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自分を壊して、こねて、つくった3日間。MY genius ブースト合宿のこと

「自分をこわし、自分をつくる。」をテーマとするアート・コーチング・プログラム「MY genius」の第一期が、9月21日よりスタートしました。これまで、「GENIUS」を通じて障害福祉の領域でやってきた「生きづらさを面白さに転換する」ことを、よりたくさんの人に届けるためにはじめたのが、このプログラムです。

そして9月21日から23日まで、そのプログラムの最初の一歩でもある2泊3日のブースト合宿を行いました。これが、想像以上に心揺さぶられる場となり、合宿から3週間が経とうとしている今でも、まだ心が余韻から抜け出せていないほどです。

今回は、この合宿でどんなことをしたのか、どんな感動があったのか、そしてこのプログラムに込めた想いを、代表の僕、西村史彦の言葉で改めてお伝えしたくnoteを書きます。


3日間の合宿には、DAY1:こわす、DAY2:こねる、DAY3:つくるとそれぞれテーマを設けています。

1日目は、自分の枠を壊すための「全身開放ドローイング」を行い、2日目には、枠を壊すことで現れた本当の自分と向き合うために粘土をこねながら内省を深めてもらいました。

そして3日目には、自由制作で、自分の好きなものをのびのびと作ってもらいました。では早速、1日ずつどんなことをしたのか、紹介していきます。

わたしを大爆発させる1日目


DAY1では、自分の固定観念や囚われている枠のようなものを壊していきます。

そのために、「全身開放ドローイング」を行ってもらいました。「全身開放ドローイング」とは、植物を絵筆にして、全身を使い、降りかかってくる絵の具に汚れることなど気にせず、アートに取り組んでもらうというものです。

とはいえ、いきなり「自分を開放して描いてください」と言われても、躊躇したり戸惑ったりしてしまう人もいます。それに、当日は僕の大好きな人たちも来てくれていました。彼らはみんな「ふーみんがつくったプログラムだからきた」と言って来てくれた人たち。僕がとにかく自由な人間だから、変な話、その部分への憧れみたいなものもあってそう言ってくれたんじゃないかと思ったんです。

そんな気持ちに応えるためにも、僕はメンターでもありながら、先陣を切って開放する人としてあの場にいたかった。だからとにかく、率先して自分を開放して暴れました。

全身を使って暴れる僕

自分を開放してもらうためには、安心して開放できる環境が必要ですが、それだけでは不十分です。安心できる場所を用意すると同時に、自分を閉じ込めている蓋も開けてあげなくてはなりません。

でも、楽しさがあると、嘘みたいに簡単に開放できるんです。だからこそ、全身で楽しめる「全身開放ドローイング」をプログラムの最初に持ってきました。

ただ植物の筆を使って暴れ回るだけではなくて、描いたものの上に寝そべって瞑想して、自分と静かに向き合う時間も用意しました。

このあとは、「わたし大爆発」をテーマに再びドローイング。ペアになり、好きなポーズを取った自分をペアの人に象ってもらっていきます。

ここでまさに“等身大”の自分を表現したあとは、植物だけでなく自分の手も使って、さらに自分を爆発させていきました。

自分の指でサインを入れるアーティスト(「MY genius」では、参加者の方々をアーティストと読んでいます)

こうしていよいよ作品が完成。自分の作品を見せながら、タイトルやテーマ、描いていた時の感情、思いなどを発表。メンターはもちろん、アーティスト(参加者)のみんなからもフィードバックをもらいます。

アートコーチのともちゃん(尾形朋美)からは、アートの観点から。僕からは、一人ひとりが漠然と持っているテーマや問いの解像度を上げる、という観点から、作品のユニークさや素敵なポイントを伝えていきました。

とにかく大事にしていたのは、愛をきちんと伝えること。「愛に溢れる場にしたい」という僕の想いが伝わったのか、アーティスト同士のフィードバックも愛を感じるものばかり。それぞれが持ってきたテーマを、アートや他の方から得る視点を通じて、より鮮明にしていけるような時間になりました。

