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こんにちは。Kiwi PR合同会社の植田聡子です。

先日、国立新美術館の連続講座「アートをめぐる場の設計」に参加してきました。
初回のテーマは「地域と美術館の関わりを考える」、講師は鷲田めるろさん。
これは行くしかないでしょ、と応募者多数の場合抽選にもめげずに参加希望を出し、無事行けることになりました。

1 展覧会・展示会

鷲田さんといえば、金沢21世紀美術館から十和田市現代美術館、と地方の美術館で吸引力ある企画を成し遂げている方。首都圏ではないエリアでどのようにこれまで取り組まれてきたのかというお話が中心でした。

金沢といえば伝統工芸。お茶の文化から茶道具、などは知られています。グラフィックデザイナーの佐藤卓さんと地元作家7人のコラボでは「茶箱を作ろうプロジェクト」を展開されました。

佐藤卓さんは本質を抜き出す手法のデザインで知られています。形状と比率を変えた茶道具を作るというアイデア。大きさによって用途が変わっていく、道具から機能を切り離すということ。私自身も東京2020アートポスターで佐藤さんのデザインの源に触れたことを思い出し、勝手に興味津々。

2 まちづくりへの貢献(博物館経営論、外部経済効果)

スペインのブッケンハイム美術館は非常に特徴的な美術館。

工業都市のビルバオ、衰退からの活性化にインパクトを与えた美術館であり、その後の美術館のありかたにも影響を与えたと言われています。美術館を核としたまちづくりが、その後観光都市へと生まれ変わっていったんですよね。

TATE MODERNもしかり。テムズ河の南側の元・発電所を活用しています。

金沢も他の地方都市同様に郊外のショッピングモールに人と車が集まり、駅周辺が空洞化し、店舗等が減っていく状況だったそう。

単に地域を体験できるだけでなく美術館の周囲の商店街活性化などの経済効果を狙う、まちづくりにおける美術館の役割、回遊性について考えられています。

これ、自分の出身である横須賀美術館にはおそらく欠けている視点。美術館とまちづくりが完全に縦割りで切り離されている気がします。(個人的感想)

3 ツーリズムと地域のボランティア

これ、一番知りたかった内容!十和田市現代美術館は来館者の7割が県外からなんだそうです。つまり市民の税収だけでない、稼ぐ美術館。

地域とツーリズムの結びつけという意味で、美術館が果たす役割は非常に大きいですよね。

毎月10日に行われる「げんびさんぽ」は地域ボランティアが案内役を務め、対話型鑑賞のファシリテーターとして作品を見て回るそうです。

十和田市現代美術館は常設展示の割合が大きく、収蔵庫もないため、つまりずっと展示されている作品が多いんですよね。だからボランティアさんも「自分たちの町の作品だ」という市民の誇りを持って、案内できるのだそうです。

4 地域とアーカイブ

アーカイブとこの次のジェンダーは、このような講座でこれまであまり語られてこなかった内容ではないでしょうか。

金沢から車で40分のところにある「鶴来」というエリアは鉄の加工の産業がさかんなんだそうです。

1995年までは、金沢市の姉妹都市であるゲント市の現代美術館の館長であり、1992年のドクメンタのコミッショナーもつとめたヤン・フートが企画に関わった。それにより、国際的なアーティストが鶴来に滞在し、鉄加工業など地元の職人の協力を得て制作を行うことが実現した。
鶴来現代美術祭は、近年各地で盛んに開催されている地域の芸術祭の先駆的な事例である。開催事務局を地元の商工会青年部が担い、制作にも協力したことも特徴で、それが可能となった背景には、「造りもの」で有名な地域の祭り「ほうらい祭り」での恊働作業が伝統的に続いてきたことがある。

金沢21世紀美術館ウェブサイト

キュレーターの方々というのは、改めて物事をキュレーションすることに当たり前ですが長けている方々。素人にはただのバラバラな事象を何かのテーマによってどう見せるかを考えるわけなのですが、その後の保存、保管という視点にもやはり長けていると実感します。

その後、鶴来のプロジェクトはワタリウム美術館の「水の波紋展」につながるそうです。

収蔵機能を持たない十和田市現代美術館にも地域の協力者である「松本茶舗」という地元のレトロ店舗が、要は「勝手にアーカイブ」機能を担っています。お店に行けば、説明をしてくれたりするそうですが、これもまたどのようにアーカイブ化していくか、を考えるべきかもしれません。

犬島のご高齢ボランティアさんのお話をどう今後残していくか、と同じことを感じました。この辺りは、アーツカウンシル東京のアートポイント計画に少し関わった際に、皆さんに教えていただいたことの一つかも。

5 ジェンダーと地域

男性優位の社会、地域的周縁性(中央>周縁)、マジョリティ>マイノリティ

世界の作品を見せていくには学芸員はある種、「地方においてマジョリティではない」集団です。東京や海外などで高等教育を受け、外国語を扱い、アートの専門知識を有する人たち。

この人たちが地域とコミュニケーションを行うには、関係構築のためにどのように相手に歩み寄るか、が重要になります。これはすごくよくわかります。

鷲田めるろさんからはジェームズ・クリフォードの「コンタクトゾーンとしてのミュージアム」をご紹介いただきました。接触領域、重なり合っている領域で対話が起こる部分をミュージアムとして捉えていくこと。

また、ハル・フォスターの「民俗誌家としてのアーティスト」もしかり。

ここは自分の中でもっと調べていくべき内容。

最後に

地域と美術館の関係を語る上で、北川フラムさんの言葉をご紹介いただきました。

日本の左翼は農村で革命を指導しようとした時
地方ボスの死骸する腐敗や不正という農村の構造的悪に対峙し、
それと果敢に戦おうとした。
しかしこうした闘いがことごとく失敗したのは、
それらが都市的・民主主義的な価値観に基づくもので
結果的に集落の共同体的な価値観の否定となってしまったからではないか
それは住民の共感を得ることはできない。

北川フラム(2014)「美術が地域をひらく」現代企画室


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植田 聡子/観光コーディネーター、PRコンサルタント、GR、キャリアコンサルタント
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