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『ストII』おじさんに贈る『スト6』入門01「投げ」編

僕は『ストリートファイターII』(1991年)で対戦格闘ゲームに夢中になりました。一応、その知識で『~ZERO』シリーズは遊べていましたが、生活環境の変化もあって『~III』以降の続編には触れることなく、『~6』で久々に練習を始めたようなおじさんです。

でも、いざ対戦してみると『ストII』時代とは常識が変わり過ぎていて、一向に勝てない。当然、知識や練習不足もあるんですが、どうも『ストII』時代の固定観念が悪循環になっている部分もあるのでは? そう考えた結果、改めて『~6』のシステムについて調べ、自分用にまとめたほうが理解が深まるのでは? と考えました。

学生さんが、先生の授業を聞いてノートにまとめ、ノートを見返して復習するかのように。僕は自分のための調べごとを行い、それを整理することで覚えて行くためのnoteです。そのため、例に出すキャラクターも春麗となっていますが、他キャラ使いの方にも少なからずお役に立てると思います。

『ストII』から変化した闘い方

『ストII』時代の春麗vs.リュウ戦

初代『ストII』の、対リュウ戦を想像してみてほしい。春麗は遠距離で、波動拳のタイミングを見切って前ジャンプし、ジャンプ攻撃~地上通常技(キャンセル)必殺技をヒットさせるのが狙い。
波動拳の撃ち方が上手い相手には、少しずつ歩きとガードを使い分けながら接近。波動拳の出掛かりを通常技で潰すなどしてガードを誘い、投げてしまうというもの。ほとんどの試合は、こうした駆け引きで勝敗が決まっていました。

『スト6』時代の春麗vs.リュウ戦

これが『スト6』になると、モダン操作を使えば初心者でも高確率で昇竜拳を出せるため、波動拳で跳ばせて昇竜拳で墜とすという「波動昇竜」は入力ミスが減ったことで撃墜される確率が上がってしまい、これが通じる相手=中級以下の相手ということになります。そもそも春麗はジャンプの滞空時間が長いため、他キャラ以上に波動昇竜の餌食になりやすいのもポイント。

そこで基本となるのは、お互いの攻撃がぎりぎり届くくらいの位置でピクピクと前進~しゃがみガードを繰り返しながら、相手の前進or攻撃に合わせて技を「置いておく」ことや、相手の技の空振りに通常技で反撃する「差し返し」からの連続技(後述)が地上戦のメインになっています。

自分から攻め込むなら、ドライブゲージを使ったDR(ドライブラッシュ)で接近し、中足払い始動の連続技や、弱足払いをガードさせて投げの二択を仕掛けるという闘い方になります。

不条理すぎて禁忌されていた『ストII』の投げ

と、ここで『ストII』世代の人間なら、弱足払いからの投げ(通称:当て投げ)をすることに躊躇してしまうでしょう。なにしろ『ストII』時代の投げは、相手が仰け反りやガード硬直中、ダウン時以外であれば0フレーム(即時)成立してしまう。当て投げを警戒してレバーを上方向に入れていたとしても、ジャンプが成立するまで4F(フレーム)かかるので、ジャンプでは投げを回避できないというヤバさ。
歩き投げはともかく、当て投げという行動が「強すぎた」のが、すべての原因です。自分がやられても嫌なので、相手にもしないのがマナーとして身体に叩き込まれてきた歴史があるんです。

「投げ」システムの大きな変化

『ストリートファイターIII』から追加されたシステムに、グラップルディフェンス(投げ抜け)があります。これは、投げた側もボタン入力から4F後に投げ判定が発生するうえ、投げられた側は7F遅れて投げコマンドを入力すれば、投げを抜けられるというもの。

これだけで投げに対する不公平感はかなり払拭されているし、『スト6』では投げ入力~成立までが5F(スクリューに代表されるコマンド投げは、投げ抜けこそできないが、発生までに5Fを要する)。投げられた側も9F目までに投げを入力すれば投げ抜けできるので、投げはもう「ずるい攻撃」ではなく、まさに「打撃と投げ」という二択が、待ちを崩す戦略の一つとして成立しています。

