博物館デジタル化調査報告 No.17 〜マウリッツハイス美術館〜
こんにちは。ミューゼオ株式会社の奈良です。
第17回はフェルメールの『真珠の耳飾りの少女』が収蔵されているマウリッツハイス美術館。今やミュージアムの楽しみ方のひとつとして確立されつつあるデジタルを活用したさまざまな施策をまとめていきます!
国内のミュージアムではあまり見かけない施策も含め調査し、「デジタル化やDXは手段や方法が色々ありすぎて何から手をつけたらいいのやら…」と悩んでいる方の参考になればと思っております。
調査はミュージアムの公式HPを中心にミュージアムとしての取り組みやSNSの活用方法を調査し、個人的に好きなミュージアムストアの情報なども取り上げています。(TOP画像はマウリッツハイス美術館公式Facebookを参照)
マウリッツハイス美術館の概要
所在:オランダ南ホラント州のデン・ハーグ
正式名称:
オランダ語: Koninklijk Kabinet van Schilderijen Mauritshuis
英語: The Royal Picture Gallery Mauritshuis (Maurice House)
マウリッツハウスと呼称されることが多い。日本ではマウリッツハウス美術館と呼ばれ、またマウリッツハイスの表記も用いられる。
マウリッツハイス美術館はホフ池(ホーフ湖)のほとりにたたずむ小さな宮殿で、歴史的建造物が集まる一帯「ビネンホフ」に隣接してる。
Webサイトの内容
Webサイトは横にスライドしていく仕様。上にマウスやパッドをスクロールすると右から左に、下にスクロールすると左から右へ画面が動く。また、言語選択に日本語があるため情報を確認しやすい。
〈開館時間〉※ほぼ年中無休 ※月曜日は午後1時から開館
月曜日 13:00~18:00
火曜日~日曜日 10:00~18:00
〈チケット〉※予約が必要
公式Webページによると、混雑を避けたい場合は、15:00以降、または月曜日に訪問することが勧められている。また、美術館に電話すると混雑状況を教えてくれるようだ。
【1】360°パノラマツアー
オンライン上で作品を閲覧することができる。高画質で作品を閲覧できるほか、カメラのマークがついている作品では作品詳細を音声ガイダンスなどで学ぶことができる。また、自分の好きなように館内を回る「Free exploration」とマウリッツハウスの歴史などを同時に学ぶことができるツアー形式の「Introductory tour」を選択できるため、家にいながら実際に美術館を訪れているような体験ができる。
さらに注目すべきは、赤外線写真である。いくつかの作品では赤外線を使って撮影した作品を公開しており、完成前の下書きの様子などを確認することができる。(下記画像左は展示されている状態、右は赤外線画像)
【2】作品の保全・その裏側について
作品として今も残り続けられる技術的工夫などを紹介している。作品を保全するためにどのような工夫が施されているのかなど、作品の裏側が研究されている。また作品ごとにワニスを除いた場合の透明度のあがった作品なども動画で紹介している。
【3】作品の中の動物を探す
作品「アダムとイブの堕落を伴う地上の楽園」における動物について解説している。クイズのように進めているため楽しく深く作品について知ることができる。
【4】200周年記念イベント
マウリッツハイス美術館は2022年で開館200周年になる。今年は例年に比べ多くのイベントが数多く企画されそうだ。
SNSでの活動
マウリッツハウス美術館では4つのSNSを利用して情報を発信。YouTubeも積極的に活用している。様々な媒体を使って作品紹介を発信しているため、自分の好きな媒体で情報をチェックできる。
作品についてメインで発信されている。
イベントについてがメインで発信されている。
作品についてが投稿されている。内容はFacebookと同じもの。
作品の名前などが記載されているが、あまり詳細には載っていない。
YouTube
〈チャンネル登録者数〉2120人
〈本数〉約260本
〈配信開始〉2011/02/03(11年前)
〈最高視聴〉321,622 回視聴
内容:ヨハン・マウリッツを求めて
Store情報
こちらからはマウリッツハウス美術館でしか買えないようなアイテムを紹介。オンラインでも購入可能だ。
●タイル版の絵画
●リサイクル素材を使った口がたくさんある花瓶
リサイクルポリプロピレン製を使用した花瓶。注ぎ口が10個あるため、たくさんのお花を生けることができる。また、リサイクル素材であるため畳んで収納することも可能だ。
●有名作品の布団カバー
やはりマウリッツハウス美術館といえば「真珠の耳飾りの少女」。真珠のイヤリングや傘やマスクなど、この作品にまつわるグッズが多く展開されている中、あまりミュージアムショップでは見かけない布団カバーをご紹介。
まとめ
▶︎デジタル展示が進んでいた!
▶︎作品の裏側を知ることができる取り組みが特徴的
▶︎バーチャル展示の画質も綺麗
マウリッツハウス美術館ではクオリティの高いバーチャル展示が無料で体験でき、博物館のデジタル化が進んでいるように感じました。フェルメールは現存している作品が少ないため特に貸出されない作品が多い中で、デジタル上で細かな部分までもじっくり確認できるとてもいい取り組みです。
また有名作品の制作過程などの裏側を知ることができる取り組みもあるため、作品への理解も深まりました。
次回はサンフランシスコ近代美術館について調査していきます。近代美術が専門の美術館ではどのような取り組みがあるのか。お楽しみに!