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(USD)ステーブルコイン覚書

自分用にさらっと調べたメモの残滓を公開してみます。DeFiはぜんぜん詳しくない(2023年の春頃から眺め始めたくらい。それまではCEX民)のでお手柔らかに。誤りがあれば随時ご指摘ください。信頼度は絶対的なものではなく、あくまで私の心証ベースです。ステーブルコインを利用する際は、各自デューデリジェンスを行った上でリスク管理を徹底しましょう。

データサイトは数多ありますが、とりあえずDeFiLlamaを見ておけば概観を外すことはないのではないでしょうか。DeFiLlamaに載っていないようなステーブルコイン()を触るのは歴戦の魔界戦士だけで充分です。


信頼度:S

USDC

Circle社の法定通貨担保型ステーブルコイン。悪名高いSVBショック(シリコンバレーバンクの破綻)でデペッグしたこともあるものの、DeFi担保の中で最もまともな通貨の一つ。NY州のライセンスを保有。Baseに出向くとUSDbCという謎コインに出会うことがある。これはネイティブチェーン対応前のブリッジ版USDC。ArbitrumにおけるUSDC.eなども同類。

BUIDL

BlackRock(とSecuritize)によりEthereum上で発行されたオンチェーンMMF(BUIDL自体はドルペッグ)。機関投資家向け(最低投資額は500万ドル/米国の認定投資家が対象)なので庶民には関わりがない…と思っていたのだが、BUIDLを担保資産にしたリテールが売買可能と推測される利回り付きステーブルコイン(UStbその他)が出現しそうになってきている。認定投資家のみ発行可とすることで規制を回避していたのに、間接的に誰でも売買できてしまう(担保になっているだけだとしても)と、結局SECやCFTCから刺されるリスクはあるかもしれない。最近はデリバ担保としての利用を模索している報道も出てきている。

信頼度:A+

USDT

Tether社の法定通貨担保型ステーブルコイン。古来より危ない危ないと言われつつ生き残り覇権を取った存在。一応監査を受けていたり、残高証明を出すようになったりしているので、そこそこ安全そう。発行総量の多くをTronチェーンが占めているので、正直全財産置いておくような対象ではないが、他のステーブルコインに比べるとかなり良い方。直近ではDOJからの制裁検討報道なども出ている(テザーのCEOは否定)

信頼度:A

PYUSD

PayPalがやっているステーブルコイン(運営はPaxos)。法定通貨担保型。中の人は相当なオタクなのではないかと、クリプトギークから好評。一方で農家目線では、インセンティブを配りまくって時価総額を肥大させたものの、利回りが悪くなったことで利用者も減少、時価総額が一気に萎んでしまった子、みたいな印象。展開スピードがめちゃくちゃすごいのは前提として、普及したと言ってしまうとちょっと過言かなと思う。

USDM

Mountain Protocolの法定通貨担保型ステーブルコイン(利回り付・リベース式)。発行・償還は法人の登録ユーザーのみ可だが、プライマリユーザーからDEX(セカンダリ)で入手できるため、実質誰でも売買できる。担保資産は米債(T-Bill)であり、準備金が破産隔離口座で保管されている点が売り(月次レポート)。バミューダ金融庁のライセンス(No.202302512 クラスF)と規制を受けているため比較的信用度が高い。

USDP(PAX)

Paxosの法定通貨担保型ステーブルコイン。SaaS(Stablecoin as a Service)を行っている影響で、他ステーブルコインでもPaxosの名前を目にすることは多い(PYUSD・BUSDなど)。Paxos Trust Company, LLCはCircle同様NY州ライセンスを保有(範囲は異なる)。少しオタク寄りな話として、USDC(やUSDT)の登録先はFinCEN、USDP(やGUSD、PYUSD)はNYDFSである。準備金は分別管理されており安全性は比較的高め(個人的にはNYDFSの方がFinCENやBMAよりも資産保全的な意味での信認が高いと思っている)。

信頼度:A-

DAI(USDS)

