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22年・春の自由研究 フワフワトロトロ豚の角煮を作りたい


ソーキそばは茹でた麺・角煮が重箱に入っており、保温ポットにスープという現地ドッキングスタイル

一昨年の春に暇を持て余した私は、好きな感じの角煮をたらふく食べたいという欲望とご飯への探究心を実際に試してみようじゃないかと思い立ったのです。
そしてこのあと「春の自由研究というなら残りの夏〜冬もやるか」と軽い気持ちで手を出したのでした。

マイフェイバリット角煮を求めて

まず「豚の角煮 トロトロ」とGoogleなどで検索すると沢山のレシピが上がります。
でもそれら先人の叡智が詰まったレシピ達で作っても、その時の作り手(=私)のやる気によって味も、肉の硬さも、味の染み具合も毎回異なるのが厄介でした。
特に角煮はステンレス鍋、圧力鍋、鋳物ホーロー鍋、炊飯器と使用するアイテムによって準備や作業時間の手間度が異なるという、後片付けも考えた時のやる気パラメーター変動振れ幅が大きいわけです。
角煮作るときくらい真面目にやる気出して作れという話ではあるんだけど、自分が食べたいだけだとなかなかそうもいかないのがね…

やっぱり安くはない豚バラブロックで、楽ではない調理を要する一品を作るなら絶対毎回クリティカルを出したい。
レシピ通りに作っても、そのレシピが自分好みの味かどうかはわからない(調味料見れば凡その味の想像はできるけど)
毎回作り方はなんとなく決まってるけど、「どうしてこの方法をするのか」ってちゃんと理解していないし、違う調理法だったらどうなるのかやってみたい。そして食べてみたい。

そんな理由から下記のレシピを参考に、途中枝分かれさせた3方法で実験することにしました。

レシピの策定

今回の目標は大きく二つあります。
・脂のしつこさが少ないこと(=脂切れがちゃんとされている)
・温め直しても脂身、赤身部分共に柔らかくフワフワであること

脂身部分についてはある程度許容できる&対処は今までもできていましたが、赤身部分の硬さに角煮を作るたびずっと引っかかっていました。
肉は確かに柔らかいけど、赤身部分がなんかパサついている……出来立ては柔らかいのに、翌日温め直すと箸で切れない…ということが多く、解決したい一番の課題でした。
周りの肉料理好き友人らに聞いても、「圧力鍋で作ることが多いけど、同じくしっとりとはいかない」「角煮は温め直した時の硬さがっかり感はある」と同じ感情を抱いており…日常的に鶏ハム仕込んだり、定期的にローストビーフ作ったりする友人らの言葉ほど頼りになるものはありません。その友人らすら対処法に手を拱いているとは…
しかし、フワトロの豚の角煮はこの世に実在している──であればなんとか出来るはずだッ!と考え、レシピ策定にあたり「うまいこと硬くならない方法も載ってるレシピないかな〜」と調べたら、ちゃんとありました

【A】塩&砂糖をまぶして30分置く

参考レシピ:煮豚(角煮)の作り方 │ 樋口直哉(TravelingFoodLab.)

「樋口さんのレシピ、かなり明確に調理に伴う理由が書いてあるからメチャおすすめ」と友人に教えてもらってから様々な料理で大変参考にさせていただいており、普通に読み物としても楽しく拝読していたある日「こんなオシャ面白い角煮の作り方、あるん!?」とビックリした記憶があります。なんと加熱温度による肉のパサつきについても言及があり、最高の資料…
レシピどうしよっかな〜と考えた時にふと上の記事のことを思い出し、この調理法もやってみたろ!!!と意気込んでみたというわけです。
しかもこの方法、下茹でしなくていいから心持ちとっても気楽なのでやる気パラメーターも大喜びです。

【B】常温に戻してから表面を焼く

参考レシピ:『肉の事典』朝日新聞出版

コストコで売っててつい手に取っちゃった

私は大体【表面に焼き目をつける→下茹で→肉を取り出して洗うor水気を切る→煮込み】の手順で角煮を作ってたのですが、「表面に焼き目をつける意味をちゃんとわかってないな…」と思い調べたところ、色んなレシピやサイトに脂抜きのためと書いてありました。あとは肉の旨みを封じ込めるためとか。
で、肉って焼くと硬くなるじゃん?ステーキ焼くときは「肉は常温に戻す」ってよく言うじゃん?じゃあ角煮の時も焼くときは室温に戻してもいいんじゃない…?という素人考えでいざ実践です。
このnoteをまとめるにあたり調べたら、実はこれにもちゃんと理由がありました。

「常温に戻すことで脂が溶け出しやすい=脂抜きが容易になる」とのこと。ちゃんと考えれば分かる理屈だけど、他人から説明を受けると腑に落ちやすいのでこういうHOWtoが書いてあるって大切ですね。
そして脂抜き以外にも嬉しい要素があったので、それは後述にて。

【C】A塩&砂糖をまぶして30分置いてからB(常温に戻してから)表面を焼く

肉を煮込む前でも色んな方法があるから…じゃあどっちもやったらどうなっちゃうの!?という疑問がめでたく湧いたのでやったろうやないかい!となりました。これが自由研究の醍醐味

これら3方法を茹で段階で
①米の研ぎ汁で下茹でしたのち洗う 白ごはん.comスタイル
②昆布だしで下茹で 樋口さんスタイル
これもどっちもやってみたら…どうなっちゃうの!?と思い行いました。
今となってはここでも分岐させたら面白かっただろうにな…初めての自由研究なのであんまり計画性がないです。突発的に思いついたからね

