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「世のため」 SFショートショート

割引あり

  「世のため」

 「あんまり、倖せそうじゃないわねぇ・・・・・・」
と、久し振りに逢った、古い女友達に言われてしまった。
その途端に、涙が溢れ出る。
私の、左眼の周りの蒼い痣が、彼女にそう言わせたんだろう。
2~3日前に、夫に殴られてしまってたのよ。
だから、久し振りに逢いたいと電話で言われても、来たくはなかったのに・・・・・・
 断る理由も思いつかなかったし、サングラスで隠せば良いかと思ってた。
でも、彼女の眼は鋭かったの。
彼女から指定された、繁華街の喫茶店へ入った直ぐ、手もなく見抜かれてしまった。
「・・・・・・もう、死んでしまいたい・・・・・・」
こんな言葉も、口を破って出てしまう。  
「そんこと言っちゃダメっ! 考えてもダメよっ。・・・・・・力になってあげるから、話してみない?」
 中学校の、学生時代からの友人で、ふたり共結婚してからも友情は続いてる。
夫の暴力に耐えて、もう6年になるだろうか?
結婚したての、2年目くらいまでは良かったけれど、それからどんどん悪くなって行った。

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2,145字

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