。なお、このエッセイは2012年11月の忘備録なので、店の情報など現在とは異なる場合があります。
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