松尾千鶴の○○になりたい。
はじめまして、マッチといいます。
しがない松尾千鶴Pです。
先日、Twitter上で父の日に
「ぼく、松尾千鶴のパパになる!」
「よーし、僕は祖父!」
「フッ…恋人になりたい人はいないんだね」
「いや、おれは恋人にもなりたいぜ!」
と、「松尾千鶴の○○になりたい」で盛り上がる一幕がありました。
いつものようにワイワイ盛り上がる皆を見ながら、私はただ、自分の中にある「なりたい」を言い出すタイミングさえなく、黙々と日々の作業に没頭していました。主に壁と天井を見つめてじっとする作業です。給与は出ません。
「松尾千鶴の…に…なりたい…」
自分の中の欲求と向き合ったとき、
「彼」が目を覚ましました。
そう、自分の中でかなり以前に息づき始め、もう永いこと自分の中で眠りに就いている存在です。
とてもとても表を歩いていていいような存在ではないので「0.1%の確率でエンカウントする隠れキャラを倒すと0.6%程度の確率でドロップするレアアイテム」のような存在の彼を、存在する、という事実だけでも表に出してやりたい、と思い、この文章を書き始めています。いや存在はしないんですけど。
彼は、私の中にいる名もなき存在です。
そして、彼は紛れもなく、
私のなりたい「松尾千鶴の○○」そのものです。
彼は、
「松尾千鶴の同級生」です。
松尾千鶴の同級生の彼は、
小学生の時、松尾千鶴が書いたかきぞめコンクールの作品を見て
人生で初めて性的興奮を覚えて、
その晩人生で初めて射精します。
彼は目の当たりにします。
美しい文字。
躍動感のある筆跡。
混じりっけのない「緊張」と「集中」が宿った描線。
完成の快哉へと向かう最後の一画。
こんな美しいものがこの世にあったなんて。
そしてちんちんがおっきくなりました。
この世には様々な性癖が存在します。
それらを羅列しても意味はないでしょう。「そんな誰かもいたことだし」から紡がれる他人事が、彼の何を量れるというのか。何を変えられるというのか。ただ彼は「松尾千鶴の描く文字に性的興奮を覚える人間」にその時クラスチェンジしただけなのです。そして元には戻れません。
彼はそれから何度も松尾千鶴の習字を見てちんちんをしゅっしゅします。教室で大っぴらにはできないので、ある夕暮れ誰よりも遅く下校して一枚の書を持ち帰り、翌朝誰より早く登校して元に戻すということもしました。
中学に進学する直前には親にバレ、「この子オナニーばっかりしてるんです」とカウンセラーに相談されもしました。その時親が席を外したあとこっそりその性癖を聞いたカウンセラーはとりあえず彼に「そんなことばっか考えてないで運動しろ」と助言しました。書に興奮するという部分に関してはノータッチでした。そんな性癖につける薬を開発できる人がいたとして、その人も「そんなもの作ってないで運動しろ」とでも言われたことでしょう。
同じ中学に進学します。
松尾千鶴はアイドルになりました。徐々に活動が活発になります。
毎年出していた書道コンクールにも出品しないようになり、彼は落ち込みます。その代替として、ほかのクラスメイトと同じように彼女のアイドル活動を応援する行為にも没頭しました。けれどそれほど興奮することはありません。あくまで彼には、松尾千鶴の描いた文字だけが性的興奮の対象なのです。
ボス尾期を経て今のプロダクションに落ち着いた彼女。かつてのトゲのある佇まいは形を潜め、徐々に打ち解けたいい笑顔が多くなります。
「最近の千鶴ちゃん、いい顔するようになったね」
教室の女子が腕組みして呟くのを、彼もまた「わかる」と頷いて聞いていました。最近の彼女の書にそれがよく出ている。逡巡、とまどい、あきらめ、そういった感情が書から見えなくなってきました。
そして迎えたトークバトルのお仕事。
「一心入魂」
どこかで書いたであろう彼女の書を見て、彼はピンと来ます。
「この『心』という字に内包されているのは…照れ?高揚?いや…これは、恋心、なのではないか」
そういえばこないだのモデルのお仕事(現地にも行ったが書のパフォーマンスがなかったので幸い補導されずに帰ってこられた)で一緒にいたアイドルの名前は佐藤「心」…。松尾さん、これは!?