ちなみに、このフィードバックが終盤に差し掛かった頃、なんだか神秘的な偶然がありました。苦しみもがいている現状と、天から光が降り注ぐような理想の未来を描いた作品を制作した、とあるアーティストが発表を行っている時のことです。

それまで良い天気だったのに、太陽の光が降り注ぐなか、突然サッと小雨が降ったんです。太陽の光に照らされてキラキラ光りながら降る雨はとても綺麗で、そのアーティストの描いた未来そのもののようでした。これが合宿中、唯一の雨だったこともあり、僕の心の中に印象深く残っています。

フィードバックのあとは、有志で銭湯へ行ったり、みんなで懇親会をしたりと、アーティスト同士の親睦を深める時間をつくりました。ともに自分を解放した仲間だからこそ、最初に集合した時からまだ24時間も経っていないとは思えないくらい、アーティスト同士の距離が縮まっているのを感じて、とてもうれしくなったのを覚えています。

こうして、長いようであっという間だった開放・こわすの1日目が終わっていきました。

しずかに自分をこねる2日目


「1日目で解放した自分って、どんな自分だろう?」ということで、2日目の「こねる」のテーマは、粘土をこねながら自分と向き合うこと。第二の脳とも呼ばれる手指を使いながら、自分の原体験や感情を探っていきます。

誰かと喋ることもなく、ただ、目の前の粘土を通じて、自分と向き合う。みんなでひたすらに開放した“動”の1日目とは対照的に、一人ひとりが自分のなかに潜り込む“静”が広がっていました。

1時間ほどじっくり粘土をこねてもらったあとは、アートコーチのともちゃんと僕による「とらわれと表現」をテーマにしたトークセッションで、正否のない価値観を発散させ、アーティストのみなさんには、気になった視点や言葉を持ち帰ってもらいました。このトークセッション、実はとても好評でした。笑

そのあとは、「にぎりびと」・神谷禎恵さんが握ったおにぎりを食べて五感のひとつである味覚を研ぎ澄ましたりといった時間を持ちました。

よしえさんには、塩すらもつけないおにぎりから塩だけのおにぎりまでたくさんのおにぎりを握ってもらいました。よしえさんのおにぎりは、食べると本当に元気になるおにぎりで、僕自身も大好きなので、今回ぜひにと思ってお願いしました。期待通り、自分を「こねる」2日目にふさわしいお昼ご飯で、何よりもみんなが本当においしそうにおにぎりを食べてくれていて、「お願いしてよかったな」と、今写真を見て改めて思っています。

おにぎりに力をもらって、午後からはいよいよ、作品づくりもスタート。「わがままな自分」と「あなたの秘宝」をテーマに、自分と向き合いながら粘土を使って制作を進めていきます。

午前は、白い粘土をそのまま使っていましたが、ここからは色も使えるように。

自分と向き合って内省して、そうして出てきたものをアウトプットして、そしてそこからまた内省を深める。そんな営みを、ペアワークやジャーナリングを挟みつつ3時間半程度行いました。

制作のあとは、1人ずつみんなの前で作品を見せながら、どんなことを思ってつくったのかを発表。そしてメンターやアートコーチのほか、アーティスト2名からフィードバックを行いました。

全員の発表とフィードバックが終わる頃には、それぞれの視野も広がり、絆もまた深まっているのを感じました。

そしてこの日の懇親会では、アーティストからとてもうれしい言葉をもらえました。全3ヶ月のプログラムが始まって、まだたった2日しか経っていないのに、「もう、元とったわ」と言ってくれたんです。

「MY genius」の価格は約40万円。決して安い金額ではありません。それでも、そんな風に言ってくれたこと。そう思ってもらえるくらい、彼に価値ある体験を提供できていること。それがとても幸せで、心にグッときました。