無敵技では、投げを拒否できない

『ストII』では、昇竜拳などの無敵対空技には投げられ判定がなく(『スパIIX』の昇竜拳にはあったそうですが)、投げを回避する手段として無敵技を使うという発想は、未だに残っていました。

…が、『スト6』では、通常の天昇脚はジャンプ攻撃や飛び道具に対してのみ10F無敵なので、コマンド成立~7F目までは投げられてしまいます。ドライブゲージを消費して出すOD(オーバードライブ)天昇脚であれば7F目まで投げに対しても完全無敵なので、投げを無効化できます。SAゲージを消費して出すSA(スーパーアーツ)1~3もすべて、投げに対して無敵属性を持ってはいます。

投げを読んで出したリバーサル無敵技がガードされるリスク

しかし、考えてみて下さい。相手の通常投げ(ダメージ1200)を回避するために、ドライブゲージを2つ使って出すOD天昇脚(モダンなら、ダメージ1120)を当てたところで、リターンのほうが低いわけです。それどころか、ガードされてしまったらODゲージの無駄遣い+確定で反撃を受けてしまう。ガードされた技がSA1~3の場合、確定反撃に加えてゲージも失ってしまうと思うと、ぞっとしませんか?

「投げ抜け」行動すらハイリスク・ローリターン

では、敵からの投げに対処するためには、前述したような投げ抜け(こちらも9Fまでに投げ入力を行う)をすればいいのかと言えば、これも非常にリスキーな行動だ。投げスカりモーションは30Fという、このゲームとしてはもっとも長い隙を見せることになります。

一応、『スト6』には「遅らせグラップ」と呼ばれる、ファジィ投げ抜けのテクニックがあります。これは『スト6』の投げ抜け猶予の長さを利用したもので、自分が完全に起き上がってから5Fほど遅れて投げ抜け入力をすると、相手の弱攻撃はガードしつつ、投げを重ね(←後述)られても投げ抜けができるんです。

しかし、遅らせグラップで対応できるのは、打撃と投げの二択のみ。相手が遅らせグラップをしてくると読んだ場合には、少し後退して投げ間合いから外れ、相手の投げスカりモーションを狙うテクニック「シミー」があります。投げを絡めた読み合いはシミーを含めた三択であり、与ダメージとしてはシミーが最大ですね。

<投げを絡めた三択> ※ダメージ量も確率も適当
投げ(ダメージ1200)
小技重ねからのコンボ(1300)
シミーからのコンボ(2500)

つまり『スト6』における、投げを絡めた駆け引きはシミーを狙うために、打撃(小技)と投げの二択。中でも、相手の投げスカりを狙うのが本命ということがわかります。

人間は「目で見て行動する」までには最短でも15Fかかると言われているため、5F程度しか猶予がない打撃と投げの二択を「見てから判断する」ことは不可能。そうなると「この人は投げが多い」とか「次は小技重ねかな」などの読み合いになりますが、投げを読んで投げ抜け入力をしてしまうと、それを読まれていた時に痛い反撃を受けてしまうんです。

さらに付け加えると、相手の投げを回避するために行う「投げ抜け」は読み勝ったところで、たかが投げ(1200ダメージ)を回避できるだけ。もし読み負ければ、特大ダメージを受けてしまうという、ハイリスク・ローリターンな選択肢であることがわかります。

相手の投げを読んだらどうするか?

相手の投げを読んだ場合の最適解はジャンプ。ジャンプは、レバーを上方向へ入れた瞬間から投げられ判定が消失するため、相手の投げ攻撃を無効化できます。相手からシミーを狙われていたとしても、バックジャンプすればほぼノーリスクだし、垂直ジャンプや前ジャンプだったとしても、空中で受ける反撃は昇竜拳(弱ならダメージ1100)くらいのもの。

もちろんジャンプ攻撃が万能というわけではなく、相手が小技を重ねていた場合には、それを受けてしまいます。レバーを上に入れた瞬間に「投げられない」判定にはなるものの、ジャンプするまでに5F(ザンギエフとリリーは6F)の予備動作モーションがあるため、この間は地上喰らいになってしまうリスクはあります。

ただし弱攻撃始動のコンボとなるため、被ダメージは投げよりやや多い、1300程度。しかしシミーされてしまうと被ダメージは2500になってしまうため、投げ抜けがいかに不毛な選択肢だということが伝わりましたか?

