酔いどれ男のさま酔い飲み歩記~第56回「八丈島と伊豆大島の島焼酎に酔って」
「一人酒」、それは孤独な酒飲みのように聞こえるだろうが、実はそうでもない。私は一人酒という言葉を酒場で飲み歩く時に使っている。にぎやかな雰囲気に包まれれば、その店に居る人は全員、飲み仲間だ。
withコロナでようやく一人酒が再開した。が、まだまだ心置きなく飲めるようになるまでの道のりは遠い。ならば、体験談エッセイでも書くとするか。酔いどれ男のさま酔い飲み歩記~第56回「八丈島と伊豆大島の島焼酎に酔って」である。
はじめに
離島を巡る旅というのは、本土とは違って旅の情緒が一層感じられる。陸路では行くことができず、必ず船か飛行機を使わなければたどり着けないからだ。天候によっては行けなくなる、行っても帰れなくなる、そんなスリルが味わえる。
伊豆諸島には2回訪れた。一度目は2005年の八丈島、もう一度は2013年の伊豆大島。どちらも印象深い旅だった。もちろん夜の一人酒は欠かさず、伊豆諸島の名物である島焼酎とクサヤもいただいてきた。
今回は八丈島と伊豆大島、二つの夜酒について書き綴っていくか。
八丈島「居酒屋・蔵」~島焼酎とクサヤはピッタリ
八丈島には、ひとり旅50回目という記念すべき節目に訪れた。羽田空港から飛行機で40分なのであっという間なのだが、距離は約270キロも離れている。まさしく絶海に浮かぶ孤島なのだ。
贅沢にもリゾートホテルに宿泊し、夜はホテルレストランでの食事。島の麦焼酎・黄八丈古酒とともに、コース料理を美味しくいただいた。ただ、閑散期でお客が少ないせいか、どこか人恋しかった。これは飲むしかないだろう。
少々出費はかさむが、タクシーを呼んで島の中心部に出る。運ちゃんに「島酒が飲める店へ」と告げると、一軒の酒場へと連れてってもらった。居酒屋「蔵」という店だ。
お客は誰もいなかったが、店のご主人との会話が楽しめるだけありがたい。早速、島の焼酎「八重椿」をお願いした。すると、ボトルに半分ほど入った焼酎をドンと置かれ、次いでウオータークーラーと氷。
「ご自分で作って飲んでください」ということか。
八重椿は芋に麦を加えたブレンド焼酎。ご主人に聞くと、昔は芋焼酎を作っている酒蔵が多かったが、今は麦焼酎が主流になってしまったという。ただし、青ヶ島では今も芋焼酎を醸造しており、これが強烈な味わいなのだとか。飲んでみたいぞ。
八重椿に何か肴を合わせたい。伊豆諸島の特産というと・・・クサヤだな。ご主人にムロアジのクサヤを焼いてもらおう。クサヤといえば、少年時代に住んでいたアパートにクサヤ好きの人がいて、しょっちゅう匂っていたことを思い出す。
ムロアジのクサヤも独特の香りだが、やや癖のある八重椿によく合う。青ヶ島の芋なら、もっとピッタリなのだろうと勝手に想像する。
結構飲んだ気がしていたが、ボトル4分の1ほど残っている。地元のご常連はボトルキープをしているそうだが、キープしても八丈島まで簡単には行かれない。ゆえに、ご主人気を遣ってくれて、ボトルごと譲ってくれた。いい土産になるな。
伊豆大島「南島館」~ご常連のじいさまと相席に
八丈島ひとり旅から約7年半後、伊豆大島を旅する機会を得た。伊豆諸島で最も本土に近く、熱海からの高速フェリーなら1時間というアクセス。でも離島には変わりないし、島旅をするワクワクした気持ちは八丈島と同じだ。
今回は旅館に素泊まりで宿泊。飲食店の絶対数が少ないので、夕食は宿の方に勧めてもらった中から「南島館」を覗いてみた。席は予約で埋まっていたが、「相席でもよければ」とのこと。座れるのであれば別に構わないよ。
というわけで相席になったのは年配のご常連さん。
真冬だったので手始めに日本酒の燗酒を注文。肴は何にしようかなと迷っていると、ご常連さんから「この店は地元のものばかりなんで、(品書きに)書いてあるものはどれもお勧めだよ」とお声がかかる。これが相席のメリット。会話のきっかけもできたぞ。
タカベの塩焼き、金目の刺身をいただくか。日本酒を飲んでいるので新鮮な魚料理はベストチョイス。タカベにお目にかかったのは初めてだったが、伊豆諸島ではおなじみの魚らしい。塩焼きは定番のようで、これは美味い。
日本酒を飲み終え、次は島焼酎といくか。谷口酒造の御神火の芋を頼み、島焼酎に合うムロアジのクサヤを追加。八丈島でもいただいたが、クサヤと芋焼酎の相性の良さは抜群。匂いに代表されるように、お互いが持つ強烈な個性が見事にハマるのだ。
芋焼酎を注文した私を見ながら「ずいぶんツウだね」とのお褒めの言葉も頂戴するほど、ご常連さんとすっかり打ち解け、四方山話に花が咲く。お互いご機嫌になったところで、ご常連さんがお帰り。こっちもボチボチ店を出る頃合いだな。
伊豆大島椿祭り「夜祭り」見物からの「寿し光」へ
実は最初からお目当てだったのが、椿祭りのイベント「夜祭り」。南島館の近くに特設会場があり、ステージではあんこ姿の子供たちの踊りや御神火太鼓演奏などの出し物が行われる。ほろ酔い気分で見物するのにはちょうどいい。
観光客であふれる夜祭り会場には、物品ブースや飲食コーナーもある。もちろんお酒も飲めるので、生ビールを頂戴しながらくつろぐ。出し物の合間にはブースを見て回り、酔った勢いで椿油を買ってしまった・・・お土産になるからいいか。
ステージのラストは本物のあんこさんが登場。超ベテランの方々ばかり。あんこさんの手踊りに合わせ「会場の方もご一緒にどうぞ」と、踊りお誘いのアナウンスも。徳島の阿波踊りではないが、ここは踊る阿呆になってみようかな・・・でもパスしておくよ。
夜祭り見物も終わったので、もう一軒だけはしごする。
会場近くにある寿司店「寿し光」。静岡の日本酒「金明」とつまみを切ってもらう。金目、イカ、サビ(クロシビカマス)、マグロなど7品で、どれも新鮮。カウンターに陣取って、チビチビ飲みながら美味い魚を食うのはたまらんぞ。
日本酒「鬼ころし」を追加し、板さんとのおしゃべりを楽しむ。例によって何を話したのかは全然覚えていないが、酔っ払いなんだからいいだろう。
伊豆大島の夜を存分に堪能した。あすは椿祭りのメイン会場に出かけるか。
〇〇〇
今回はここまでとします。読んでいただきありがとうございました。なお、このエッセイは2005年10月、2013年2月の忘備録なので、店の情報など現在とは異なる場合があります。
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