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STEAM教育の『A』の意味と意義を考える

 STEAM教育は、最初はSTEM教育、と言われており、のちに『A』が加わり、STEAM教育という言葉が使われるようになりました。この『A』は一体何を意味し、どのような背景で加わったのでしょうか。具体例を交えながらお伝えしたいと思います。

STEM教育とは

 まず、STEM教育について簡単に触れておきましょう。STEMとは、**Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Mathematics(数学)**の頭文字を取った言葉で、これらの分野を横断的に学ぶ教育を指します。世界的に科学技術の重要性が高まる中で、STEM教育は特にアメリカで注目され、21世紀に必要な人材を育成するための鍵として位置づけられてきました。

しかし、STEM教育には一つの課題が指摘されていました。それは、創造性や人間らしい感性を育む視点が不足しているのではないかという点です。この課題を補うために登場したのが『A』の加わった「STEAM教育」なのです。

『A』の意味するものは?

 STEAM教育の『A』は、「Art(アート)」または「Arts(アーツ)」を表します。一見似たような言葉ですが、意味は少し異なります。

Art(アート)
絵画や彫刻、デザインなどの「美術」を中心とした創作活動を指します。

Arts(アーツ)
 美術だけでなく、文学や音楽、演劇といった幅広い芸術や文化活動全般を含みます。

 STEAM教育での『A』は、単に美術だけを指すのではなく、**感性や創造力、表現力を育む広義の「アーツ」**として解釈されることが多いです。

STEMに『A』が加わった理由

 STEM教育が「論理的思考」や「技術力」の向上に重点を置いているのに対し、STEAM教育はそれに加えて、人間らしい発想力や新しい価値を生み出す力を育てることを目指しています。

 たとえば、科学技術を進化させるためには、単に計算が得意であること以上に、未知の課題に対処する柔軟な発想や、他者と協力して社会的な課題を解決する力が求められます。『A』を加えることで、感性と理性が融合した学びを実現しようというのがSTEAM教育の背景です。

STEAM教育の具体例:『A』の実践

 では、実際にSTEAM教育の中で『A』がどのように活用されているのか、いくつかの例をご紹介します。

  1. 科学とアートの融合プロジェクト
    学生が自分たちでデザインしたドローンを作り、飛行実験を行うプロジェクトがあります。ただ飛ばすだけでなく、形状や色彩に独自のデザインを施し、見た目の美しさと機能性を両立させることが目標です。

  2. 音楽を活用したプログラミング教育
    音楽を通じてプログラミングを学ぶ取り組みでは、学生たちがコードを書いて楽器を演奏させたり、オリジナルのサウンドトラックを作成したりします。これにより、技術的な理解とともに表現力も養われるのです。

  3. 文学とロボット工学のコラボレーション
    ロボットが詩を朗読するプログラムを作る学びもあります。ここでは、詩の意味や感情を考えながらプログラムを作るため、言語的な理解と技術的なスキルが結びつきます。

 STEAM教育というと、どうしても「理系」分野に焦点が当たる印象がありますが、もともとSTEAM教育は、従来の科目を横断する複合的な学びを目指したものです。つまり、「科学技術のための教育」ではなく、科学技術を軸に幅広い視点と視野を持つ人材を育てる教育なのです。
 そのため、『A』が加わったことで、「感性」と「論理性」のバランスを重視し、より多様な価値観を持つ学びが可能になりました。

おわりに

 STEAM教育は、未来を担う子どもたちに必要な力を育てるための教育です。そして『A』が加わることで、単に技術を学ぶだけでなく、自ら考え、新しい価値を創造する力が養われます。理系や文系といった枠を越えて、社会に貢献する人材を育てるための「学びの架け橋」として、STEAM教育を一緒に考えていきましょう。

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