起き上がりにドライブリバーサルという選択肢

ちなみに攻撃重ねを読んだ場合には、起き上がりにドライブリバーサル(→+ドライブインパクトボタン)を出してもいい。技が出れば20Fの無敵があるため、ほとんどの攻撃に打ち勝てる。ただし攻撃発生までに18Fかかるので、相手が弱攻撃×nのような重ねをしてきた場合には、勝てるかどうかは微妙。

ガードされたら-6Fと不利なのでしゃがみ中攻撃などで反撃を受ける可能性もあるが、相手が初中級者であれば反撃を受けないことも多い。

<投げを絡めた駆け引きの、ローリスクな対応>
相手の狙い 自分の行動
-----------
投げ    ジャンプ(できれば後方)
打撃重ね  ガード or ドライブリバーサル
シミー   ガード or ジャンプ

バックステップという選択肢は微妙

実はこのほかにも、バックステップという選択肢もある。N←N←(自キャラが右向き時)と入力しておくことで、入力成立直後から投げられ判定が消失するため、相手の投げを無効化できる。

ジャンプと較べて利点と欠点を考えてみると、利点は23F(リリーは24F、ザンギエフとマノン、マリーザと春麗は25F)の硬直後に動けるようになる。このため、自分が画面端を背負っている場合には敵との間合いが離れずに、相手の投げスカりに対して弱攻撃からの反撃ができる。

逆に欠点は、ジャンプと較べてN←N←というコマンド入力が必要となり、慣れていないとコマンドミスをする確率が高いこと。さらに、これを相手の弱攻撃をガードしている最中に入力しておかなくてはいけないため、まだ『スト6』システムに不慣れな人は試すべきではないというのが僕の持論。コマンド入力をミスるくらいであれば、レバーを入れたままにしておけば成立するジャンプやガードに徹したほうがいいでしょう。

4Fの先行入力はあるが…

バックステップに限らず、『スト6』にはあらゆるコマンドの先行入力を受け付ける時間が4Fだけあるため、敵の攻撃をガードした直後にN←N←入力をしておけば、ガードが解けた直後のフレームでバックステップが成立します。とは言え、先行入力がない『ストII』世代のおじさんが、これを試すのは現実的ではないと考えています。
※リバーサル時のみ、先行入力は7F

結論「投げ抜けはするな」

有利フレームと不利フレーム

『ストII』の時代の投げは0Fで成立していたが、現在は5F発生となり、さらに投げ抜けのシステムも追加されていることは前述した通りだが、発生が5Fに変わったことで、駆け引きにも大きな変化をもたらしています。

例えば春麗の場合、投げ入力をしてから相手を投げられるようになるのは5F後。5~7Fの持続時間中に相手が投げ間合い内で、ガードや仰け反り中でなければ投げが成立し、7F目までに投げられなければ、30Fの「投げスカり」硬直になる。この5~7Fという3Fの「持続」がポイント。

『スト6』の攻撃のほとんどは、相手にガードされた場合には相手のほうが先に動けるようになる(不利フレーム)。春麗の技の中では、相手に技をガードさせてもこちらが先に動ける技は、立ち中パンチ(1F有利)とOD気功拳(5F有利)の2つだけ。

<不利フレームが短い春麗の技>
+5 OD気功拳
+1 立ち中P
-1 発剄(←+強)
-2 しゃがみ弱、アシストコンボ(すべて)の初段、しゃがみ強
ー3 立ち弱、追突拳(レバー入れ中)、強・百裂脚、中・覇山蹴