MakerDAOSKY)のステーブルコイン。歴史と伝統の暗号資産過剰担保型。清算が間に合わずデペッグしたこともあるらしいが(当時DeFiやってなかったので肌感がよくわからない)、長年生き残っており、担保にRWAも混ぜるようになったので、だいぶ良貨の部類。最近MakerDAO → SKY、DAI → USDSにリブランドした。DAI → USDSの変更点の一つに凍結機能があって賛否。sDAIやsUSDSSparkに預けるとゲットできる利回り付トークン。

USDY

Ondo Financeがやっている機関投資家向けの法定通貨担保型ステーブルコイン(厳密にはUSDYは蓄積型なのでドルペッグではなく、ドルと1:1ペッグするのはリベーストークンであるrUSDY。また、要求払預金を厳密に法定通貨担保型と言っていいのかは詳しくないので謎。制度上はもちろん言えるとは思う)。他にもOUSG、OMMF、OHYG、OSTBなどの仲間がいる(それぞれ投資対象や担保資産は異なるので注意。投資信託に投資している商品はプライムブローカー経由になるため、プライムブローカーへのトラストも必要)。表面利回りは低めに見えるものの、実際にはFluxで担保率の高い資産としてぐるレバに活用できるため、少しだけ高くなる。

GUSD

Geminiがやっている法定通貨担保型ステーブルコイン。母体も比較的真っ当で、監査も受けており月次報告書も出している、ごく標準的なコインだと思う。強いて難を挙げるなら、GUSD単体でメリットを出しにくい(利回りつかないしUSDCでいいじゃん、となってしまう)ことと、FTX破綻時にGemini Earnが問題を起こしたことくらい。

信頼度:B

USDe

Ethenaの暗号資産担保型ステーブルコイン。ヘッドラインでは2023年7月くらいから話題になり始めていた。BitMex創設者のアーサー・ヘイズ氏が推しており、mediumの長文記事(これはPart2)もある。担保資産の損益を打ち消すようにショートポジションを作ることでドルペッグの通貨を鋳造し、デルニュー部分のFR(長期的にはプラス=受取になると想定)の一部をステーカーに還元、という仕組み。現在Ethenaがマーケット全体に占めるOIは非常に大きく、一トレーダー目線では、ボラも減るしショートFRも削られるしで、迷惑だなあという気持ちもある。カストディアンを置いてCEXに全額入れずにミラーリングでポジション作ってるのはさすがの設計。ショートが払いになったらどうするの、みたいな話は随所で既出なので割愛。実質USDTロングなのでは?という指摘もある。USDe(利回りがつかない)を預けるともらえるのがsUSDe(利回りがつく)。最近は上記BUIDLを裏付け資産としたUStbみたいなものも作ろうとしている模様。もともとdeUSD等に比べてFR支払い発生時の堅牢性が懸念されていたので、これは妥当(デルニューで組める時価総額の上限は、担保資産の先物市場におけるOI上限以下になるので、その点でもRWA担保に手を伸ばすのは正解)。

USD0

Usualがやっている法定通貨担保型ステーブルコイン(米債トークンのアグリゲーター)。現状アーリーアクセスのようになっているが、コラボ先プロトコルのコードを入れるとGUIが見られる(探せばすぐ見つかる)。USD0をロックするとUSD0++になる(元本6ヶ月〜4年ロック)。確か11月中旬にTGE($USUAL)予定。最初のパートナーはUSYC(Hashnoteのリバースレポ。蓄積型なので1:1ペッグではないが、USDCかPYUSDで発行・償還可。CFTC規制下かつ破産隔離されているつよつよコイン。最近Deribitでの担保化が話題に)なので、初期はHashnote+コントラクトリスク、のようなエクスポージャーになると思う。リスクポリシー。対応チェーンは将来的に増えるかもしれないが、Ethereumメインネットだけで立ち上げているのは非常に好感が持てる(などと書いていたらArbitrumに対応した笑)。

信頼度:B-

FRAX

Frax Financeがやっているアルゴリズム型ステーブルコイン。現在のv3ではガバナンスで承認されたエンティティが保有するRWAを用いた過剰担保型となっており、リアルタイムでBSも公開されている。気持ち深め(3%程度。たぶんv2の頃?)のデペッグ歴があるのは意識されるところ。

