香りになったサナギ
目が覚めた時、サナギの目の前には見たことのない美しい世界が広がっていた。
そこには、チョウの姿もサナギの姿もなかった。
サナギは、なににもらとらわれる事なく、ただよう心地良い香りになった。
歩くのが遅いことを、とても気にしているカメがいた。
カメはある時、葉っぱの上にとどまるサナギを見つけた。
サナギはじっとして動かない。
いつかチョウになる時を夢みて、ただそこにいた。
カメはどこに行くこともできないサナギをみて、自分は歩くことができて、それは素晴らしいことだと感じるようになった。
結局、サナギがチョウになる日は来なかった。
サナギはそのままサナギである事を決めたのだ。
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