実践:加熱前の処理

ということでカナダ産豚バラブロック1,231gを手にいざ実践です。
スーパーで脂と肉のバランスが良さげな個体を選出してきました。
レシピの分量は樋口さんのnoteをそのまま参考にさせていただきました。

上:【A】塩&砂糖肉 下【B】:常温焼き目肉

画像を縦で表示するより横で見たほうが分かりやすいので加工してきた。
【A】塩&砂糖肉がレシピ通り若干色が濃くなったのが分かります。この時点でもうかなりワクワクしている
この後、【A】肉を3切れ焼き目をつけて【C】のA×Bハイブリッド肉にします。
ここからは作業が全て同じ鍋で行い見分けがつかなくなるので、爪楊枝で区別をつけました。
【A】爪楊枝なし
【B】爪楊枝たて
【C】爪楊枝よこ

実践:下茹で〜煮込み

今回は白ごはん.comさんと樋口さんのレシピを合体させた下茹で方法を採るので、調味前の合計茹で時間としておよそ90分ほど、中弱火で下茹でします。
で、この時間を二分割して
・米の研ぎ汁で45分
・のちに昆布を加え45分
茹でていきます。

米の研ぎ汁で45分下茹で
このラードが使い勝手良くて、麻婆系やるときメッチャ使った
調味料を加え、さらにふつふつと煮込んでいく

実食:3種の角煮を比較

出来上がった角煮たちを丼にして食べます。

あすけんのミキさんが見たら卒倒しそうなバカのカロリー丼 ガハハ!

ちなみにもう画像見てお気づきかも知れませんが、圧倒的に味の染み込みが不足しています
これは私が焦って煮込み時間や仕上げを怠ったのが原因なのでレシピに非は全く、全くありません……角煮というか「豚の煮込み」になりました。大体一緒なんだけどォ…美味しいんだけどォ…!
気を取り直して各角煮を食べ比べていきます。

【A】塩&砂糖肉

見てこのプリプリ感

・脂身がプリプリ
肉はややハムに似た食感 ちょっと噛み応えある
豚肉の旨味がしっかりしている
・脂身と肉の間が一番剥がれにくい(箸できれるがほか二つと比べ時間を要する)

【B】常温肉

柔らかそげ

・一番肉部分が柔らかい 噛んだら口の中でほぐれる
・肉の味は薄い 生姜にやや負けてるまである
脂身はトロトロ
脂身と肉の間が最も箸で剥がしやすい

【C】ハイブリッド肉

ちょっと肉の自我がしっかりしている

・脂身プリプリ
・肉に嚙み応えがある
肉の旨味は二番目にしっかりしている
・脂身と肉の剥がしやすさはAと同等くらい

結論:全部柔らかくて美味しい

作り方や火の加減に甘さがあったことは素人ゆえ重々あるとは自覚がありますが、全部翌日温め直しても肉が柔らかかったので大変満足です!!
作り方変えただけで肉の食感がそれぞれ異なったのも面白かった。
目標二つとも無事クリア出来ましたが、改めてまとめを。

【まとめ】
・赤身部分を柔らかくするには豚肉を調理前に常温に戻すとよい
・肉の旨みを引き出したいのなら塩&砂糖で菌組織の破壊と脱水を担う

特に【A】については肉の旨みもきちんと感じられて「すごい!!レシピ通りだ!!」と大感激しました。ほんとにハムみたいな食感になったからローストポークとかで応用できるんじゃないかな…?
あと、【B】のレシピ策定の時「焼いたら硬くなるんじゃない?」と思ってたんですが違う点で裏切られた結果となってとても楽しかったです。

「肉は常温に戻してから処理する」なんてそこそこ料理をする人からしたら基本中の基本なのかもしれないけど、日常的に料理をしていても知らないことが多いわけです。
そして「どうしてこの工程が必要なのかな」と疑問に思う隙や余白は、作る料理と真摯に向き合う余裕がないと持つのが難しいのではないかな、と思います。料理って基本的には美味しくできたらいいから、「じゃあどうしたらもっと美味しくなるかな」まで足が伸ばせないというか。
また「レシピの工程にこうましょう、と書いてあるけど、理由は書いてない」ことが多いからどう調べたらいいのかわからない。そこが専門知識の領域なんだろうなとも思うけど、コツの本質や理由を知っていれば失敗しない・レシピ通りにやったのにあんまりかも…みたいなことが起こりにくいのにな、とも思いました。

「どうしてこの工程が必要なのか」という視点が持てたことも、今回の自由研究での大きな収穫でした。

更なるマイフェイバリット角煮のために

また、この自由研究を行なった年のおせちで角煮を作る際『きのう何食べた?』14巻#109にてシロさんのレシピを読み返していたら
・柔らかさを保ちたいのなら肉が水の表面から顔を出さないようにすると、肉がしっとりする
と記述があり、やり方を踏襲したらよりフワトロ角煮が出来上がり感動しました。
そして「これ黒豆の煮方と一緒じゃん!」という気付きも得たので、「煮込み料理をする際は具材が自ら顔を出さないようにする」ことが肝心なんだと思います。

前回は味の染みが己の不手際によって不足していたし、経験則も得ました。
毎回クリティカルな豚の角煮を作るためのレシピを作りたい…ということで今年リベンジ予定です
そちらはまたnoteにするつもりなのでお楽しみに

味染み込ませ最中の角煮 煮卵もインされています

ではまた〜

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