左足首と和解せよ(台湾入院日記—日本編—)
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台湾へ行くと言っていた看護師さんの姿はなかった。
あぁ…そんな神様!いや、神はおられないのですか!?一見怖そうだけど気さくな彼女にむごい仕打ちを与えるのは、どうかおやめください。ちなみにわたしは、いかなる神も信じてないけど。なんなら、有名なネットミーム「ネコと和解せよ」をおもしろがるタイプである。
お盆明けの週終わり、帰国後2度目の診察。
手術の傷は順調に回復しているようで、かさぶたができつつあった。話題は今後のことになる。つまり、今までどおりに歩けるようになるには、どれくらいかかるか、だ。
これは喫緊の課題だった。
フリーランスにとって、動かせる身体こそが資本。ありがたいことに、家にこもったままできる仕事が引くぐらいの量あるタイミングだった。帰国翌日から忙しくしていた一方、できない種類の仕事が確実にあった。
雑誌社からの、飲食店の取材・執筆オファーを断らなければならないし、お付き合いのある広報筋からの面白いネタ提供にも応えられない。これは現場主義のわたしにとって、何よりツラい。
「普通に歩けるようになるのは、いつ頃になりそうですか?」
「このままやと歩かれへんで」
「…?リハビリとかの話では、なく…??」
もし金具を取り出すなら1年後くらいがいいだろうね〜と、台湾の病院で聞いていた。なのでお盆前に言われた「取った方がいい」も、それくらいのスパンで考えていたけど、そういう話じゃ…ない?
Y先生は先週撮ったレントゲン画像をモニターに映しながら言う。
「この長いのが太い骨まで刺さってるでしょ?これで足首の動きが止められてるから、歩こうとしても歩かれへん。こういう留め方は日本では考えられないねんけど、文化が違うんかな〜」
ようやく言葉の意味を理解した。
だからなのか、足首が異様に曲がらなかったのは。てっきり使わないうちに関節が硬くなったのだと思っていたら、物理的にロックされていたという衝撃的な事実。
「どういう金属が入ってるか分からんと取れないから、メーカーとか型番とか、問い合わせといてもらえる?」
現地医療コーディネーターが「Fit to Fly Letter」を取り付けるのに苦労した国軍病院。ガチガチにガードされた情報セキュリティ抜群の政府組織。これはまた....苦労しそうで........。
期限は次の診察にくる2週間後。長いボルトを取らない限り、歩けない。仕事どころか人生に関わる大問題である。そうと分かれば必至のパッチ。傷の消毒をしてもらっている間に、さっそく保険会社にメールをしたためた。
ミッション発動
「足首に埋まる金具の情報を入手せよ」
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