それはそれとしてその「一心入魂」でも彼はおちんちんをしゅっしゅしました。
「心」もとてもよかったが、「魂」がハチャメチャにエモい、とのこと。
そうして表向きは松尾千鶴いちファン、しかしクラスでは「なんかアイツだけ見てるところが違うし的を射ている」と一目置かれる存在になる彼。
「命燃やして恋せよ乙女」のお仕事でしゅがみゆが世間を席巻すると、その同い年カップリングに沸き立つクラスメイトを尻目に、彼は松尾千鶴の同時期のお仕事に描かれた文字にどうしようもなく顕れている深い感情に俯きます。
「落ち込んでいる…」
たまらず、応援の手紙を書き始めました。彼は自分の字があまり好きではなかったので、PCで打った文書をプリントアウトして事務所にファンレターとして届けます。
「松尾さん、昔同級生だったなにがしです。最近、悩みなどありませんか?書に元気がないように思えます。どうか立ち直って、以前のように元気な書を見せてくれることを望みます」
松尾はうっかり感銘を受けてしまいます。
「お手紙ありがとう。私のことを応援してくれていたんですね。ありがとうございます」
松尾はうっかり自筆でこれを書いたためまた彼はおちん以下略。
「確かに、おっしゃる通り最近の私はプライベートの些細なことで迷いがあったみたいです。でも、それが書に出てしまうなんてまだまだ未熟ですね」
この文章では「未熟」のあたりが抜きどこ以下略。
書に自分の気持ちが出てしまう松尾千鶴、
松尾千鶴の書に性的興奮を覚える彼。
おかしなボタンがうっかり掛け違えられてしまいます。
それから快進撃を続ける松尾千鶴。
ロシアで食レポをするお仕事。
栗おにぎりを握るお仕事。
モンシロチョウになるお仕事。
連邦軍を叩き潰すお仕事。
活躍のたび、クラスメイトは沸き立ちます。そんな中、「書は!?書は!?」と彼は吠えますが、あいにく書はそんなに出て来ずがっくりします。クラスメイトは皆彼が興奮した時に「ショワッ!ショワッ!」と鳴く生き物なのだとすっかり勘違いするころ、「お店の窓に落書きをするお仕事」が来て彼は身悶えます。
…でも書ではないな…。
とりあえずおちんちんをしゅっしゅします。
薄いのが出ました。
そんな彼の一番のごほうびは松尾千鶴からの直筆ファンレターでした。ひとつひとつの文字は小さいものの、真心が込められていてとても愛らしい気持ちになるとのことでした。
一度だけ彼はお願いをしました。
「松尾さんの書いた書を、何でもいいので一枚ください」
ちょうどほたるちゃんがうっかり事務所の地下に幽閉されているキラーマシーンの電源を入れて事務所を阿鼻叫喚にぶっこんで大忙しだった松尾、応援してくれるファンのために渾身の「芸事大成」の書を同封するつもりでしたが、キラーマシーンとの戦闘で疲れていたためうっかり、こないだ「性的にもやもやした時にそれを発散するため書きなぐったえっちなお習字(*この性癖を持つ松尾千鶴は私の中だけの存在です)」を間違えて同封してしまします。
松尾千鶴から受け取った「めしべ」のお習字を見た彼は、その晩ちんちんしゅっしゅのしすぎで股間から血を噴いて病院に運ばれました。
そんな彼に、私はなりたい。
…質疑応答に移ります。
Q.彼は松尾千鶴本人のことは好きなのですか?
A.大麻常習者が麻畑を見て興奮する程度には好きです。松尾ちづっぱいや松尾ちづパンツにどの程度興奮するかも、大麻常習者が麻畑を耕すトラクターや麻畑に肥料を撒くドローンを見て興奮する程度には興奮します。
Q.メイド松尾がオムライスに描いた絵でも彼は興奮しますか?
A.それは普通に「おいしそうだな」と思います。彼の嗜好はあくまで「書として書かれたもの」に限定されるようです。
Q.彼は葛飾北斎の「凱風快晴」を見ても興奮しますか?
A.しません。
以上です。
私が彼になりたいポイントとして、
・書に気持ちが顕れる彼女の、書で何かを見通せる理解者でありたい。
・素性を知られたら絶対に変態!と罵られる存在でありながら、何かの手違いで「相手を深く理解できる」という面のみが受け入れられて実は理解者でも何でもないのにそこそこ受け入れられたい。
・担当ではシコれないが担当の何かではシコれる
というみっつが挙げられます。このみっつは永久にテストにも出ないので「セックスの時にイッてはいけない場面でどうでもいいことを考えて気を紛らわすとき専用どうでもいいこと」程度に覚えておいてもいいかもしれません。
はい。以上です。
マッチでした。