GHO

Aaveの暗号資産過剰担保型ステーブルコイン。トップティアのレンディングプロトコルがやっているという安心感は正直ある。執筆時点ではステーキングするとMeritプログラムの利回りがつく(受け取らないと消える)。docs

deUSD

Elixirの暗号資産担保型ステーブルコイン。stETHとsDAIを用いて発行され、ETHのデルニュー利回りを還元(このあたりはUSDeと似た感じなので略)。USDeとの違いとしては、Elixir自体のプロトコル収益が存在する(DEXへの流動性供給/個人的にはプロトコル側からのインセンティブ頼みな印象)点と、ショートFRがマイナスになってきたら段階的に担保資産がsDAI(たぶん将来はsUSDS?)に移行することで不況耐性がある点。docs参考記事

LUSD

Liquityの暗号資産過剰担保型ステーブルコイン。LUSDの借り入れに金利がかからないのが売り。担保率110%以上を課しているものの、担保資産がETHである(ボラが高く清算の恐れがある)ことを考えると、さすがに110は厳しい気がする。実際、トータルの担保率は500%くらいになっている(dune)。ホワイトラベルっぽく展開している影響で、フロントエンドが多数あって使いにくそう(フロントエンド側のDDもしないといけないため)。Stability PoolにLUSDを預け入れ、清算報酬をもらうこともできる。過去の値動きを調べてみると瞭然だが、1ドルを上回る方向に度々デペッグしており、使用する場合は入手価格に注意する必要がある。v2のBOLDが近日開始予定。分散主義者向けという印象(フラットな意味で)。

crvUSD

Curveの暗号資産過剰担保型ステーブルコイン(いわゆるCDP)。正直crvUSDについてはナニモワカラナイので、Alphaistさん等有識者の説明を読むのが一番(Lawrenceさんの記事もよかった)。LLAMMAと呼ばれるソフト清算の仕組みを用いており、(おそらく一時的なオラクル問題等の要因や担保資産の価格スパイクでは)一気に清算されないのが強み。LLAMMAに担保を預け、借り手はcrvUSDで負債を受け取る。ただ、借入需要の方が大きすぎる等の理由で度々デペッグを経験しており、vyper事件のようにcurve自体のリスクもあるため、無理して使わなければならない通貨なのかは謎。dune。利回り付のscrvUSDも最近誕生した

信頼度:C

BUSD

BinanceがPaxosと組んで発行していた法定通貨担保型ステーブルコイン。NYDFS監督下で運営されており、準備金に占める現金・現金同等物の割合も96%と高く、残りの4%も米債であったことから非常に信頼度が高かったが、PaxosがSECからウェルズ通知(「このあと訴えるかも」的な書状)を受け取りBinanceから切られ、NYDFSの指示で新規発行も停止。多くのCEXからデリストされた悲しい通貨。結局SECはBUSDについてPaxosに対し強制措置を発効しない決断をしているし、そのまま放っておいてくれてもよかったのになあと思わないでもない。現在でもDeFi上で無視できない数量が使われ続けているが、今積極的に持ちたいかというと、あんまりという気がする。

GYD

Gyroscopeの暗号資産担保型ステーブルコイン。担保資産を償還できるため、デペッグ要因としてはコントラクトのexploitや、担保資産側に問題があったときになりそう。デペッグ時はアルゴステーブルっぽい挙動をする予定。ステークするとsGYDになって利回りがつく。Dune

eUSD / hyUSD

一般にeUSDというと、LybraのものとReserve protocolのものがあって紛らわしいが、現代でLybraの方を使うことも少ないと思うので、Reserveのみ言及。ReserveではRTokenと呼ばれる合成資産(上記以外にも色々ある)を扱っており、対象バスケットの資産(eUSDの場合DAI、USDC、USDT|hyUSD(base)の場合USDC|hyUSD(ETH)の場合sUSDe、DAI、USDC)を用意するとRTokenをmintできる。担保はcompやAAVEにlendされたり、sDAIやsUSDeとしてイールドを生み出し保有者(・RSRステーカー・トレジャリー)に還元される(eUSDの場合は保有者配分0%)。蓄積型なので保有者配分81%のhyUSDの場合、額面は徐々に高くなっていく。発行・償還にCapがある(制限は徐々に回復する)ことでexploitの影響を抑制しているほか、ステークされているRSRというガバナンストークンがデペッグ時の保険(過剰担保=真っ先に売られる)になっている(USDCがSVBショックでデペッグした時の話なども調べると出てくる。一例としてブログ)。dune

