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行政の施策でペルソナ設定ってする?

マーケティングの基本「ペルソナ設定」

マーケティングやブランディングでは必ずと言っていいほど出てくるペルソナ設定。サービスを提供する際の典型的なユーザー像を意味します。

まるでその人が実在するかのように、人物像を設定していきます。趣味、価値観、住まい、年収、家族など、ターゲットよりさらに深化させた設定でリアル感を追求します。

この人ならこういう商品、サービスが好きであろうとニーズをイメージする際にぶれないように、というのが主たる目的です。これを設定しないで商品やサービスを開発すると、曖昧なペルソナでは的確な提供ができないからですよね。

イメージしやすい平均的なペルソナでない場合は、マーケットが小さかったりニッチだったり。もちろんそこが狙いならいいのですが、必ずしも「作りたい、提供したい」気持ちと「欲しい、買いたい」が一致しないと、特に広告宣伝費は無駄になってしまいます。

行政はペルソナ設定を怠っている

では、行政の場合、ペルソナ設定って不要なのでしょうか?

行政って最もペルソナ設定が難しい分野だと改めて思います。「誰も取りこぼしたくない」「公平性平等性」がネック。結果として、ペルソナ設定が曖昧なまま訴求しようとするから、知らせたい人に届かないし、響かない。そして、何もしなくても届きそうな人だけが情報をキャッチしてしまう。

行政も、もっとしっかりペルソナ設定をして、「その人ならどんな行動パターンを取るかな」「どんな媒体なら、どんな言葉なら響くかな」と細やかにカスタマイズした、スモールロットの広報を小さく繰り返していく感じ。SNS広告やリタゲ広告しかり。もうマス向けの手法じゃ無理だと思う。

例えば、都庁のSNS運用。組織単位(局単位、部署単位)ですること自体がもうユーザー目線ではないでしょ?

教育目線なら「公立=教育庁」「私立=私学部」が一緒に発信するとか、文化と観光が一本にとか、福祉行政でも「高齢者」「障がい」を全部一緒にしなくてもいい。逆に全庁横断的に「全部の局の高齢者施策を発信するチャネル」にすべき。

どうしてユーザーが、都庁の部局構成を理解して、その部局を全部フォローしなくてはならないのか。そんな当たり前のおかしな視点、きっと若い職員なら気づいているのではないでしょうか。

自分たちが発信したいことじゃなく、ユーザーが欲する情報を正しく届けるためには、もっともっとユーザーに対しての想像力を発揮しないと。

都道府県行政が一番難しい

市町村単位は予算は少ないけれど、組織も小さいので、変化に対するスピードは速い。都道府県レベルが実は一番ペルソナ設定難しいよなとも感じます。

千代田区、港区と青梅市、あきる野市と八丈島、大島ではペルソナは全く異なるのは想像のとおり。国の広報はほぼ機能していないというか、パブリシティ任せですよね。

代理店からはイベントなどでタレントを使う案を提案されがち。とはいえ、行政の予算の中では「これから各事務所が売り出したいブレーク直前タレント」をアサインされることもしばしば。

「このタレントはすごく若者に人気があって、フォロワーが●万人もいるんですよ」

ほんとに、そういう手法に乗っかってはいけない、と今となってはつくづく思います。仕事と言われ、訳もわからず、メッセージを言わされるタレントさんに訴求力なんてないのです。

だって、その施策に思い入れなんて全然ないから。本当に面倒だと思っても、ダメ元で、その施策に思い入れがありそうなタレントさんにしっかり頭下げて、なぜそれを発信してほしいのか、職員がしっかり説明した方が絶対うまくいくと思っています。

というのが、行政を離れた後、とある施策のインフルエンサーの一人として、とあるタレントさんに直接お願いしたことがありました。ダメ元でお願いしたのですが、本当に快諾してくれて、ご本人が一生懸命考えて発信してくださったのですよね。みんなは「あの人がやってくれるわけない」と諦めていましたが、ちゃんと私の思いは相手に伝わったと今も思っています。

「行政職員はイベント屋ではない」と以前都政新報にシニカルな記事がありましたが、半分あってるし半分は反論したい。

「イベントを華やかにやった風」はダメだけど、打ち上げ花火ではなく、訴求力あるイベントを使って上手に発信するのは役人だって必要なスキル。代理店にコンペさせて「ふん、ふん、いいね」ではなくて、もっともっと想像力を働かせてほしい。そういう意味でペルソナ設定をしっかり行うということで、そのペルソナの行動パターンを見越した発信をすべきだと思います。

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植田 聡子/観光コーディネーター、PRコンサルタント、GR、キャリアコンサルタント
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