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立ち会い分娩ってさ。
出産が近づいてきたら、妊婦さんは『立ち会い分娩』について考える瞬間が来ると思う。
コロナが流行して以来、入院中の面会、立ち会い分娩が全て出来なくなってしまい数年は過ぎた。
働く側としても正直、「立ち会いなし分娩」に慣れてきたところではあった。
しかし、最近大学病院でも立ち会い分娩や、入院中の面会が再開されている。
人生に何度もあるわけではない、『家族が増える出産の瞬間』には、多くの苦労もある、感動もある、それを家族と共に過ごすことは大きな意味があると考える。
だがしかし、立ち会う家族の過ごし方は様々で、助産師的に「それはないわ。」と知らず知らずのうちに助産師の中の株が下がる夫や家族も多くいる。そんなことは家族にとっては別にどうだっていいのだが、せっかくの出産立ち会いの機会を家族にとって最高の瞬間にしてもらいたいと切に願う気持ちはある。
私の勤務する病院では、立ち会い分娩は再開したものの、立ち会えるのは夫、もしくはパートナーのみという制限がある。
ここからは、夫、パートナーに出産に立ち会うにあたり考えて欲しいことを書いてみようと思う。
これは、私個人、一助産師の意見であることをご理解いただきたい。
所属病院を代表する意見では一切ない。
まずは、、
立ち会おうと思う人間は、
以下のことを頭に入れておいて欲しい。
・分娩は時に死ぬほど時間がかかる。
・母体はとてつもない痛みに襲われ続ける。
・分娩は結構血が出る。
・分娩時、便のにおい、羊水の匂い、血液の匂いなどとんでもない空間に部屋がなることがある。
【立ち会い時の禁止事項】
①なんとなく、用もなく、スマホを触る。
分娩はとてつもない時間がかかる。
そのことをよくよく理解しておいてほしい。
もちろん、つるっと数時間で産まれることもある。ただ、初産婦なら尚更、丸一日、いやそれ以上なんてことの方が多いのである。
《暇だなぁぁぁ。時間かかるなぁ。
ちょっとインスタでも、、Xでも、、見ようかな》
はぁ?ふざけんな。ですよね。
立ち会う側にとってみれば、身体にも何も異変が起こらない時間かもしれないのですが、
お母さんにとっては5分おきぐらいにとてつもない腹痛に襲われ、寝ることだって、食べることだって、許されない。飲み物飲むのだってやっと。携帯を触るなんてことも当然できないし、したくない。
そんな時に気だるそうに部屋の隅で携帯をいじる夫、、、、何のためにそこにいるの?出てって?となる気持ち、、わかってくれたら嬉しいです。
②部屋から出て寝る。
廊下で寝てるやついます。
ソファで大胆に横になってるやつもいます。
なんなら、お母様の分娩台に一緒になって横になってるやつも見たことあります。訪室してこの旦那を発見した時は、唖然として、なんと声かけていいかわからなかったですとても怖かったです。
眠いのもわかります。
仕事帰りだ!とか、立ち会ってて俺だって寝れてない!とか、あるかもしれないですが、
お母さんは最後にぐっすり寝たのいつですか?
何十時間も陣痛に耐えてます。一緒に頑張ってもらえませんか?
眠い時は、お産がすぐでなければ帰って寝てくれていいと思います。立ち会いにわざわざ来て、病院で寝てるやつは助産師的にはちょっとな…となります。
あと、寝るスペースがない病院では、寝ないでもらえると助かりますという意味も込めておきます。
そう言った意味で、ソファで無理矢理寝た家族の影響で、廊下のソファが最近撤去されてしまいました。
③パソコンカタカタ、仕事する。
仕事忙しいですよね、、
でも、、分娩進行中のこの瞬間くらいは、、、
やめられませんかね。。
仕事も大切ですけど、
《命懸けで出産を頑張っている私より、産まれくる家族より、仕事が大事なの?》
と思ってしまい、後から溝が生まれるなんてことも聞いたことがあります。
目の前で今この瞬間に命をかけている、お母さんに向き合ってあげる、そういう風にしてほしいなと思います。
④裏で「立ち会うってこんなに大変なんですね。」とか言っちゃう。
はぁ?????
お前が望んで立ち会いしたんだろ???
お前より大変な思いをしているお母さんの姿は視界に入ってなかったのか??
出産は綺麗な面だけではありません。
ドラマみたいに
がんばれ!ひっひっふー!おめでとうございます!だけでは終わらない。その前後にもっともっともっともっと長く辛い過程がある。
その長い過程に立ち会う覚悟があるのか?
ということを一度だけでいいから考えてから来てくれたら嬉しいなと思います。
禁止事項はこんなところでしょうか。
じゃあ、一体何をして過ごしたらいいんだ!!ということになると思います。
そうですねぇ、何しましょうか?
お母様的には何して欲しいと思いますか?
それを事前に話し合ってみることをぜひおすすめします。
産痛緩和のためにマッサージをするのもひとつ。
よくテニスボールで圧迫するなどと言われたりしますが、そういうのが効果的な場面も多いです。
刻一刻と押して欲しいところ、さすって欲しいところ、マッサージして欲しいところ、部位は変わっていきます。
「ここでいい?強さは大丈夫?今押していい?」などと産婦さんとコミュニケーションを取りながら、実践してみて欲しいです。
いきなりお産の場になってマッサージするのは難易度高いと思うので、ぜひ出産前にお家で練習してみてください。
産婦さんが快適な環境を整える
お産が進んでいくにつれて、状況は1秒単位で変わっていきます。
喉が渇いたり、
お腹空いたり、
暑くなったり、
汗をかいたり、
寒くなったり、
体の向きを変えたくなったり、
痛すぎて苦しかったり、
部屋を暗くして欲しくなったり、
気持ち悪くなったり、
吐いたり、
トイレ行きたくなったり。これはたった一例に過ぎない。
そういう欲求があっても、定期的に痛みに襲われて誰かに表出することが難しかったり、
看護師や助産師が忙しそうで言いづらかったり、
遠慮してしまったり。
そういったことをしっかり声をかけて察知して、
サポートし、
時にスタッフに声かけるなど、そういった風にしてもらえたら助かるのではないかと思う。
前向きな言葉掛けをする
産婦さんはお産が進んでいく中、とにかくずっと不安がつきまとうと思う。
無事に産まれてくれるかな、
赤ちゃんは元気かな、
私はこれでいいのかな、あってるのかな。
そんな中で前向きな言葉掛けは助けになると思う。
大丈夫だよ、
本当に頑張ってる、ありがとう、
助産師さんが呼吸法上手って言ってくれてたね、
一緒に続けてみよう、
もうすぐ赤ちゃんに会えるね、
赤ちゃんも頑張ってくれてるね、
とか、、、、??
前向きな言葉掛けなどと自分で言っておいて、想像力が欠如してていい具体例が思いつかなくてすみません。
という具合だろうか。
私はというと、なぜなんだろうか、
立ち会い出産の希望は一切ない。
妊娠の予定なんてもっとない。