2020/5/8 晴れ 東京
早朝6時に電話で叩き起こされる。気付かないことがないように最大音量に設定していて、毎度ビクッとさせられる。あまり急を要することがない要件。8時から出勤開始する人にお願いすればいいのに、と一通り不平不満をひとりごちた後にシャワーを浴びる。濡れた髪をそのままにして、家を出る。タクシーをつかまえる。緊急の呼び出しはタクシー代が支払われる。タクシー出勤だと考えれば不平不満も輪郭がぼやけてくる。皇居を通って靖国通りに出る。ドアミラーを全開にしてドライヤーに代替する。領収書のシステムがまだよく分かっていない。努めてにこやかに仕事を終え、当直室の鍵を借りる。悪意の介在を疑うほど狭い当直室のベッド丸っこくなり眠りにつく。
1時間ほどで目を覚ます。菊地成孔『スペインの宇宙食』を読んでいると、また電話がかかってくる。起き上がって部屋を出ると足元がふらついて、うまく歩けない。最近は午前中がとても暇で、14時から17時にかけて忙しくなる。実験的に導入していた交代勤務はなし崩しとなり、結局は毎日出勤している。カレーを注文して自分のご機嫌をとる。週4でここのカレーを食べている。妻と娘が福岡に行った直後は自炊熱が燃え上がっていたが、食事の8割が出前に頼っている。近いうちにタモリカレーを作ろうと思う。付け合わせのマッシュポテトをじゃがりこで作るとジャンキーな味変になって美味しい。
「考える人」に掲載された蓮實先生のメールインタビューを読んだ。「映画批評とは別の領域で、わたくしがフランスの近代文学を研究している学徒である」という言葉に震える。学徒!学問は終わらない。勢いでジョン・フォードのDVDを何枚かポチる。
ある作品に接するとき、そこに間違ってもわたくしの感性を逆なですることのない穏やかなやり方でその肌触りを楽しんでおられる方々が、国籍、年齢、性別を超えて、この世界には間違いなく存在しているという悦ばしい事態にほかなりません。自分と同じ作品を擁護する人びとが離れた世界にも存在しているという、ひそかな仲間意識からくる確信ではありません。そうではなく、その人の映画の素肌への触れ方が自分に快い刺激を与えてくれそうな男女とふとめぐり会ったかのような至福の体験が、ここで問われているのだといったらよいでしょうか。そうした感性の持ち主と遭遇しえたことの幸福感が、わたくしにそのような錯覚をもたらしてくれたのでしょう。(蓮實重彦,「執筆中の『ジョン・フォード論』について」から引用)
17時に颯爽と帰宅。『岡村隆史のオールナイトニッポン』をタイムフリーで聞く。先週に引き続き反省モード&矢部さんがゲスト出演。「サッカーが上手いかどうかでしか人を判断していなかった」若き矢部さんに「面白いかどうか」という判断基準を発見させた岡村さん。NSCに誘ったのは矢部さんからだけど、お笑いの世界に最初に招き入れたのはやっぱり岡村さんじゃないかしら。「2人きりの画だけで笑いになる」「お互いの連絡先を知らない」ダウンタウンを理想としていた岡村さんが、「ちゃんと話し合わなあかん」とコンビを再構築しようと打診し、それを快く受け入れる相方。カズレーサーの指摘通り、これら感動的なやりとりは問題発言をコンビ間の問題に矮小化してしまい、「あんなことあったけどコンビ仲は深まりました」というあさっての方向の着地に終わる可能性もあるだろう。それを回避するにはコンビ時代から引き継がれてきた「あの空気感」を変えてしまうしかない。今週もやべっちを呼んだのは悪手じゃないかなぁと危惧しつつ、僕は永遠にヘビーリスナーです。
タバコが不味くて、身体に良いことを求めていることに気付く。サラダを注文する。ボウルいっぱいのサラダを抱えてむしゃむしゃと食べる。血液が浄化され、腸が喜んでいるのが分かる。健康になりたいな。ライターの䑓次郎さんがエディ・ヴェダーの「Be Sweet」に対して「Be Healthy」と返したエピソードがとても好きだ。「Be sweet each other」とMCしたのはレッチリだったっけ。Be sweet and healthy, each other。甘やかで健康にいようね、お互いに。
妻に電話をする。『ウォッチメン』の魅力を熱く語ったり、「見た目がジャニーズになれなくても、モテ散らかせば概念としてジャニーズになれる気がしていた」という頭が湧いた話をした。妻が「タフだねえ」と称賛とも呆れとも取れる声を出した。妙に気持ちが高揚しており畠山地平『Magical Imaginary Child』を流す。ドローン。気持ちがフラットになる。ハイになったのはこの動画のせい。
ダイアトニックスケール、メジャーコード、マイナーコード、セブンスコードの意味が始めて理解できた。めちゃくちゃ分かりやすい。興奮する。あまり実感がないからこそ「コード進行でメロディの印象が変わる」という体験に強く惹かれる。音楽を頭の中で鳴らそうとしてもメロディしか再生されないことに気付かされる。コードを意識した聴取を意識してみよう。
今日の一曲/The Specials「Too Much Too Young」