酔いどれ男のさま酔い飲み歩記~第11回「あいりん地区飲み歩き。最後はヘベレケ」
「一人酒」、それは孤独な酒飲みのように聞こえるだろうが、実はそうでもない。私は一人酒という言葉を酒場で飲み歩く時に使っている。にぎやかな雰囲気に包まれれば、その店に居る人は全員、飲み仲間だ。
一人酒ができなくなって幾歳月・・・再開の日を、ただ黙々と待ち続けていても仕方ないので、体験談エッセイを書こう。タイトルは、酔いどれ男のさま酔い飲み歩記。第11回「あいりん地区飲み歩き。最後はヘベレケ」である。
はじめに
第10回のつづき。大阪市西成区の新今宮駅と萩之茶屋駅の間にある「あいりん地区」と新世界を行ったり来たりしながら飲み歩いている。ビビリまくりながら萩ノ茶屋商店街を歩いていた時とは、まるで人が変わったかのようである。酒の力はスゴイ。
あいりん地区で初めて入った酒場が「酒のもりた」だったのは、私の目利きが良かったのか、運が良かっただけか。いい店を見つけたことでボルテージは上がる一方。まだまだイケると強気になっているのは、自分に酔いしれているがゆえの自惚れなのか。
いよいよ、ドツボにはまっていく飲み歩き後半戦が始まる。
新今宮「岩田屋酒店」~ダルな雰囲気が喧騒をかき消す
ちょうどお昼になった。この日が旅の最終日だが、タイムリミットまではまだまだ時間がある。新世界の娯楽・スマートボールで休憩を兼ねて遊んだあと、ジャンジャン横丁を抜けて再び、あいりん地区へと足が向く。
新今宮駅方面に歩いて行くと、ガード下にディープそうな店が数軒並ぶエリアが現れる。引き寄せられるようにそのうちの1軒にフラフラと入り込む。ガードの真下にある立ち飲みの「岩田屋酒店」である。
ひっきりなしに電車が走っていてうるさい。
だが、その喧騒を感じさせないようなダルな雰囲気がこの店にはある。客層も「酒のもりた」で見かけたようなおっちゃんたちより、やや品のいい?感じだ。偏見かもしれないが。
マグロのすき身が美味そうだったので、日本酒と一緒に注文する。界隈では比較的値段が高いという事前情報だったが、それはあくまでも西成だから。一般的に言えば格安酒場には違いない。それにしてもダルである。ちょっと眠くなってきそうだ。
ここでグロッキーになってはいけない。シャキッとするため、岩田屋酒店はこの一杯にとどめておこう。また来るよ。
動物園前「大万」~再びやって来た超激安酒場
新今宮駅から南に歩けば、あいりん地区のど真ん中にたどり着ける。が、私の足は新世界方向に引き返していた。超激安酒場「大万」に寄らなければと思ったからである。
昨年(2007年3月)に初めて訪れた時の衝撃は忘れられない。外観といい、カウンターのみの店内といい、ホルモン焼きの激安価格といい、昭和の戦後をそのまま引っ張ってきたような酒場なのだ。本日も女将のおばちゃんは健在であった。
2度目となれば、外観に恐れおののくこともない。酔っぱらってもいるので、すんなりとカウンター席に着く。先客がいても全然問題ない。店で一番安い酒は焼酎で、コップになみなみと注いで出してくれる。割り材なんか無い。
実は、これが大失敗の引き金になる。
焼酎に合う肴・・・といっても、この店では限られている。1串30円のホルモン焼きを頂戴し、おばちゃんが串カツを揚げ始めたところで、串カツもいただく。これも30円である。添えられているキャベツが3~4切れと貧相なのも大万らしい。
常連さんが店を出ていき、一人店に残されてしまう。おばちゃんに下手に話しかけて「関東もん」だと分かってしまうのも嫌だった。そんな余計なことを考えなくてもいいのに、と今なら思うのだが。結局、この店で追加注文できるものもないので席を立つ。
大万はとてもいい店だ。しかし、ご常連になるまでには、もう少し来店回数を重ねなければいけない。昭和の酒場、いつまでも残っていてほしい。
萩之茶屋「ホルモン道場」から「やまき」へ~最後は醜態をさらしてジ・エンド
この日3度目の萩之茶屋商店街ぶらり歩き。どこにどんな店があるのか、すっかり覚えてしまった。大万で飲み干したコップ酒の焼酎が利き始めてきたのか、かなりのヘベレケ状態になっている。
このまま歩けば、萩之茶屋駅に着く。1駅だけだが電車に乗り、新今宮駅でリュックを回収すれば飲み歩きは終了できる。が、駅を目前にしたその瞬間、「ホルモン道場」という屋号を見つけてしまう。
条件反射的に店内に入ってしまった!
「ホルモン道場」は、ジャンジャン横丁に本家と銘打った店があり、初めての大阪飲み歩きで2日目の昼に立ち寄っていた。鉄板で焼くホルモン焼きを出してくれるのだが、店のおっちゃんがコテをチャカチャカとリズミカルに振るって料理するのが特徴だった。
萩之茶屋のホルモン道場はどうだったか?実は覚えていない。店に入って、ホルモン焼きと、こりもせず焼酎を頼んだことだけは分かっている。というかメモに記してあった。味もたぶん、本家と似たようなものだったのだろう。でも覚えていないのだ。
駅近くまで行ったのに、店を出た私の足は駅とは反対側へと向かう。商店街から少し離れたところにある三角公園に歩を進めてしまったのだ。
三角公園はホームレスのあばらやがびっしり立ち並び、異様な雰囲気のあるエリア。見物が目的だと分かるような行動は避けねばならない。あくまでも「通りがかり」を装い、公園内を何気なくチラチラと見るだけ。アブナイ行為だったと、思い出しただけで冷や汗をかく。
三角公園から吸い込まれるように酒場「ホルモンやまき」へ。ここは立ち飲みなのだが、カウンターすらない。客が路上にはみ出した鉄板を囲み、おっちゃんがホルモンを焼く。ホルモンは焼きあがった順に、竹串を使って勝手に食う。飲み物も缶ビールか缶チューハイ。
ディープさの極みといった酒場なのだ。
実は萩之茶屋商店街を行き来して、何度も「やまき」の前を通ったが、さすがに立ち寄ることはできなかった。だが、アルコールで半ばヘンになっていたので、問答無用で引き寄せられた。立ち食い・立ち飲みをする私は、もはや西成の住人たちに同化していた。
「やまき」で完全に止めを刺された。なんとか新今宮駅までたどり着き、電車に乗ったまではいいが、電車に揺られているうちに気分が悪くなり、桜ノ宮駅のホームの隅に駆け寄って・・・あとは語るも無残。ほうほうの体で大阪を立ち去るのだった。
つづきがあるかも?(笑)
〇〇〇
今回はここまでとします。読んでいただきありがとうございました。なお、このエッセイは2008年3月の備忘録なので、店の情報など現在とは異なる場合があります。
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