信頼度:C-

FDUSD

First Digital(Labs)の法定通貨担保型ステーブルコイン。BUSDの後釜な認識(客観的事実かは保証できません)。担保資産自体は米債なので安心感はあるが、破産から隔離されていないため(違ったらすみません)、Binanceの後ろ盾がある限りは、という前提でこの位置(BUSDの時のようにBinanceに切られた場合D-くらいの感覚)。Justinとの関係性も指摘されているので注意が必要。香港本社。

信頼度:D

※ 私にとっての信頼度Dは、DeFi用AUMの最大2%くらいまでであればエクスポージャーを取ることもあるかも、くらいの感覚です。「絶対触らんぞ…!」というレベルではありません。

USDz

最近流行っている。Anzen FinanceのRWA系(法定通貨担保型/プライベートクレジット)ステーブルコイン。名前の割にドキュメント等も意外としっかりしており、担保についても一定程度透明性はあるのだが、全投資先が載っているわけでもなく、トラストが必要となる。CentrifugeやGoldfinchを思い返すと(Anzenはエクスポージャーを米国に限定しているため若干マシ)、債務不履行時等、どのようなリスクを負っているのかがなんとなく想定できるはず。その割にリスクプレミアムが足りない気がするので、私見では単体で持つ対象という感じではない(LPやレバファ等の農具として利用するのはあり得る)。ステークするとsUSDzになる。ステーキング利回りが原資産利回りに比べて高そうに見えるのは、Ethereumメインネットのみステーク可、かつ、イールドをステーカーのみで分配しているからと思われ、その点の納得感はある。ハック歴

DOLA

Inverse Financeの暗号資産過剰担保型ステーブルコイン。DOLA自体がというより、Inverseが過去にexploit食らいすぎで、オラクルハックの残債をがんばって返済中な認識。exploitの話はInverseのドキュメントにも書いてあるので、気になる人は読むといいと思う。InverseについてはReveloがまとめブログを書いてくれている。

USD+

Overnightの暗号資産担保型(USDCと1:1)ステーブルコイン。デルニューやLP、各種Vaultへのデポジットなどで得た利回りをリベースし保有者に提供。過去にレンディング先がやらかしたこともあり、コントロール外にある追加リスクを受け入れる必要がある。運用先はstatsで確認可。執筆時点でめちゃくちゃ変なところに入れている印象は受けないものの、どの程度のエクスポージャーを同じ場所に突っ込めるかと言われれば、このあたりの位置付けになってくる。wUSD+、USDC+、DAI+、USDT+、ETH+、wETH+、OVN(ガバナンストークン)あたりもここのトークン。

信頼度:E

USDD

大してリサーチを行っていないにも関わらず、時価総額が非常に高いメジャーコインをこの位置に置くのは非常に気が引けるが、Tron経済圏のステーブルコインという時点で心証的に厳しい。過剰担保型(担保率120%)で実態は240%オーバー、のような書きっぷりなのだが、一般人(TRON DAO Reserve+WL以外の人)がTRXを償還できなかった(2022年頃はできなかった模様。今もできないのだろうか?謎。PSMはあるが止まることもあるらしい)せいで過去に割とデペッグしているし、Poloniex周りや担保資産の移動など悪い噂が絶えない。私が今後がっつりリサーチを入れたり農具として使うことはない一方、深く潜れば何かしらエッジはあるのかもしれない。

TUSD

TrustToken(Archblock)の法定通貨担保型ステーブルコイン…と主張されていたが、担保をオフショアのファンドに突っ込んでいた疑いでSECから起訴され、和解金を払って民事で和解済。会計事務所による日次の検証と、Chainlinkを用いたライブのオンチェーン準備金証明が売りらしいものの、Justinとの関係もありそうだし、まあ持ちたくはないよねという感覚。ユーザー情報や秘密鍵の漏洩などの話も出てくる。なんで未だにこんな時価総額高いんだろうか。一応準備金はサイト内で表示されている。

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