博物館デジタル化調査報告 No.7 〜エルミタージュ美術館〜
こんにちは。ミューゼオの奈良です。
第7回はアンリ・マティスやピカソの作品の多くを所蔵し、フランス語で「隠れ家」の名が付いているエルミタージュ美術館。今やミュージアムの楽しみ方のひとつとして確立されつつあるデジタルを活用したさまざまな施策をまとめていきます!
国内のミュージアムではあまり見かけない施策も含め調査し、「デジタル化やDXは手段や方法が色々ありすぎて何から手をつけたらいいのやら…」と悩んでいる方の参考になればと思っております。
調査はミュージアムの公式HPを中心にミュージアムとしての取り組みやSNSの活用方法を調査し、個人的に好きなミュージアムストアの情報なども取り上げています。(TOP画像はエルミタージュ美術館公式Facebookを参照)
エルミタージュ美術館の概要
ロシアの国立美術館
所在:ロシアのサンクトペテルブルク
ロシア語の正式表記:осударственный Эрмитаж
建物自体が世界遺産でもあり、約300万点の作品を収蔵している。
Webサイトの内容
〈開館時間〉※月曜は休業
火・木・日曜日 午前11:00-午後18:00(入場16:00まで)
水・金・土曜日 午前11:00-午後20:00(入場18:00まで)
〈チケット〉
予約が必要。入場口を選択する必要があり、入場時間は30分刻みになっている。
【1】エルミタージュ劇場
この劇場を使用して講義などのイベントが行われている。
【2】教育プログラム
エルミタージュ美術館では年齢層別に教育プログラムを企画している。
●学生向け:The Youth Educational Center
実験的な教育および文化プログラム提供している。芸術と文化を学ぶマスタークラス、芸術の歴史と理論に関する一連の講義など、様々なプログラムが企画されている。また、エルミタージュ学生クラブメンバーに加入することで独自に設計したコースに従って展示会を学ぶことや、エルミタージュホールでのテーマ別のお祭りに参加ができる。
●児童向け:Education Programmes for Children
テーマ別のツアー、講義、クエスト、保護者と子供向けの専門プログラムなどを提供している。子供向けの教育プログラム(観光ツアーとクエストを除く)は、10月から5月まで実施。
【3】独自のルート作成
選択した芸術作品、ホール、常設展示に基づいて、エルミタージュ美術館を巡る独自のルートを構築できる。また、「マイコレクション」ページのお気に入りの展示からルートを作成することや、同行者にルートを共有、ルートをPDFファイルとして保存もできる。
SNSでの活動
エルミタージュ美術館では、これまでの調査の中で最も多い7つのSNSを利用し情報を発信、内3つはロシアにおける特徴的なSNSである。SNSごとに投稿内容が少し異なっているため個々に紹介する。YouTubeも積極的に活用している。
●Facebook
作品の紹介やイベントについて配信している。
定期的に「Солнце в Музее.」「The Sun in the Museum.」日本語訳すると「博物館の太陽」をテーマに、美術館内にある作品を投稿している。
●Twitter
作品の紹介がメイン。2022年1月時点の最新の投稿が2年前であるため最近はあまり投稿していないようだ。ちなみにトップの投稿は海外のアーティスト間で流行した「#dolly parton challenge」。SNSのプロフィール画像を集めて投稿することで、同じ存在でも仕事やプライベートなど多様な側面があることを伝えているパロディ要素のある企画だ。
●Instagram
メインの投稿内容は作品やイベントの紹介。美術館内の様子がわかるような1分程度の短い動画が多く投稿されていた。
●V Kontakte
V Kontakte(フ コンタクテ、略称は VK)はロシア最大のSNSであり、動画の投稿用のSNSとして使われることが多いようだ。
投稿内容はInstagramに近いが、VKではやはり動画の投稿が多い。動画内容はYouTubeとは異なっている。
●Odnoklassniki
Odnoklassniki(アドナクラースニキ、略称はOK)は上記で紹介したVKと並ぶロシアのSNS。 VKと同じく動画投稿が多いSNSであり、音楽プレイヤーとして使用することもできるようだ。
投稿内容はFacebookに近く、作品紹介などが投稿されている。
●Telegram
Telegram(テレグラム) は日本におけるLINEのようなSNSである。仕様もLINEのトーク画面と同じように最新投稿が最下部に出てくる形だ。
投稿内容は主に作品紹介であり、ほかSNSの投稿よりも詳細に記載されている。
YouTube
〈チャンネル登録者数〉7.65万人
〈本数〉1000以上
〈配信開始〉2011/07/27(10年前)から配信
〈最高視聴〉1,462,819 回視聴2017/08/18
内容:「孔雀の時計について」
Shop情報
こちらからはエルミタージュ美術館でしか買えないようなアイテムを紹介。オンラインでも購入可能だ。
●ロシアの民芸品であるマトリョーシカ
マトリョーシカ発祥の地は、手工芸産業の重要なセルギエフポサドの中心地。19世紀後半、ロシアで有名な鉄道会社を経営し芸術文化が身近にあったマモントフの工房で作られた。今でも変わらないスタイルとデザインの人形だが、最近では古いロシアのボヤールや戦士、伝説的で歴史的な人物の顔をした人形もある。
●ファベルジュスタイルのイースターエッグ
金細工師ファベルジェが製作したイースターエッグは、”芸術品”として有名である。こちらでは宝石で装飾されたイースターエッグをモチーフにした時計ケースや宝石箱、額縁としても使える様々なグッズを展開している。
●ノーチラスボウル
小説『海底二万里』に登場するノーチラス号として聞いたことがある「ノーチラス」とは、ギリシア語で船員・船舶を、ラテン語でオウムガイを意味する。今回は後者の意味に当てはまるノーチラスボウルをご紹介。
まとめ
▶︎年齢層別の教育プログラムを実施
▶︎あまりデジタルを活用したイベントは見られなかったが、SNSの活用数はこれまでで一番多い7つ
▶︎SNSではテーマに沿った投稿が多く、作品紹介は動画で行っていた
エルミタージュ美術館では、子どもだけではなく大人向け教育プログラムも開催しており、芸術への理解を深めるイベントが充実していました。また、ロシアという土地に合わせた取り組みが美術館の存在をアピールしているように思いました。
次回はバチカン美術館について調査していきます。30にも及ぶ施設を総括する美術館はどのような取り組みをしているのか。中でお楽しみに!