『スウィング・キッズ』
2020/06/20鑑賞
『パラサイト』ぶりに映画を見た。
一年に片手で足りるくらいしか映画を見に行かないのに、なぜか韓国映画づいている。どちらもSNSで話題にもなっていたし、それだけ得体の知れないエネルギーが韓国のエンタメ界隈に巻き起こっているのは事実なのでしょう。おそらく。
良い映画でした。
朝鮮戦争の最中。韓国南部にある北朝鮮捕虜の収容所を舞台に、5人のタップダンスチームの話。人種も、思想も、言葉も、国籍も、アイデンティティの何もかもが違い、最初は会話をすることもままならない。そんな彼らが、ダンスを通してつながっていく。
印象的だったのはロ・ギス(演:D.O.(EXO))とヤン・パンネ(演:パク・ヘス)がダンスへの情熱を露わに、
前を塞ぐ人・扉も突き破り、
足元に広がる川・水たまりも意に介さず、
世界の全てを味方につけたように目を輝かせ、
汗を全身にはりつけて一心不乱に踊る、
そんな心象風景を描いたシーンだ。
ダンスを踊っているときはどこまでも無敵で自由。
しかし現実に戻ってみるとそうもいかない。
我に返って目の前を見てみると、
ロ・ギスの前にあるのは“北朝鮮の伝説的な兵士でありながらアメリカ文化に傾倒している裏切り者”という自分を隠す扉で、ヤン・パネの前にあるのは“戦争で親を亡くし小さな兄弟たちを育てていかなくてはいけない”という現実を突きつける貧しい村の風景だ。
エンターテインメントは幻想を見せてくれる。
けど、幻想でしかない。現実はずっと残酷。
わかるな。音楽や映画、演劇に身を委ねてる時だけは世界のしがらみから切り離されて、自由に解き放たれるような気がするんだよね。自分が無敵になったような気がするよね。
でも現実をなんとかしてくれるわけじゃないから。
物語中でも最終的に、
ちぐはぐの5人組タップダンスチームはそれからメキメキ実力をつけ、有名になって世界中を巡業しました〜エンタメはアイデンティティの違いも超えて世界をつなげる!めでたしめでたし!!!!
........なんていう都合のいい話が起こることもなく
でもテコでも動かない理不尽な現実を前にしても夢を諦められるわけなんてないから、「ファッキン・イデオロギー」って全身で叫びながら踊ったわけで。そして一夜の宴ではあれど、イデオロギーを超越できたわけで。
簡単には変わらないからって、クソみたいな現実に抗わない理由にはならない。やりたいことに正直に、懸命に生きる人間たちのエネルギーに打ち震える映画だった。
最近に限らずここ何年か、人種や性差による問題が浮き彫りになって是正に対する動きが活発になってきている印象がある今だから。今見る意味があった。
たまには映画もいい。