博物館デジタル化調査報告 No.23 〜プラド美術館〜
こんにちは。ミューゼオ株式会社の奈良です。
第23回はスペインの首都マドリードにある、ルネサンス、バロック絵画を中核とした膨大なヨーロッパ絵画を所有しているプラド美術館。今やミュージアムの楽しみ方のひとつとして確立されつつあるデジタルを活用したさまざまな施策をまとめていきます!
国内のミュージアムではあまり見かけない施策も含め調査し、「デジタル化やDXは手段や方法が色々ありすぎて何から手をつけたらいいのやら…」と悩んでいる方の参考になればと思っております。
調査はミュージアムの公式HPを中心にミュージアムとしての取り組みやSNSの活用方法を調査し、個人的に好きなミュージアムストアの情報なども取り上げています。(TOP画像はプラド美術館公式Facebookを参照)
プラド美術館の概要
国立の美術館
所在:スペインの首都マドリード
正式名称:Museo del Prado
略語:PRADO/プラド
西洋美術史において最も重要な作品として認められているディエゴ・ベラスケス作『ラス・メニーナス』(1656年)もプラド美術館が所蔵している。作品の中には11人もの人物が描かれているため人物同士の関係性だけでも様々な説が論じられている(画家であるベラスケスの頭が一番高い位置に描かれている意味は…など)が、何より、それぞれの人物の構図や目線、斜光の工夫によって生まれている鑑賞者の視線を誘導する技法が西洋美術史において「重要」たらしめる所以である。
『ラス・メニーナス』は高さが3メートルを超える大きさであるなどの理由から、プラド美術館から外に貸し出されることはない。
Webサイトの内容
〈開館時間〉※基本的な休館日なし
月〜土曜日 10:00~20:00
日曜・祝日 10:00〜19:00
〈チケット〉※曜日・時間帯によって無料 ※オンライン購入可能
月〜土曜日 18:00〜20:00
日曜・祝日 10:00〜19:00
【1】アプリでデジタル化
ツアーガイド、傑作について、作品検索、作品詳細の確認など4つのアプリに分かれている。
【2】動画で解説
https://www.museodelprado.es/actualidad/videos
作品について解説している動画をWebページ上で確認することができる。動画は1本50分のものから5時間あるものまである。検索もできるため興味のあるテーマの講義を試聴することが可能だ。
【3】YouTubeで無料配信されるイベント
定期的に開催するイベントをYouTubeにて無料生配信している。定員があるようだが自宅からでも鑑賞できる。
【4】神話上の人物を理解する
神話を題材にした作品を多く展示しているプラド美術館では、描かれている人物が神話上どのような位置にいるのか、他のどのような作品に登場しているのかなどを家系図を使い人物ごとに解説している。
下記画像内の家系図の中から人物にマウスを寄せると…
下記のような人物紹介が現れる。そこから「それが現れる作品」をクリックすると…
プラド美術館コレクション内から、選択した人物が登場している作品を確認することができる。
【5】コレクションのデジタル化
Webページ上で作品検索が可能だ。作品を拡大して見ることができるほか、関連動画や参考文献、展示された展示会などを確認することができる。
SNSでの活動
プラド美術館では4つのSNSとSpotifyを利用して情報を発信。YouTubeも積極的に活用している。様々な媒体を使って作品紹介を発信しているため、自分の好きな媒体で情報をチェックできる。
作品について動画付きで発信されている。
イベントついて投稿されている。
動画メインで投稿されている。内容は主に作品についてでFacebookとほぼ同じ内容である。
●TikTok
TikTokでは最大10分の動画が投稿できるようだが、人気が高い動画の多くは10〜30秒のショート動画である。日本においてもマーケティング活動として活用している企業が増えてきているツールだ。
プラド美術館では30秒ほどの動画を投稿している。動画としてはFacebookと同じ内容だが、TikTok用(短い動画でも伝わるよう)に画面内に文字を配置するなどの工夫をしている。
●Spotify
作品毎のイメージミュージックプレイリストを視聴することができる。
YouTube
〈チャンネル登録者数〉14.2万人
〈本数〉1000本以上
〈配信開始〉2,258 回視聴2010/02/10(12年前)
〈最高視聴〉1,473,051 回視聴
内容:コメント作品:ボッシュによる快楽の園
Store情報
こちらからはプラド美術館でしか買えないようなアイテムを紹介。オンラインでも購入可能だ。
●牛革カバーの細長いノート
なかなかみたことの無い形をしたおしゃれなノート。カバーは牛革でプラド美術館のロゴが刻印されている。フィレンチェで手作業で制作されている。
●ローマ時代のサンダル
夏用のスリッポンとして人気の高いエスパドリーユ。本場がスペインであり、その伝統に沿ったデザインになっている。1691年以来、靴を専門とする家族の4代目の作品とのこと。
●日本の企業とコラボした砂時計
まとめ
▶︎デジタル化に自社アプリを活用している
▶︎SNSにおいても動画を活用している
▶︎作品を理解し楽しめるような解説が多い
プラド美術館では今までの調査で初めてTikTokを活用していました。他ミュージアムでは写真の投稿がメインであるInstagramにおいても動画の投稿が多く、気軽に作品詳細を理解できるように思いました。一方で動画での投稿は翻訳が難しいため、内容までは追えませんでした。
次回はオランダにあるアムステルダム国立美術館について調査していきます。17世紀オランダ絵画が充実している美術館ではどんな施策を行っているのでしょうか。お楽しみに!