実際に、この言葉をくれた彼は2日目の段階で、1日目とはまったく違う顔をしていました。すごく表情筋がほぐれていて、いい顔になっていた。そんな変化が見て取れただけでなく、実際に言葉にして伝えてもらえまでして、とても幸せな気持ちで終えられた2日目でした。

自分で見つけた素材で自由につくる3日目


3日間の合宿も、あっという間に最終日です。最終日のテーマは「つくる」。

まず、1日目に自分を解き放った広場にみんなで向かいます。

天気も良くて、風も涼しくて、歩いているだけでとても気持ちがいい、外で活動するのにはもってこいの日でした。でも実はこの3日間は、もともとの予報では台風がきて土砂降りになる予定で。でも結局、3日間を通じて雨が降ったのは初日の一瞬だけで、天気に恵まれました。神様が味方してくれていたのかもしれません。

広場に到着してからは、ただただ気になる場所に足を運んで、好きなように過ごす時間に。また、午後からの自由制作で使うために、普段は無自覚かつ自動的に使ってしまっている認知的思考を手放して、理由もなく気になるものを探す時間でもありました。

木の枝、木の皮、葉っぱ、木の実、花、みんなそれぞれに、種類も大きさもさまざまなものを持ち帰っていました。

そして「GENIUS LAB」に帰ってからは、いよいよ今回のブースト合宿の集大成となる自由制作に挑戦。

自分で持ち帰った素材のほかに、海に漂着した海洋プラスチックを使ったペレットや、2日目に使った粘土、絵の具、どんなものでも自分が好きなものを使って、作品を作ってもらいました。ただ、絵の具は基本の色である赤青黄の3色だけ。

でも、そのたった3色でとっても深い色を作り出したアーティストもいました。

なかには、外で大きいものを拾ってきたために、外で作品を作る人も。

作る場所だけでなく、作っている時の行動も自由。「GENIUS LAB」のなかで黙々とひたすら制作を進める人もいれば、近くの神社に出かけて、神社の池にいる鯉からヒントを得て作品に活かす人もいたり、本当にみんな千差万別でした。

作品を作ったあとは、恒例の発表とフィードバック。どの日もみんないい顔をしていたけれど、3日目は本当にうれしそうな顔をしていました。

最後のフィードバックを終え、合宿のプログラムはすべて終了。ここで、小さなサプライズを。実はこの3日間、アーティストから他のアーティストへのフィードバックを集めていたんです。その集めたものを、ともちゃんから一人ひとりにハグとともに贈呈しました。

ちなみに、僕もみんなとハグしたかったので、一旦フィードバックを回収して僕から渡すバージョンをやろうとしたら、みんなが僕めがけて飛び込んできてくれて、甲子園優勝校の監督みたいな気持ちを味わいました(笑)

あたたかさと愛に満ちた場から生まれたエモさ


こうして、改めて今回のブースト合宿を振り返ってみたけれど、本当に、とにかく心が揺さぶられるエモい時間でした。もっとこの気持ちや、得た感動を伝えたいのに、エモいしか出てこない。感情が溢れ出して、本当にエモかった。人は本当に感動すると語彙力を失うと聞いたことがあります。だからきっとエモかったしか出てこないのも、言葉では表現しきれないほど、深く感動しているからこそなのかもしれません。

……と言っていても始まらないので、なんとかして僕なりに、どんなところがエモかったのか、伝えていきたいと思います。

まず、今回「MY genius」に参加してくださった方は、経営者など普段はとても忙しい人ばかりでした。そうした方たちにとって、おそらく自分のためだけに使える時間って非常に尊いものであるはず。

そんな尊い時間を使って、一人ひとりが自分の人生において望む方向を定めて、そこに向かって歩き出す。その姿をお互いに応援して背中を押し合うような3日間になりました。

とはいえ、多分アーティストの一人ひとりは、具体的で明確なテーマを持ってきていたわけではないと思うんです。でも生きていると、最近何か引っかかるというタイミングもあるじゃないですか。しかもその引っかかりがいくつもあって、でも根っこではつながっていたりする。