このうち、-2のしゃがみ弱攻撃に注目してみましょう。普通に技をガードさせただけでは、春麗の攻撃硬直が解けるよりも2F先に、ガードした敵側のガード硬直が解けます。地上で出せる攻撃の最速は4F(次いで弱・天昇脚の5F)なので、相手が春麗のしゃがみ弱をガードしたあとに弱攻撃を出すと、春麗よりも2F先に攻撃が発生。このため、春麗はしゃがみ弱を連打していると、相手の弱攻撃で割り込まれてしまいます。

ドライブラッシュで出した通常技のフレーム変化

しかし、『スト6』にはDR(ドライブラッシュ)というシステムがあります。これはドライブゲージを0.5本消費して出せる前ダッシュなんですが、最大の特徴は、DR中に出した通常技は相手の仰け反りやガード硬直が4F延長されるというもの。

つまりDR通常技がヒットすれば、普通は連続ヒットしないような通常技→通常技が連続ヒットするようになり、ガードされても通常より有利フレームが4Fあるというように、攻めたモン有利なシステムなんです。

ここで、前述した「不利フレームが短い春麗の技」表を見返して下さい。たとえばDRで立ち弱パンチを出せば+5。もとはー2だったしゃがみ弱攻撃も、DR中に出せば+2になるんです。

さて、ここで引き算をしてみましょう。
「5-2=3」
ここで言う5Fとは、投げ入力から成立するまでのフレーム数のこと。そして2Fとは、DRしゃがみ弱攻撃の有利フレームで、3FとはDR弱攻撃をガードした側の反撃猶予フレーム。投げの持続フレームも3Fなので、引き算の結果が3以下であれば、DR弱攻撃のあと先行入力で投げを入力しても投げが成立。ディレイ入力をしなくてもいいぶん、完璧なフレーム数で投げを仕込めるんです。

そして、DR弱攻撃をガードした側にも3Fの猶予はあるものの、あらゆる攻撃の発生は4F。つまり…

DRしゃがみ弱をガード~投げ入力すると、攻撃で割り込めない

これを回避するための最適解は、前述したようにジャンプ(特に後ろジャンプ)。ちなみに猶予が4F以上ある場合、相手の攻撃判定が出ていれば強引に投げることはできないため、弱攻撃で暴れるという選択肢も相手次第では有効です。

ちなみに、この考え方は相手の起き上がりにも同じ技術が応用できますが、それについては起き上がりの回に譲ることとします。

これが『スト6』の駆け引き

かつて『ストII』ではガードを崩す手段が投げしかなく、ガードを固めた、いわゆる「待ち」戦法が猛威を振るっていました。これを解決すべく、『スーパーストリートファイターIIX』ではリュウの鎖骨割りや、ケンの稲妻かかと割りといった中段攻撃が追加されたことで、しゃがみガードを崩す手段が追加。しかし、しゃがみガードの強さはまだまだ健在でした。

『スト6』にも中段攻撃はありますが、すべて発生20Fとやや攻撃判定の発生が遅いため、相手との読み合い/揺さぶりに使うにはやや心許ない。そこで使われるのが、密着状態からの二択/三択というわけ。

<密着からの二択/三択>
弱攻撃(または中段)を重ねて、そこからのコンボ
投げを狙い、相手を揺さぶる
投げ抜けを誘い、シミーからのコンボ

『ストII』おじさんは当て投げ=マナー違反だと考えがちなので、ついDR弱攻撃のあとは弱攻撃orシミーの二択を仕掛けがちだし、相手にやられるとイラっとしてしまい、穏やかではいられません。

でも、相手に投げという選択肢を見せておくことで、相手に「投げ抜けしなきゃ」という意識を持たせ、次のシミーを成功させるというのが『スト6』の「駆け引き」なのです。ずるくないんです。

つづく。

おまけ

通常投げが届く間合いにいた両者が、片方はスクリューパイルドライバーなどのコマンド投げ。もう片方は通常投げ入力をしていた場合、なんと通常投げのほうが優先されるということを知りました。

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