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一カ月間今までに買ったサイケアルバムを振り返る㉒ Fifth Dimension/The Byrds

書く文章が思いつかず、またも深夜の更新となってしまった。そもそもこの自己満足に近いこのシリーズに追っている人などいるのだろうか。

今日はバーズの3枚目のアルバムである「Fifth Dimension」を聴いた。邦題は「霧の5次元」と名付けられており、日本ではこれで定着している感がある。原題には霧なんて単語は入っていないのに、アルバムの雰囲気と合致していて妙に納得感があるので好きな邦題だ。

ビートルズのリボルバー、13thフロアエレベーターズの1stと並び、66年に発表されたサイケの最初期の頃の作品であり今作は特に発表が早かったこともありサイケの元祖と言われることが多い記念すべき作品である。バーズは当初ボブディランの曲のカバーなどを演奏しており、ジムマッギンの12弦ギターなどの演奏が特徴のフォークロックバンドであったが、今作ではインドのシタール演者であるラヴィシャンカールや、ジョンコルトレーンなどの影響を受けてロックの域を越えて更に音楽性が拡張された作品でもある。

恐れ多くも私が今作を聴き始めたのは今年からであり、サイケ好きを名乗りながらこの最初期の名作を通らなかったのは中々恥ずかしい。改めて、サイケのルーツとなる今作を味わっていきたい。

曲ごとの感想

01.5D (Fifth Dimension)

タイトル曲となる一曲目で、シングルとしても先行で発表されていた曲。ゆったりとしたテンポでのどかな雰囲気がフォークらしい名曲。ギターのアルペジオが気持ちいい。不思議な高揚感を感じるこの曲は、歌詞も精神的な部分をテーマに歌っており非常にサイケらしい。

02.Wild Mountain Thyme

トラディッショナルというクレジットから、民謡をアレンジした曲か。雰囲気は一曲目に似た感じで、ストリングスの音が更に幻想的な雰囲気を引き立てている。

03.Mr. Space Man

タイトル通り宇宙人について歌った曲。今作はどうも空や宇宙についてがテーマの曲が多い印象。ギターの演奏がバンジョーぽくて、カントリーらしさもある明るい曲調になっている。

04.I See You

アップテンポで焦燥感を感じる曲。途中のグチャグチャとした12弦ギターの演奏はジョンコルトレーンの演奏から着想を得たものであり、ギターでサクソフォンのようなプレイをしようとしたものだという。

05.What's Happening?!?!

こちらもゆったりとした曲で、間延びしたボーカルの歌い方も特徴的だ。合間の12弦ギターの演奏も地味に良い。

06.I Come & Stand At Every Door

この曲はナジムヒクメットによって書かれた詩をピートシーガーが歌に作り替えたものという込み入った成り立ちでできた曲である。とても暗くサイケな雰囲気で、歌詞は原爆で亡くなった少女がこの世をさまよっているという内容であり、平和を訴えるというテーマは以降のサイケの思想にかなり通じるものがある。

07.Eight Miles High

シングルとして先行で発売されていた曲で、サイケの始まりと一説に言われる曲の一つ。その歌詞の内容からドラッグソングとされて当時はラジオで放送禁止曲の扱いを受けていたという不憫な曲でもある。本人たち曰く「飛行機からインスピレーションを受けた曲」。ジョンコルトレーンから影響を受けたギターのプレイがとても衝撃的で、聴いていて独特な高揚感を感じる名演だ。従来のロックの型にはまらないその演奏は、当時としてもかなり攻めた内容のシングルだったのではないだろうか。

08.Hey Joe (Where You Gonna Go)

カバー曲であり、ジミヘンがデビューシングルでカバーしていた曲と同様のもの。かなりブルージーなアレンジのジミヘン版と違ってドタドタとしていて賑やかな印象。

09.Captain Soul

インスト曲。ハーモニカが挿入されておりどことなくブルージーな雰囲気。

10.John Riley

二度目のトラディッショナルソングからのカバー曲。物語調の歌詞にストリングスが乗ってドラマチックな雰囲気に。

11.2-4-2 Fox Trot (The Lear Jet Song)

ラストとなる曲。タイトルのごとくジェット機のエンジンのコラージュから始まり、ついに空を飛び立っているかような曲。空に歌った曲が多い今作のラストが空を飛ぶこの曲で終わる、というのが一貫したコンセプトのようなものを感じられて好きな終わり方。

(Bonus Track)

01.Why

元々はシングル「Eight Miles High」のB面で発表されていた曲。これといった特徴はないがB面らしいコンパクトな感じが好きな曲。

02.I Know My Rider (I Know You Rider)

トラディッショナルソングのカバー。疾走感あふれる爽やかな演奏が気持ちい。

03.Psychodrama City

歌い出しまでに1分以上あり、歌よりも演奏がメインといった感じの曲か。ここでもジャズらしい自由な演奏のギターが聴ける。

04.Eight Miles High (RCA Studio Version)

05.Why (RCA Studio Version)

アルバム収録曲の別テイク。本編の音源と違って楽器のステレオ位置が整えられているのでより現代的な聞こえ方になっている。コーラスの広がりも意外とこちらのテイクも好き。

06.John Riley (Instrumental Version)

本編の同様の曲のインスト。

今回聴いて改めて良いと思った曲

04.I See You

疾走感ある演奏とギターがとてもかっこいい。さながらカオスでサイケらしさもあって好きな曲だ。

まとめ

元々がボブディランのカバーから始まったバンドという事もあってラブソングに縛られない自由な世界観のバンドだったが、サイケデリック思想の影響を受けたのか、より精神的な部分を歌うようになりスケールが大きく、世界観がより深くなった作品だと感じた。「Eight Miles High」「I See You」などで聴けるジャズからの影響を受けたギターのプレイのインパクトは、同時期のバンドから頭一つ抜きんでたようにも思える。もちろんコーラスワークも素晴らしく、どこまでも広がりを感じさせる美しさ、ハモリの綺麗さはとても幻想的であり、正に霧のような蜃気楼のような儚さすら感じる。さすがはサイケの元祖と言われるだけのパワーがある。

今作が当時の音楽シーンにどれほど影響があったかはわからないが、今作の登場によってロックは更に表現の幅が広がったのではないかと思った。それくらいの革新的なサウンドや演奏が今作には収録されている。ただ個人的にはサイケ感満載な幻想的なA面に比べるとEight Miles High以降のB面は少々曲に弱さを感じたかもしれない。好きなアルバムには変わりはないけれど...。

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