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私だけの特捜最前線→71「傷痕・夜明けに叫ぶ男~情に厚かったがゆえにピンチを招いた高杉刑事」

※このコラムはネタバレがあります。

西田敏行さん扮する高杉刑事は、特捜最前線の初期に登場する個性豊かな刑事で、キャラクターは唯一無二とも言えます。その主演作の一つ「傷痕・夜明けに叫ぶ男」を紹介します。

ほら吹き老人に翻弄された高杉

高杉刑事は、ひょんなことから知り合った浮浪者の老人(加藤嘉)から「殺人を目撃した」と打ち明けられます。殺されたのは代議士の義理の父親で、老人は代議士が犯人だと言うのです。

老人は「せんみつ(千のうち三つしか本当のことを言わない)」と呼ばれるほら吹き男で、高杉も再三騙されてしまいます。それでも高杉は老人の言葉を信じ、真相を突き止めようと奔走しました。

老人が「代議士の腕に嚙みついた」と告白したので、高杉は単身代議士宅に乗り込みます。しかし、むりやり服をまくり上げても傷跡は無く、代議士から訴えられるピンチに陥ってしまったのです。

しばらくして、老人が瀕死の重傷を負って病院に担ぎ込まれました。老人は高杉に「今度こそ証拠を残してやった」とつぶやき、そのまま息を引き取ったのです。高杉は老人の最期の言葉を信じ、代議士の元へ向かいます。

代議士の腕を確かめようとした高杉は、側近たちに妨害されます。しかし、神代課長(二谷英明)によって、代議士の腕に残った歯型が見つかりました。それは正真正銘、老人が嚙みついた跡だったのです。

西田敏行さんと加藤嘉さんの共演

このドラマは、高杉刑事役の西田敏行さんと老人役の加藤嘉さんという名優の共演が最大の見どころです。時にコミカルに、時にシリアスに演じる二人のシーンは名場面の連続と言っていいでしょう。

老人には一人息子(平泉征)がおり、大事に持っていた手帳には息子のことばかり書いていました。しかし息子の方は、自分と母親を捨てて浮浪者になってしまった父親を「あんな男」呼ばわりしていたのです。

実は高杉も父親を憎んでいましたが、亡くなってから慕情を寄せるようになっていました。老人の言動や行動に亡き父を見る思いで接し、何度騙されても信じたいという気持ちを持ち続けていたのです。

事件が解決し、老人の墓前に手を合わせる高杉。息子は「すべてが終わったんです」と、まるで厄介払いができたかのように淡々としています。その態度を見て、高杉は遺品の手帳を渡せなくなりました。

老人は高杉を翻弄しながらも、息子のように接し、いつしか二人は心を通い合わせることができたのです。しかし、実の息子とは離反したままで、この世を去った老人・・・辛いラストシーンとなりました。

「情」の人だった高杉刑事

高杉刑事は特捜最前線の中でも異色の存在でした。西田敏行さんらしさが存分に発揮された見せ場が後半にあります。代議士の逮捕状をめぐる神代課長とのやり取りのシーンです。

代議士を逮捕すべきと主張する高杉に対し、神代は「二度も同じ過ちを繰り返すのか」とたしなめます。しかし高杉は「死んでしまった老人の最期の言葉まで疑うのか」と激しく怒ります。

「俺は人間です。そんな鬼の下では働けません」と啖呵をきる高杉に対し、神代は「刑事だったら理性だけは失うな」と𠮟り飛ばします。他の刑事なら、この一喝で冷静になっていたところでしょう。

ところが高杉は、一転して表情を曇らせ「(老人は)俺の親父にそっくりだったんです」と涙を流します。神代の言う理性よりも、喜怒哀楽がストレートに出る「情の高杉」ならではの場面と言えるでしょう。

当時売れっ子俳優だった西田さんは、次第に特捜最前線への出演が減っていき、転勤という形で降板します。西田さんの持ち味だった「情」は、おやっさん(船村刑事)が引き継いでくれたと個人的には思っています。


なお、このドラマでは犯人の代議士役で小林昭二さんが出演しています。言うまでもなく、ウルトラマンのムラマツキャップ、仮面ライダーの立花藤兵衛として一世を風靡した名優ですね。


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マイケルオズ@日々挑戦する還暦兄さん(フリーランスライター)
noteでは連載コラム、エッセイをほぼ毎日書いています。フリーランスのライターとして活動中ですが、お仕事が・・・ご支援よろしくお願いいたします!