暮らしレシピ#16 ニッチのある暮らし
ひと月ぶりの更新になりました、暮らしレシピなのですが、ついに阿佐ヶ谷ハウス「わたしの部屋」が完成しました。
ホームページもリニューアルし、お部屋の内部の写真や説明もご覧いただける様になっています。
そんな「わたしの部屋」が出来上がって最初の暮らしレシピは”ニッチのある暮らし”です。
ニッチとは?
ニッチ、とはフランス語でniche。ラテン語では「巣」や「巣窟」という意味で使われ、フランス語になってからは、西洋建築で壁面のくぼみを指す「壁龕(へきがん)」 や「避難所」という意味が加わりました。
建築業界では、主に建物の一部をくぼませて作り出す空間のことを指します。住宅でも、玄関の靴箱上や、壁面にくぼみを作り、小物やアート作品を飾る棚や、間接照明用として取り入れられている部分です。
よく、ビジネス用語で、ニッチな市場、とか言われたりしますがこれもくぼみ、隙間の意味合いがあり、まさに市場の穴場を指します。
床の間というコンセプト
「わたしの部屋」のコンセプトを考え始めた時、いくつかの要素を盛り込んだのですが、その中の一つである”人を招く”という要素の中で組み込みたかったものがニッチでした。
お客さんを迎えする機能として、昔から日本では床の間という文化がありました。
床の間とは一般的に和室の奥(入口から離れた場所)をさし、畳より一段高く、四角く引っ込んだ形で作られます。
主に生け花や壺、掛け軸などが飾られる場所です。
起源については、高貴な人が座る一段高い場所だったという説や仏壇だったという説、お客さんをもてなすために絵を飾る場所だったという説など諸説あります。
特に茶道では欠かせない空間となり、やがて庶民にも広まりました。
一段高く設えられ美しいものや大切なものを飾る床の間は、日本人にとって昔から「特別な場所」です。
床の間を背にして座る場所は一番の上座(かみざ)にあたり、家の主人や客人のための場所として重視されました。
従来の床の間に変わる現代のニッチ
日本古来の、お客さんをもてなす床の間という場所を現代の生活空間にさりげなく組み込めないかと考え、なるべく目にストレスのないように作ったものがわたしの部屋に組み込んだ2つのニッチでした。
玄関のドアを開けて正面に見えるニッチと、そこを曲がりリビングに続く廊下壁面にあるニッチです。
住む人の趣味趣向は多様ですから、なるべく汎用性のある白の塗装でシンプルに仕上げています。
これからこの2つのニッチについて解説していきます。
玄関のニッチ
玄関のドアを開けると ニッチスペースが現れます。
ここにはお気に入りの花器やオブジェを配置して来訪する人達をお出迎えします。
天井から垂直に落ちる照明と、サイドから照らすライン照明です。
まるで小さな美術館の様にお気に入りのものを飾ることができます。
サイドの照明を消して上からの照明だけでドラマティックに演出することも可能ですし、すべて照明をつけ明るく見せることも可能です。
上と横の照明の調光をセパレートすることにより作れるライティングシーンはかなり幅広くなるはずです。
季節ごとや、その時の天気、招く人の好み、
そしてなにより自分の気分でライティングが調整できる事は暮らしの新たな楽しみに繋がるはずです。
廊下のニッチ
廊下部分のニッチは横長型。
照明は玄関のニッチもそうなのですが、電球自体は裏面に隠し間接的に上から下へ光が落ちる設計です。
ここでは小さなオブジェを飾る事ができます。
子供の頃、お気に入りの何かを集めていた事はないでしょうか。
ビー玉だったり、葉っぱだったり、石だったり。
僕は子供ながらに、どうでもないものに拘って、これはと思うお気に入りのものをカンカンのボックスに入れたりしていました。
大人になるとまた趣味が変わってきてそれがローマンガラスだったり、小さな仏像だったりする訳ですが、アートを好きな人も基本的には子供の頃に集めていた感覚と変わらないような気がしています。
そんな大人になって見つけた宝物を飾れるショーケースが住宅にあってもいいのではないかと思い、今回この廊下にもニッチを作ってもらいました。
ライトとしても機能するニッチ
ニッチ部分は単に凹みを作っただけではなく、今回は調光可能な照明が内蔵されていることが特徴です。
これは自分のギャラリー時代の経験から、何かを飾る時、天井からの照明だけだと綺麗に光が当たらないのです。
またニッチスペース自体が間接照明の役割を果たし、玄関や廊下に光の陰影を作り出す事ができます。
部屋全体が全て天井からの光だけではなく、光源の高さが変化することによって空間に落ち着きが生まれます。
ニッチのある部屋
通常ですと、部屋に何か飾る場合、飾り棚を用意し、天井からのライトを当てる、もしくはスタンドライトから当てることになりますが、今回のニッチは部屋の設計段階から計画しないと作れない機能を搭載しています。
美術館やギャラリーのような非日常の要素が味わえることで、心地よい緊張感が生まれ、暮らしのモチベーションが高まるような部屋。
フィジカルな使い勝手の良さを追求した住宅と異なり実験的ではありますが、気持ちが前に向かっていけるような部屋にする為、細かな部分に拘っています。
仕上がって実物をみると、塗装によりエッジの効いたニッチに柔らかな照明が付いてとても美しく感じました。
ぜひ可能な方はお披露目会(内覧会)で見て頂きたいですし、御遠方の方はホームページから写真が見れますので、内覧している気分で見てみて下さい。
おわり
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LAPIN ART 坂本 大
現代のうつわと古美術骨董を取り扱うLAPIN ART OFFICE ディレクター。本プロジェクトを通して、自分の大切な物との向き合い方を、自らが描く理想の暮らし方とギャラリストとしての知見を掛け合わせながら提案する。
⬛︎ LAPIN ART ウェブサイト
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