そういう漠然とした人生の澱を持ち寄ったみんなが集まって、自分の蓋を外して自分を覗き込んで、自分をこねて分解して再構築して、3日目に作品を作ったら、一人ひとりが持ち込んでいたテーマがありありとそこに現れていました。

特にそれが感じられたのが、大きな素材を使って外で作品を作っていたアーティストです。

合宿の初日に会った瞬間に、ガチガチに彼の肩に力が入っているのがわかりました。「とにかく自分を変えたい」「自分を壊したい」と必死なのが痛いほど伝わってくるような表情をしていました。

でも、3日目になるとすっかり変わっていて。最初は自分が変わるきっかけを外に求めているように見えたし、きっとそうだったと思うんですが、合宿を経て、もともと自分の中にあったものを大切にし始めたのが感じられました。

例えると、自分で力を入れて押し出していく自由から、自分の蓋がポロッと外れて自然に出ていく自由に変わったようなイメージです。自由制作の作品がまさにその変化を象徴するものでした。

フィードバックしている側が、思わず泣いてしまう場面も。作品を作ったアーティストのことをよく知った上で、その人を思ってフィードバックをするから、想いが溢れて涙となって出てきてしまう、そんなエモさがありました。

別の方のフィードバックでも、想いが溢れたゆえの涙の場面がありました。うまく言えなくてもどかしいけど、3日間かけて、みんなでその場の空気を温めて回転させて、その空気をうねり上げながらみんなが混ざっていくような3日間だったなと思います。

僕たちが提供したいと思っていた効果や価値をきちんと発揮できたどころか、場の力があまりに強くて、予想をはるかに超えた3日間になりました。
この3日間だけでも、アーティストたちが変わったのを感じましたが、ここからの2ヶ月間のオンラインプログラムでも、きっと大きく変わっていくことでしょう。

プログラムの最後には、卒業制作を持ち寄って、文化祭のような最終発表会を予定しています。そこでどんな作品を見れるのか、どんな風に変化した彼らと会えるのか、今から楽しみで仕方ありません。

自分の人生が大好きな人を増やしたい


今回の合宿では、アーティスト一人ひとりが自分と向き合って変化し始めるのを目の当たりにして、感極まる場面が本当にたくさんありました。このプログラムを作ってよかった。心からそう感じています。

一緒に合宿を作り上げた運営メンバーと記念撮影

最後に、「MY genius」への想いを改めて伝えさせてください。実はこのプログラムは、僕が欲しいと思ったもの、過去の自分に与えたいものです。

僕は以前、周りに合わせて社会に馴染もうとしていて、自分を誤魔化しながら生きるのに必死でした。本当に自分がありたい姿や幸せを見失って生きていて、人生という海のなかで溺れていたように思います。

そんな自分を抱きしめながら、「このプログラムに参加すれば、きっと自分が本当に望む人生の入り口に立てるよ」と伝えたい。

心から自分が欲しいと思えるものだからこそ、自分と近しい人、たとえば起業家だったり、自分の人生と向き合おうとしてもがいてる人だったりに届けられるとうれしい。そして参加してくれた方々に、「自分の人生が大好きだ」と思ってもらいたいです。

僕自身、パニック障害、息子の障害、2時間前に電話していた友人の自殺、子どもの死産と、どうにもならない悲しみを経験しながら生きてきました。それでも今は、それをひっくるめて自分の人生が大好きだと言えます。

それは、自分をすべてさらけ出せる家族や仲間と交わっているおかげです。だからこそ、自分の人生が好きになれたし、僕と関わる人にも、そう思ってほしい。この「MY genius」を通じて、少しずつ、自分の人生を愛する人を増やしていけたらうれしいです。


第二期のウェイティングリストはこちら。



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