【ソードアート・オンライン】王道最強光のボーイミーツガール曲の魅力。この瞬間を掴め───
ライトノベルの王。
数多の作品がひしめき合い、数多くのキッズへ影響を与えるライトノベル。
その王、レジェンドたる作品。それはなんだ。
答えは【ソードアート・オンライン】だ。
作者の隠しきれない寝取られ性癖はともかくとしてSAOは本当に良質なボーイ・ミーツ・ガール作品だ。
お互いがお互いを絶対に守ると決めて支え合い戦いをこなしていくキリトとアスナの姿にこそ人は心を震わされる。
ストーリーや演出もさながら、私は特に音楽を愛して止まない。
ANIPLEXが誇る最強歌手陣営による圧巻の主題歌はどれもが圧倒的にかっこいい。
LiSAと藍井エイルが代わる代わる主題歌をやるアニプレ必殺スイッチ戦法に打ち勝てるアニソンなどない。
何よりも歌詞のボーイ・ミーツ・ガール要素が非常に濃い。歌詞が本当に熱いのだ。
まず曲としてかっこよい。それから厨二系ラノベの雰囲気に合う漫然とかっこいい歌詞がある。全体的なかっこよさを崩さずに作品再現要素が入っている。
この精巧な歌詞の創りに魅了され、聴いているだけで隠していた厨二感情が喜びの悲鳴を上げる。
今回、特に心震わされる3曲の話をする。
本当は16連発で曲解説を浴びせたいところだが厳選行為の上にこそ強調は成り立つので3曲に絞った。
始めよう。
迷わずに、今。
その瞬間を掴め
言わずと知れた神の映画【オーディナル・スケール】の主題歌だ。そしてキリトとアスナの関係をモチーフとした最強のボーイミーツガール曲。
刹那的、消えゆく「一瞬」にこそフォーカスしたあまりにも儚く美しい歌詞は他の追随を許さない。SAOで最も美しい曲はなにかと問われたら私は閃光のような速さで【Catch the Moment】を上げる。
美しさの全ては「瞬間」にフォーカスを当てているという点に尽きる。
一緒に過ごす瞬間。過ごした瞬間。これから一緒に過ごしていく瞬間。どれも慈しまれるべき時間だ。
なぜこんなにも「瞬間」にフォーカスが当てられているのか。それはオーディナルスケールにおけるアスナのソードアートオンラインで過ごした記憶が消える展開に起因する。
2人にとってソードアートオンラインとは苦しい戦いの記憶である。だがそれ以上に2人の出会いであり、愛の生まれた場所でもある。
そこでの記憶が消えるということはアスナにとってはどういうことか。
桐ケ谷和人をどう好きになってどこを好きなのかがすっぽりと抜けている状態になることだ。
自分がどんなきっかけで、どこを好きになったのかを思い出せない。でも今、彼のことが好きという感情だけは胸にある。
だからアスナに生まれる不安とは「明日もキリトを愛することができるのか」である。
この前提があるから【Catch the Moment】は美しい。本当に美しい。
2人には積み重ねた時間がある。それが消えてしまったから不安はある。それでもふとした拍子に感じる好きの瞬間だけが2人の心は繋がっていると実感させてくれる。
この歌詞がその全てだ。
【あと何回キミと笑えるの?】
アスナの不安がこの一言に詰まっている。
だからこそ、今こうして一緒に笑えている「瞬間」が美しく愛おしいのだ。
例えば「息をしたタイミングが合うだけで嬉しくなったりする」ようなそんなありふれた瞬間だ。
この歓びが明日も続くかわからない、あと何回こんな些細なことで笑い合えるのかわからない。
「この瞬間を掴む」ことが自分自身を肯定することになる。
過去は薄れていく。失った思い出も戻らないかもしれない。それでもこの集めた一秒だけが永遠へと続く。
そんな不安と葛藤しながらも未来を見ている弱さと強さが歌詞から感じられる。
同じくSAOサバイバーであり記憶の消えたクラインは消えたSAOの記憶を受け入れようとしていた。
辛い戦いの記憶でもあったから、それなら消えて困ることのほうが少ないのではないかと。
そういった大人な割り切り方は葛藤を続けるアスナとの対比になっている。
故に【オーディナル・スケール】の最強くそ爽やかボーイ・ミーツ・ガール究極ラブコメエンドの終盤が映えるのだ。
恐怖に打ち克って守り抜いた2人だけの色褪せない「約束」だけが美しい。
この戦いの〆として流れる【Catch the Moment】の歌詞は世界で一番美しい。
本編中、アスナが記憶を無くしてからの不安。日記に綴られていた恐怖のほどが等身大のスケールで描写された歌詞なのだから。
大切な「約束」さえも忘れていたアスナが全てを思い出し、約束の流れ星を2人で見るあの終わりだからこそ【Catch the Moment】は完成する。
映画のみの話ではない。
【Catch the Moment】は【ソードアート・オンライン】という作品におけるキリトとアスナの関係の到達点の一つである。
2人の生きる世界は過去ではない。一緒に過ごす「瞬間」が全てである。
攻防自在の歌詞が過ぎる。あまりにも美しい。
