「プロティアン」を読んで70歳までのキャリアを考える
こんにちは。ひとりPR会社を起業した植田聡子です。
最近キャリア論を勉強し始めて、「あれ、私、結構プロティアンキャリアかも?」と厚かましくも思い始めています。道半ばにも至っていないですけど、マインドだけは・・・
聞いたことない方には「なんだそれ?」ですよね。私もついこの前までプロテインと言い間違えることもありました。
そもそもプロティアンキャリアとは?
プロティアンはギリシャ神話のプロテウスが語源で「変幻自在な」「多方面の」「一人数役を演じる」という意味。
興味があったので、早速こちらの書籍を購入。プロティアンキャリアは新卒のキャリアから、自分をアップデートさせながら変化に適応していくキャリア、ということだと理解しています。
この概念は1976年にボストン大学大学院のダグラス・ホール教授が提唱したもので、決して新しいものではありません。1976年当時の日本を思い返せば、終身雇用、年功序列で、一つの組織で生涯に渡ってキャリアを積んでいく価値観が普及していた頃。だからあまりこの概念が実感として日本に馴染まなかったのでしょうね。
プロティアンはどんなキャリアを考える?
これもどのテキストにも書かれていることですが、スタンフォード大学のクランボルツ教授らが提唱した理論。
「計画された偶発性 Planned Happenstance Theory」
「個人のキャリアの8割は予想もしていない偶発的なことで決定される」という考え方。でも、これは偶然に左右されるんだから、計画しても仕方ないでしょ?ではありません。
予想もしない偶発的な事柄が生じたときに対応できるよう、計画していきましょう
プロティアンキャリアに必要な資本は第2章において三つの資本とされています。
(1)ビジネス資本 スキル、語学、プログラミング、資格、学歴、職歴など
(2)社会関係資本 職場、友人、地域など持続的なネットワーク
(3)経済資本 金銭、資産、財産、株式、不動産など
リンダ・グラットンが「LIFE SHIFT」で重要だと唱えている無形資産は社会関係資本にあたるということなんですね。
第4章で社会関係資本について記されています。137ページで2種類の区分で理解が深まると書かれています。「結束型」だけではなく、ゆるやかな関係性を構築していく「橋渡し型」により重きを置いた方がよいのでは、というのは私の持論です。
「結束型(ボンディング)」内向き思考、同質的な集団を形成すること。集団の密度をより強固なものにするもので、会員だけが参加できるコミュニティや、町内会組織など。
「橋渡し型(ブリッジング)」外向き思考、多様な集まりから集団を形成し、集団を開くことで緩やかなつながりを維持する。希望者であれば、誰でも参加できる学習機会など。
ウィリアム・コフィン牧師がイェール大学の新入生に向けて述べたキャリアトラップについての言葉。
「いいかね。たとえラットレースに勝ったとしても、君たちは所詮ネズミのままだ」
どれだけ昇進レースで頑張ったところで、それが自分の意図するものでないなら、ラットレースでぐるぐる走るネズミと同じ。その先、どこにも辿り着けない。ラットレースから抜け出さない限り、精神的な満足感や達成感、人生を自分自身でコントロールできているという自己肯定感を得ることはできない、と書かれています。
安定したキャリアを捨てるのは勇気もいる
とはいえ、ラットレースから抜け出すのって、結構勇気が必要です。
「一つの会社に頼ることが果たして安定なのか」という問いに対し、少なくとも公務員は「倒産」することはないですし、自分の定年までの年数を考えれば、そこに居続けることは可能です。
それだけに、私がこのままずっと公務員でいよう、と思っていたことをあえて見直したことは本当にほとんどの人に相談できませんでした。「もったいない」ってみんな言うんですよね。私としては残りのキャリアをそこに捧げることの方がはるかに「もったいない」と思っていたので、価値観の相違が明らかでした。
ましてや、キャリア論でなかなか論じられない「じゃあ、どうやって稼いで生きていくの?」という実践についてはなかなか正解はないです。
この書籍では「生涯年収3億円」の壁を打ち破れ(第5章159ページ)に収入アップの3パターンも書かれています。プロティアン人材に先天的な要素はいらないとも書かれており、逆に言えば、特定の行動特性を日々実践していくことだと。
キャリア教育を受けていない世代
今はどの大学にも「キャリアセンター」のようなものがあり、キャリア相談を受けられたり、面倒見のよい大学だとその門戸が卒業生にも開かれているそうです。昔話は世代的にも恥ずかしいのですが、大量の資料請求ハガキと資料がどーんと置かれ、ただ、興味のある企業に資料請求していた時代とは隔世の感。
つまり、今の50代はまともにキャリア教育を受けていない世代。
バブル崩壊、失われた10年、リーマンショック、東日本大震災を始めとする天災など、結構な時代のうねりを越えて現在に至っています。中高年になって、キャリアプラトー(キャリアの停滞)もあり、「自分の昇進はこのくらいかな」というのも、リアルに見えてきてしまうのも、40−50代。役職定年も遠い話ではなく。そこからキャリアを考えるのでももちろん良いと思います。願わくばもっと早期に。
組織が求めるシニア人材は「優秀な人」だけ
組織に依存するだけの人材は必要とされていないという事実は明白で、そう思われないために、自身をアップデートし続ける、まさにプロティアンであることは不可欠です。
これまでは3つの資本のうち、「老後2000万円問題」など経済的資本ばかりに着目していたメディアですが、ここに来て、明らかに70歳までいかに働いていくか、も語られるようになりました。一方、企業にとって、70歳までの雇用を維持することにメリットを感じていない、というのは明らかです。
「正直言って、経済界は終身雇用なんてもう守れないと思っているんです」(中西宏明・経団連会長(発言当時))
「終身雇用を守っていくというのは難しい局面に入ってきた」(トヨタ自動車の豊田章男社長)
改正後の高年齢者雇用安定法では、改正前に事業主が義務付けられた雇用確保義務に加えて、65歳から70歳までの就業機会を確保するため、次のいずれかの措置を講ずる努力義務が課されることとなりました。
✔️定年を70歳まで引き上げる。
✔️定年制の廃止。
✔️70歳までの継続雇用制度の導入。
✔️70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入。
✔️70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入。
・事業主が自ら実施する社会貢献事業。
・事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業。
きっと自分の職場は「定年延長」してくれる、という期待は、もちろん皆さんあるでしょう。既に制度変更を明示した企業もあります。しかしながら、その間、どれだけ収入がダウンとなるかについては不透明です。そこを担保する体力を企業サイドが持ち続けられるかも疑問です。
再雇用一択のキャリアではなく、「計画された偶発性」に備え、プロティアンとなるべく、リスクヘッジすることはやっておいて損はない、と思います。
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