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巨大な組織にいることのリスクに気づかない

幹部人事の季節

この時期は都庁の管理職の異動が公表されます。公表されてしまうので、私も一旦は見てみようと思ったものの、PDFの量にひるみました。64ページ。

都政新報見たら、課長だけで合計1058人とあります。動いた人がこの量ということは、一体何人課長がいるの?くらい、改めて巨大な組織です。

中規模の組織の方が経営との距離が近い

人には向き、不向きがあり、私には巨大すぎる組織より程よく小さい組織が向いていると自己判断。私のファーストキャリアはANAでしたので、「元ANAの人」という、わかりやすいイメージで覚えてくださる方が多いです。あえて否定するほどでもないですが、ANAより、ベネッセより、ベルシステム24が私のキャリアの中では最も習得すべきスキルが多かったと思います。

具体的には、

・取引先との折衝スキル
・日々のデータの分析スキル
・コンペなどの経験
・他の上場企業に出向の形で入ることによる順応、知識の習得
・異文化の社風の中でのコミュニケーションスキル
・売上と人件費などコスト意識
・人材の採用、研修、育成、OJT

などなど。そして、どのクライアントの上司にも本当にお世話になり、かわいがっていただきました。

これはもちろん在籍年数にも起因しますが、私が一番の理由だと思うのは、ベルシステムの組織が当時1000人に満たない程度の社員数(いわゆるコミュニケーターは大量にいましたが)でしたので、トップ、経営陣と私たち末端までの距離が非常に近く、経営陣の考え、会社の方向性をダイレクトに感じることができたからだと思います。自分の役割が会社の売上にどんなインパクトを与えているかを日々感じながら仕事をしていた、というのは本当に責任感もありましたし、ある種の誇りも感じて働くことができました。

巨大な組織の中にいるリスク

同じ巨大組織でも、ANAの場合、方向性としての一体感は都庁ほど分散されていません。要は国内線、国際線、貨物など航空事業で、さすがにANA本体の社員がグループ会社ひとつひとつまでは目を配ってはいませんが、基幹事業が明確なので、理解しやすいです。

都庁の場合、ある人は教育、ある人は福祉、ある人は交通、ある人は土木、ある人は観光、ある人は許認可、と複数種の業界があり、そこでの一体感の醸成はかなり難しいと思います。局が違えば、会社が違うくらい、カルチャーも異なります。

だから庁内報(インナー向けコミュニケーションサイト)がすごく重要だと思って、私もものすごく力を入れていましたが、業務そのものが削減されました。広報の目線で見れば、今まさにインナーコミュニケーションは重要視されており、大企業も改めて社内の気運醸成に注力しているのに、本当に時代に逆行した残念な判断だったと思っています。「広報の世の中の流れを理解していない人が広報の予算を削減する」というわけです。「広報会議」とか読んでないの??

管理職の場合、その垣根を越えての人事異動もあり得ます。もちろん一定のキャリアの方向性もないわけではないのですが、「え?あの人があの局に?」という異動も少なからずあります。

これがもし自分だったら、と思うと、自分のやりたい仕事をやりたい気持ちを抑えきれなかったと思います。「組織のために忠誠を尽くす」ことより「この先、自分の肩書きで小さい実績から積み上げていく」ことに注力するキャリアデザインを描きたいわけです。

巨大な組織にいると、「あの人よりあの人が先に出世した」「あの人があのポストについた」「あの人はまた残留した」など色々な思惑が飛び交います。まあ、当時はそんなゴシップも含め、結構話題のネタ的に面白かったということは否定しませんが、そんな話題は外に出てしまえば、だいぶ「どーでもいい」話です。

巨大な組織にいて、キャリアデザインが自ら描けないというのは、実は今の時代、相当な危機意識を持つべきでは?と思っています。民間企業の場合、巨大な組織にいても都庁ほど多事業に渡っておらず、ある程度のキャリアデザインを描くことができるように思います。もちろん、その反面、悲惨な目に合っている方も。

都庁の場合、そこまで悲惨な目に合わされた、というほどの仕打ちを受けない代わりに、脈絡のないキャリアとなる可能性があるというのがリスクです。そこをリスクと思わず、受け入れている方の多いこと。もったいないなぁ、あの人、という人もたくさんいます。巨大な組織ほど、役割が細分化しすぎていて、全体を見ているようで、実はそれは全体ではなく「一部」であるので、大局を理解できていないこともあります。

定年後のセカンドキャリアに備える

在職中からセカンドキャリアを意識して、多くの人にある程度一貫性のあるキャリアデザインを歩んでほしい、と強く思っています。が、なかなかそうもいかないのが現実のようです。

仕事とは関係ない、と思えるスキルや知識でも、セカンドキャリアには掛け算で十分仕事になる可能性があります。定年後なら、月数万円でも細く長く稼げる副業的なビジネスでも十分です。孫さんや柳井さんみたいに稼ぎたい人は別ですけど、そうでない方が大半だと思いますので、どうぞ早めに自分の裁量で楽しくビジネスできる道も空想してみてください。40代後半から50代なら全然遅くないです。

20代とか30代のかたとなると、ある程度のビジネスのリテラシーはありますから、未経験分野にも十分チャンスあります。

組織の人事のゴシップネタより、もっともっと興味深い話ができる仲間を見つけること、付き合う人間関係を見直すことも重要です。よく言われる話ですが、自分の夢やビジョンを安易に否定する「ドリームキラー」と過ごす時間が長いと、無駄も多いです。特に自分の勤めている組織の人は、転職や起業について決して両手を上げて賛成なんてしてくれないものです。そこはそこで割り切って、もっと夢やキャリアを語り合える、足を引っ張るのではない人間関係を作ってほしいなと思います。

私自身、組織をいくつか変わっていますが、辞めてからも続けたいと思う人間関係を築けた人と、しょせん、職場の中だけの関係だった人がいます。利害関係があったから付き合っていた人とはフェイドアウトしてしまいますが、今も楽しく話ができる方々と今後も長く付き合っていきたいなと思います。

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植田 聡子/観光コーディネーター、PRコンサルタント、GR、キャリアコンサルタント
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