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なつかしの鉄道乗りある記「岩泉線」第2話
鉄道~まえがき
旧国鉄時代に全国を網の目のように走っていた鉄道。国鉄の分割民営化の荒波を乗り切り、地方ローカル線や第三セクター鉄道として生き残ってきた鉄路が、次々と姿を消そうとしている。
ひとり旅でたくさんの鉄道を利用してきた中には、今は廃線となってしまったローカル線も少なくない。そんな鉄道の思い出を「なつかしの鉄道乗りある記」と題した紀行エッセイでご紹介していこう。
「岩泉線」第2話
茂市という駅もかなり山間にある。ここを起点とする岩泉線がさらに山の奥を目指して走ると思うと、よくぞこのような地に鉄路を敷いたものだと感心してしまう。
茂市を7時01分に発車すると、次に岩泉線が茂市にやってくるのは、この列車が折り返し運転を行う8時55分。そのあとは、午後3時半まで岩泉線茂市駅の役割はない。列車は5人の乗客を乗せてゆっくりと発車した。これから53分間の岩泉線の旅が始まる。
驚いたことに、これだけの超閑散路線でありながら、ワンマンカーではなく車掌が乗り込んでいた。無駄な人件費を使っているようにも思えるが、車掌が乗車していた理由は後ほどわかる。
岩手刈屋駅、中里駅と停車する。降りる人はもちろんいないが、乗ってくる人もいない。周囲はのどかな山里である。途中下車して散策してみたくなるような場所ではあるが、下車してしまえば岩泉へ向かうことが事実上不可能になってしまう。今は車窓から眺めるよりすべはない。
次の岩手和井内駅は、3往復のほかに早朝の列車が折り返し運転をする唯一の駅である。いわば、岩泉線の中心駅(少なくとも乗る前まではそう思っていた)のはずだ。だが、私の期待に反してここでも乗ってくる乗客はいない。しかも無人駅であった。
この先はもっとも山が深い地点に入っていく。「岩泉線も近い将来は廃線になってしまうのだろうな」とむなしい思いが頭をよぎる・・・。
列車はどんどん山奥へと入っていく。ここまでくると、いよいよ峠越えという感じがして、上り勾配がきつくなる。次の駅が「秘境駅へ行こう」という本で紹介された「押角(おしかど)」である。
山深い中にぽつんと存在するホーム一列だけの静かな駅。むろん、こんなところから乗車する人などいない。マニアの誰かがもしかすると下車するかもしれないと思ったが、そんなようすもなさそうだ。
緑に覆われた押角駅は、まさしく「どうして、こんなところに駅があるのだろう」と考えさせられるべき存在である。岩泉線というローカル線の中で、もっともローカルな駅と言ってもいいだろう。
もともとは、山間部を走るためのスイッチバックを目的とした駅だった。また、廃屋の姿を眼下に眺められたので、かつては定期乗降客がいたのかもしれない。今はシイタケのほだ木場と、養魚場くらいしかない。ホームからも川のせせらぎが聞こえるほどの静けさであった。
押角を過ぎ、さらに奥深く山に分け入ったかと思ったら、長いトンネルに入った。途中で下りになったのか、列車はみるみるうちに速度を上げていく。その変化が乗っていてはっきりわかるくらいの猛スピードでトンネル内を通過する。
トンネルを抜けると、岩泉町に入る。そして、はるか下方に川を見下ろす場所を列車は走る。トロッコ列車でも走らせれば、このあたりがもっとも景色のいい場所になるだろうなと思った。
(つづく)
★なつかしの鉄道乗りある記は、週替わりエッセイとして毎月第2、第4水曜日に掲載します。
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