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暮らしレシピ#14 部屋にお花を

はじめに

有名な美術評論家の方が「知り合いは家に花も飾ってないんだ」と嘆いておられるのを聞いた事があります。

花を飾ると一言で言っても自分でどうしたらいいかわからないですし、もしそれが人に見られて心の中で失笑されようものなら恥ずかしいと思っていました。


確かに、部屋のデコレーションとしてお花は欠かせないものの一つと言えるでしょう。

その場に一輪の花があるだけで部屋の空気感は変化し、特に都会に住んでいる人にとっては山からの自然を感じられる一片の情景を手にする事ができます。

最近では若い人の方が雑誌やSNSを通して”お花”という文化が広がっており、お花教室の人気が高まっているように思います。


お花はお花単体で見るのではなく、生ける花器(花瓶)飾る場所総合的な空間作りの意識心地よいお花になる第一歩です。

ですので、今回あまり表だって紹介されないお花の引き立て役である花器空間について書いていこうと思います。

まだこの世界に触れたことのない方々に向けて、興味の入り口として読んで頂けたら幸いです。


今回はなげいれ花の横川志歩先生にお花を生けて頂きました。

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部屋に花を生ける気持ち

なげいれ花というものはルールが決まっていません。お花を何本入れるか、高さは何センチに切るか、などよくご質問を受けるのですがそれが無いのです。

季節ごとに山にある花は変化します。飾る空間や、生ける花器(花瓶)に合わせて自身の感覚で調整し、自然の花をその場に溶け込ませていく総合的な空間作りもなげいれ花だと思います。


何度もお花を生け、美しいと思える基準を発見しながら、理想の自分のスタイルに近づけていく

意外と、こういう暮らしを豊かにする技術感性磨くトレーニングは他に少ないのではないでしょうか。

見えない美のルールを探して、分かりづらいけれど、真摯に続けていれば、きっと暮らしに少しずつ変化をもたらせてくれるでしょう。


花を飾る場所

自分はこの小さな部屋で50cmを超える壺に花を生けようとは思いません。

数cmの小さな壺をデスク脇に飾るというのは考えられますので、花器を選ぶときは何より、空間の広さに合わせて花器の大きさを考えた方が良さそうです。

部屋の場所によって飾れるサイズが異なるので、ここの場所はこれぐらいが最大だな、ここはこれぐらいだな、と考えるべきです。

まず部屋のどこに飾るかを考えてみましょう。


○本棚の上

本棚の上が個人的にはお気に入りです。

本棚の側には読むための椅子が置いてある事が多いと思いますので、くつろぎながら、本を読んで、お花もそこから見れて、小さな癒しのスポットです。

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○仕事用のデスク

リモートワークが増えた昨今ですが、小さな花瓶パソコンの横に置いていても気になりません。

テレビ会議などで相手方の画面に小さなお花が飾られていたら素敵ですよね。

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○展示台

アートが好きな方でしたら、写真のような展示台を用意すると気分によって床の間のように様々なものが飾れて便利です。

ご自身の小さなギャラリースペースといったところでしょうか。

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花器を選ぶ

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花を入れる花器は種類も豊富にあり、様々です。

徳利型のものもあれば、筒型のもあり、変形型のオブジェのようなものもあります。

花器の素材によっても見え方が大分違ってきます。


一番、生けやすいなと感じるものはやはり徳利型かと思います。

特に和の花をメインに生ける場合ですが。

口が小さく、枝ものも固定しやすい形状です。

ただし、口が3cm以下だと枝ものを入れるには細すぎて、草ものしか入らなくなるので、いつも3cmほどの口の花器を選んでいます。

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花   金水引、水引、深山鳥兜
挿し花 横川志歩
花 器 平松壮


また、徳利型意外で花器になるものもたくさんあります。

僕はシャビーな、楕円の円筒状のものが好きで、よく部屋に飾る事が多いです。

ブリキの、何に使われていたか不明の容器ですが花器に転用してみました。

本来の用途と違う用途に用いる事を、お茶の世界の用語で”見立て”と言います。

特にお花の世界でも見立てという言葉はよく出てきます。

今回のブリキの容器はまさに見立ての花器ですね。

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花   仙人草、田村草、三葉芹、鵯草
挿し花 横川志歩
花 器 ブリキ容器 大正-昭和

おすすめの本

様々ななげいれ花の本が出版されていますが、おすすめは京都 日常花(青幻社)です。

京都の邸宅や店舗、古い新しいに関わらず様々な空間に凛とした花が飾られ気持ちの良い本です。

Vol.1とVol.2と出ていますが、自然光主体の美しい写真も楽しめます。

こういう風に飾っていいのか、とか、こんな空間にこの花を飾ると素敵だなとか、何よりお花への興味関心の最初の入り口にはもってこいの本かと思います。

この空気感をぜひ感じて頂ければと思っています。

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終わりに

今回はお花主体ではなく、その引き立て役である花器場所について書きました。

暮らしの中の空間づくり、というものはアーティストではない自分ができる唯一の作品作りだと思います。


選ぶところから始まり、配置し、足し算引き算をし、バランスを整える。お花も料理もとてもクリエイティブな行為です。

おうち時間の多くなった2021年ですが、家の中で何か熱中できるものが見つかると暮らしの充実感が違ってくるように思います。

新しい暮らしの空間作りの一つとして、おうちの中にお花を飾るという事にご興味を持って頂ければ幸いです。


おわり

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LAPIN ART 坂本 大
現代のうつわと古美術骨董を取り扱うLAPIN ART OFFICE ディレクター。本プロジェクトを通して、自分の大切な物との向き合い方を、自らが描く理想の暮らし方とギャラリストとしての知見を掛け合わせながら提案する。
⬛︎ LAPIN ART ウェブサイト

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