最後の決意、出した答えが【逃さないよ僕は この瞬間を掴め】であるから本当にこの世界は綺麗だ。
未来の不安も過去の悲しみもある。それでもやっぱり今この瞬間の2人だけが今の全てなのだ。ボーイ・ミーツ・ガールとはかくべきである。
守るものがあるから
体調不良で活動をしていた世界の藍井エイルがなんと新曲を出した。
いつもと変わらない圧倒的な声量と歌唱力で度肝を抜いてくれた。ああこれマジで藍井エイル、こういう曲なんだよな藍井エイルの王道は。素直にそう感じさせてくれる神の曲である。
パチンコでの曲なので厳密に言えばアニメの曲ではない。ゲーム曲の扱いに近しい。
しかしアニメ主題歌に劣らない圧倒的解像度を誇っている。
歌詞がものすごく凄まじくSAOに寄り添っている。全編通して余すとこなくかっこよくそれでいてSAOらしい。
1番はキリトの心情を綴っている。2番はアスナにスポットが当たる。ソードアート・オンライン時代がメインとなる歌詞になるがこれが本当に染み渡る。
冒頭からこれである。
ソロプレイヤーであるキリトの、桐ヶ谷和人の等身大の弱さが綴られている。ソロのほうが気楽だから、という心にはこういった他人を信じることへの怖さから来ている表現だ。
こちらも初期のアスナを綴った歌詞である。
血盟騎士団の副団長として、まだキリトに出会う前の取り繕った姿を思い浮かべられる。
2人とも出会ってからの強さではなく、元来持っていた弱さにフォーカスされている。だからこそ熱いのだ。
1番サビと2番サビで2人が弱さを乗り越えて戦う様が描かれるからだ。
特に「守るものがあるから」というフレーズはキリトだけでなくアスナにも当てはまる。
全編通してSAO時代の圧倒的解像度から繰り出されるキリアス最高エナジーを叩きつけて来る。
弱さにもフォーカスした湿度ある歌詞を圧巻の疾走感で料理して爽やかにしているのもすごい。
本当に歌詞の全て、余すとこなくどこを見てもかっこよくて原作の味がするのが凄まじい。これがアニメ主題歌でないということに驚愕するばかりだ。
黒と白がイメージカラーにあるキリトとアスナで「青く」という表現を用いているのはやはり青春や青臭さという点をイメージしているからだ。
弱さがあるから強くなれる。守りたいものがあるからなりふり構わずに本気になる。そういった「青さ」へのフォーカスが本作の持つ元来のボーイ・ミーツ・ガールらしさを加速させている。
出会えた奇跡 感じたい
やはりこれは外せない。
シンプルに神の曲。本当にとりあえずはそれ以外言うことがない。
イントロ開始1秒から余すとこなく全てがかっこよく美しい。
何よりも王道でヒロイックな歌詞が心を震わせる。
SAO曲の特色として歌詞中の作品要素は匂わせる程度に抑えている。
熱めのアニソンのように固有単語をばんばか出したりという方向性ではない。普通にかっこいい系の歌詞があり、その中に作品要素がある。
始まりの曲である【crossing field】はその典型といえる。
全体的にふんわりと作品らしさをまとわせた歌詞にはどちらかと言えばスタイリッシュ寄りかっこいいアニソンに当たる。
だからこそ色濃く作品要素を反映させた部分が光る。それにこそフォーカスしたい。
特にこの部分は和訳すると熱く濃いキリアスパワーを吸うことができる。
いつも一緒にいたい。
抱き締めていたい。
君の涙を拭うと誓う。
そして【I'll give you everything I have】である。
直訳すると「私の全てをあなたに捧げます」
つまり「俺の命は君のものだ」ということだ。
SAOのオタクであればなにを意味している言葉なのかその真意が分かる。
それでいて最後の締めの言葉にこれを持ってくるかと。流石にこれはやってくれている。
直に台詞をぶちこんで来るのではない。ワンクッション置いて理解させる芸術点が高い。
無印1期の範囲で選ばれている台詞がこれというのも実に作品理解度が高く頷ける。
逃さないよ 僕は
真なる名作というものは往々にして音楽もまた素晴らしいものだ。
梶浦由記にLiSAと藍井エイルがいて音楽に触れないというのは冒涜というもの。
やはりSAO曲はちゃんと弱さが強調されているのが本当に良い。弱さがあるから支え合い、守り合う尊さが強調されるからだ。
なんだかんだでしょっちゅう曇らされているキリトの葛藤がある。臆病で甘えん坊なアスナの表に出さない本当の姿も練り込まれている。
そういった等身大の弱さがあるからこそ守り合いながら生きる黒と白のコントラストは眩しい。
ここで上げた3曲は特にその色が濃い。
中でもやはり【Catch the Moment】は珠玉と呼ぶに相応しい。どれだけ新しい曲が出ようと色褪せることはない。
原作味の濃い曲は聴くだけで作品に思いを馳せることができる。
それはいつだって好きをリフレインすることができることを意味している。音楽がある限り、この気持ちは色褪せない。
胸の奥で強くずっとずっと、響いていく。