酔いどれ男のさま酔い飲み歩記~第97回「四国3県巡りで美味いもの三昧~愛媛・香川編」
「一人酒」、それは孤独な酒飲みのように聞こえるだろうが、実はそうでもない。私は一人酒という言葉を酒場で飲み歩く時に使っている。にぎやかな雰囲気に包まれれば、その店に居る人は全員、飲み仲間だ。
withコロナでようやく一人酒が再開した。が、まだまだ心置きなく飲めるようになるまでの道のりは遠い。ならば、体験談エッセイでも書くとするか。酔いどれ男のさま酔い飲み歩記~第97回「四国3県巡りで美味いもの三昧~愛媛・香川編」である。
はじめに
2泊3日で四国をたっぷりと堪能しようというプランを立てた。高知県を除く、愛媛、香川、徳島の3県巡りで、四国インは尾道からのしまなみ海道で今治へ、四国アウトは鳴門からの淡路島経由で明石海峡大橋へというルート。
このころ、旅行サイトに載せる記事のライター仕事をやっており、道楽のひとり旅だけではなく、仕事の延長線上のつもりで旅をしていた。おっと、これは会社在職中だったから、語ってはいけなかったかな?
そんなことはどうでもいい。さあ、旅に出発だ。
大三島「多々羅しまなみ公園レストラン」~高級魚マハタをいただく
しまなみ海道は晴天に恵まれ、バス車中からの眺めの良さにテンションも上がっていく。3つ目の生口島と4つ目の大三島に架かる多々羅大橋が県境となり、大三島からは愛媛県。その島で途中下車し、道の駅「多々羅しまなみ公園」で昼となった。
レストランが併設されているのはありがたい。メニューには瀬戸内海の海の幸がメインの定食がずらり。そのなかに「マハタの薄造り御膳」があった。マハタは高級魚なので、なかなか食べる機会がない。
せっかくだから日本酒も頂戴するか。
御膳はマハタの薄造り(刺身)とマハタのあら汁にご飯、茶碗蒸しがつく。飲んでいるのでご飯はいらないが、最後にサラサラと食べてしまおう。それより何を置いてもマハタ。淡泊な白身とコラーゲンがウリ。薄造りにするのは歯ごたえがあるからだとか。
味は結構濃厚というか、クセがちょっとある。独特の磯の香りとでも言うのだろう。苦手な人は苦になるかもしれない。添えてある柑橘系を薄造りにふりかけて食べてみると、クセが少し消える。これはいいかもしれないな。
皮のほうは、コラーゲンの塊でプリプリしている。これを刺身醤油でいただく。醤油は西日本独特の甘みを感じる。こういう味の違いが楽しめるのも旅ならではだ。
道の駅は、多々羅大橋を間近に眺める絶好のロケーションにある。ほろ酔いでゆるゆる過ごしていたのだが、気がついたらバスの時間だ。急ごう。
丸亀「丸亀鳥」~名物の骨付鳥にかぶりつく
しまなみ海道を渡って四国へやってきた。乗っていたバスは時刻表上では松山行きとなっているが、今治桟橋で車両が交代となる。その先まで行く乗客はバスを乗り換えなければならない。2停留所先の今治駅で下車する私もしかりだ。
今治駅からは予讃線で東へと向かう。2泊3日の旅程だが、愛媛県は1日目で通過し、宿泊は香川県の丸亀市となる。実は丸亀には特徴的なご当地グルメがあるのだ。
夕刻、丸亀駅に到着し、ホテルにチェックアウトしてから夜の飲み歩きへと向かう。もちろん目的はご当地グルメ。それを食べさせてくれるのが「丸亀鳥」。屋号を正確に言うと、骨付丸亀鳥。お分かりかと思うが、ご当地グルメとは丸亀名物「骨付鳥」のことだ。
店内はかなり賑わっていて人気店であるのは一目瞭然。そのなかでも存在感たっぷりなのが、いかにも頑固おやじっぽい大将。客のほとんどが骨付鳥を食べている。待ったなしで頼まねばならないぞ。生ビールと一緒にな。
骨付鳥、これは豪快だ。丸々の鳥なんぞ、クリスマスくらいしか食べないから。一緒に添えられてきたのがハサミ。てっきり、かぶりついて食べるものかと思ったのだが、鶏肉は親鳥なので弾力がハンパではない。嚙み切るのは至難の業だ。
したがって、ハサミでバリバリ切り刻みながら味わう。
鶏油にたっぷり浸しており、一見すると脂っこく感じる。ただ、親鳥なので肉そのものはあっさりしているので食べやすい。スパイスも効いていてビールに合う。久々に手ごたえのあるご当地グルメと対面できて満足だ。
丸亀「居酒屋うをかめ」~珍しいハモの刺身をいただく
1軒目からガッツリいただいた。2軒目はどうするか。渋い雰囲気がある居酒屋「うをかめ」に入るか。明治30年創業という超老舗の酒場で、歴史の長さゆえか落ち着いた雰囲気が漂う。焼き鳥メインで骨付鳥も出しているが、さすがに食べられないよ。
ならば、地酒と魚をいただこう。
酒は観音寺市の川鶴。それからハモの刺身。ハモは湯引きや椀物が定番だが、刺身は初めて。ピンク色の身は歯ごたえがあり、何よりも脂の乗りがすごかった。先ほど鶏油まみれの骨付鳥を食べてきたばかりなので、ちょっとキツイかな。
お通しも結構量が多く、これはこれでよかったのだが、どうしても骨付鳥のダメージから抜け出せない。いい酒場なのに真価を味わえなかったのが悔しいな。
丸亀「竹駒」~帰りがけに女将さんが一言
腹具合はもうパンパンなのだが、酒はもう少し飲みたい。うをかめに行く途中で、ちょっと気になっていた小料理屋に入ってみよう。屋号は「竹駒」。年配の女将さんが一人で切り盛りをしている超地元密着の酒場である。
カウンター席の両端にご常連が座っており、女将さんから真ん中に座るよう促された。なんとなく居心地が悪いが仕方ない。生ビールを注文後、軽い肴で済ませようとしたが・・・
目の前にカマスの焼き物が!
どうやら、これがお通し代わりらしい。小料理屋ではよくあるパターン。せっかくなので、他は注文をせず、カマスでチビチビと飲む。テレビでは世界卓球をやっており、それを見ながら時々ご常連と女将さんが会話を交わしている。
私も話に加わろうとしたが、真ん中という席はどうにも落ち着かない。マゴマゴしているような感じで時間だけがたつ。結局、ろくに会話もできずに勘定してもらうことに。
帰り際に女将さんが一言「おとなしい方なんやね」。骨付鳥にヤラレタとは言えず、愛想笑いをして店を出たのだった。
(つづく)
〇〇〇
今回はここまでとします。読んでいただきありがとうございました。なお、このエッセイは2019年11月の忘備録なので、店の情報など現在とは異なる場合があります。
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