役所に「転職」というワードはない
転職したい人と転職する人
「転職したいなぁ」「このままずっとここにいるのは嫌だなぁ」という愚痴めいた発言は時々聞いたことがあります。でも、実際に定年退職(勧奨退職含め)以外で退職された人は、21年以上都庁にいて、5人くらいしか見たことがありません。ガンになって術後サバイブしたけど家族との時間を大切にしたい人、都庁本庁ではなく外郭団体プロパーとして再就職(給与や安定より、やりがい求める人)、メンタル壊してしまった人などで、普通に「転職」する人を知りません。
公務員はなぜ転職しないのか
転職しない理由って何なのでしょう・・・
理由1 民間企業では自分は務まらないと思い込んでいる【諦め】
理由2 公務員の職にプライドを持っている【アイデンティティ】
理由3 思考停止【これが大多数】
これも若手と40代以上とではだいぶ乖離があります。特に最近の若手は「学生時代の友人たちが民間でイキイキと働いている」ことが身近なので、転職に対するハードルも低いように見えます。
思考停止しているのを批判しているのではなく、「忙しすぎて転職を考える暇がない」「転職しているロールモデルが周りにいなくてイメージできない」「転職して公務員になる人が新規採用(一定の年齢以下)以外にほぼいない」ことが背景にあると思います。
公務員は民間で使えない?
東京2020組織委員会に出向したとき、私の周囲はほぼ民間出向者でした。私はその職場が本当に働きやすく、今まで都庁で感じていた閉塞感から解放された喜びをもって働くことができました。
一方で何度となく聞いたコメント
「これだから公務員はダメなんだよ」
頭が堅い、批判はするけど代案を出さない、組織の方向性ではなく偏った利害関係を判断基準に動く・・・
ああ・・・耳が痛いです。自分も長年役所にいて、このような傾向がゼロではないという自戒も込めて。でも役所だとこういう人材がエースとして出世していくこともあるんですよね。
民間で務まらないか、ということに関しては、声を大にして「そんなことはない」と言いたいです。例えば法のリテラシー、ロジカルな作文、リスク管理などはすごく能力が高い人が多いです。
公務員のプライドは正しく持つべき
ここについては、一部の職員のことだと信じたいのですが・・・
民間企業の人のことを見下している人がいます。はっきりとはいいませんが、「業者にやらせればいい」的な言葉遣いに顕著に現れます。
本当に失礼な話です。民間の方に「これだから役人は使えない」と陰で言われているのだとしたらお互い様なんですけどね。私は「役人」「民間」というラベルではなく、一人のビジネスパーソンとして接したいと思っています。こういうプライドなら持つべきではないと思っています。
いずれにしても、リーダークラスで「この人は使えない」とか口に出してしまう人は要注意です。「自分の指示がわかりにくいのでは?」「その人が能力を発揮できない背景は何?」そういうことを考えずに「自分についてこれない人間は使えない」とひとくくりに考える人のことを全く信頼できません。これは役所だけではなく、中小企業の社長にもあるあるです。
「住民のために」という当たり前のミッションが、長年役所にいるうちに、「首長のため」「議員のため」「上司のため」にすり替わっていくと、プライドがねじ曲がっていきます。そんな残念な人材を多数見てきました。