暮らしレシピ#15 お気に入りのチェア
ROOM TOUR
ここ1,2年の話なのですが、動画サイトなどでROOM TOUR(ルームツアー)というタイトルの動画をよく見かけるようになりました。
建築に携わる夫婦や、インテリアスタイリストの方、またインテリアに関心のある方々が自分のお部屋を紹介していくという新しい種類の動画です。
言うなれば、その部屋に住んでいる方が部屋に置いているものを中心に、このようなコーディネートし、日々のルーティーンはこんな感じですよ、と紹介する動画なのです。
その中でも必ず紹介されるものが家具です。
とりわけ、チェアは皆さん拘りがあって熱の入れようも違います。
最近人気なチェアはハンス・J .ウェグナーを筆頭とした北欧ビンテージ、ミッドセンチュリーのバウハウス系のデザイナーズ、インドチャンディーガル都市計画のために作られたピエール・ジャンヌレ、などでしょうか。
かくいう僕も、チェアは大好きで、何冊も名作椅子〜のような雑誌の特集を読んでは探し、少しずつ集めてきました。
部屋の中に置いては眺めて、テーブルと組み合わせ、座って質感を楽しんだり、椅子狂いとまではいかないまでも昔から熱が冷めることはありません。
それも、チェアのデザインや歴史など知れば知るほど奥が深く、また部屋という限られた空間において自由に組み合わせる事ができるからです。
部屋作りは、アーティストではない自分が作る事のできる、日常という名のささやかな作品だと思っています。
ROOM TOURなるものも実はそうやって作り上げた日常という名の作品をだれかに知ってもらい、また共感を得るための表現方法のようにみえるのです。
その中でキーになるチェア。
今日は僕が普段使っているお気に入りのチェアを皆さんにご紹介できればと思っています。
3つのチェアと暮らす
3つの、普段使っているチェアをご紹介していきます。
1:ルイスヴァンテーフェレン
1960年代のオランダのイージーチェアです。
この手のリラックスできるチェアは海外のヴィンテージだと日本人の体型には大きいものが多いですが、少し小ぶりなサイズ感。
ウッド部分はチーク材でできています。
通常、このようなヴィンテージのチェアはシートのダメージがあるためほとんど張り替えを行うらしいのですが、これはシートも綺麗な状態でクッション性も保っておりこのまま使用する事にしました。
物によってはオリジナルの雰囲気を保つためそのまま使用するのも間違いではないと思います。
色が他の家具に合わせやすい黒という事と、正面、横、後ろと、どこから見ても美しい曲線が購入の決め手になりました。
2:カントリーチェア フランスロレーヌ地方
1920年代の、フランスロレーヌ地方で作られていたとされる、通称ロレーヌチェア。
約100年程前の椅子です。
座面が浅く、背もたれが垂直に近い作りです。
ヨーロッパのダイニングチェアは背もたれがゆったりと傾いてはいません。
食事の時は姿勢良く食べて、食後はゆったりしたイージーチェアに移動して過ごすと、いう習慣の名残りが100年たった今でも感じることができます。
このロレーヌチェアは20世紀のフランスの画家、アンリマティスの絵の題材にもなっています。
マティスはこの椅子にお皿と桃を置いて何を感じながら絵を描いたのだろう、と想像したくなりますね。
3:アルフレックス elega15
アルフレックス社のelega15 アーム付きのチェア。
シートはベージュのレザーです。
ショールームで見た時はこの椅子がダイニングテーブルと共に6脚合わさって飾られていました。
座った瞬間に感動するほど心地よく、ここまでシンプルでいて高級感のあるチェアはさすがアルフレックスだなと感じました。
アフターケアも含め、世代を超えて愛されるお店は必ずその理由がありますね。
部屋のテーブルがウッドのものが多いので、色味を合わせるためライトベージュにしてみました。
背景としてのチェア
本来であれば、ダイニングテーブルに同じチェアを揃えるのが定石ですし、綺麗だと思います。
(今回、関電不動産開発さんと作っている阿佐ヶ谷ハウス「わたしの部屋」ではテーブルとチェアはセットですが、これはまた別の機会にご紹介しようと思います)
ですが、僕の事務所では、いろいろな焼物や絵画を撮影する背景として、バラバラな椅子を置いています。
部屋の壁紙や、バックシートの他に、写真の背景としてチェアは重要な役割を果たしてくれます。
被写体の雰囲気が強めな場合は優しい印象のアルフレックスのチェア。
被写体の雰囲気が弱めな場合は脚に装飾性のある1920年代のロレーヌチェアやミッドセンチュリーのデザイナーズチェア、といった感じでバランスを考えると写真としての深みが増してきます。
焼物でなくても、部屋のなにかを撮影して、SNSなどにアップされる時は、画面に映り込む背景としてチェアも意識してみると楽しくなるかもしれませんね。
オットマン
事務所ではこのオットマンも活躍する場が多いです。
通常、足乗せに使うオットマンですが、ちょっと腰掛けたり、立ったり座ったりし易いのはもちろん、
脚立として使ったり、イージーチェアの脇に置いて、サイドテーブル代わりに本を置いたりするのに便利です。
作業するときに床に座ってパソコン作業の台になってくれる時もあります。
小さくて場所も取らず、チェアのサブとしてとてもおすすめです。
普段使用しているのは1960年代のドイツ製です。
シートは布張りに張り替えてあります。
空気感をはずさない
こうすればもっと素敵になるかな?というより、こうやったら空気感が損なわないかな、と最近考える様になりました。
インテリア雑誌を見てあれもこれも欲しい、となり、部屋にチェアを並べた結果すべてがバラバラ。そうなるとやはり心地よい部屋作りはできなくなります。
足すと引く、と同じぐらい、空気感を外してないかを意識することが重要ではないかなと。
トーン&マナー、という広告業界の言葉を借りれば自分のイメージの一貫性、統一性を高める事が他者から共感を得られることに繋がり、またストレスの少ない暮らしへと変わっていけるように思っています。
終わりに
来月からは、いよいよ「わたしの部屋」が出来上がり、新しくその部屋で、どのような暮らしをしていくのか、という事を記事にしていけるかと思います。
ホームページも大幅にリニューアルし、皆さんへのお披露目へ向けてプロジェクトは進行していきます。
家具のことやキッチンのこと、リモートワークが増えた最近の暮らし方などなど、舞台を阿佐ヶ谷ハウス「わたしの部屋」に移し、暮らしレシピ書いていきますのでぜひご期待頂ければと思います。
おわり
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LAPIN ART 坂本 大
現代のうつわと古美術骨董を取り扱うLAPIN ART OFFICE ディレクター。本プロジェクトを通して、自分の大切な物との向き合い方を、自らが描く理想の暮らし方とギャラリストとしての知見を掛け合わせながら提案する。
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