博物館デジタル化調査報告 No.20 〜美術史美術館〜
こんにちは。ミューゼオ株式会社の奈良です。
第20回はオーストリアの首都ウィーンにあり、ヨーロッパ屈指の展示物の質と量を誇る美術史美術館。今やミュージアムの楽しみ方のひとつとして確立されつつあるデジタルを活用したさまざまな施策をまとめていきます!
国内のミュージアムではあまり見かけない施策も含め調査し、「デジタル化やDXは手段や方法が色々ありすぎて何から手をつけたらいいのやら…」と悩んでいる方の参考になればと思っております。
調査はミュージアムの公式HPを中心にミュージアムとしての取り組みやSNSの活用方法を調査し、個人的に好きなミュージアムストアの情報なども取り上げています。(TOP画像は美術史美術館公式Facebookを参照)
美術史美術館の概要
所在:オーストリアの首都ウィーン
正式名称: Kunsthistorisches Museum
略語:KHM
美術史美術館ではピーター・ブリューゲルが描いた『バベルの塔』(1563)やヨハネス・フェルメールの『絵画芸術』、静物画のように描かれた肖像画であるジュゼッペ・アルチンボルド『夏』など、著名芸術家における代表作を展示しているほか、美術館内の壁画はグスタフ・クリムトが描いている。
設立は1891年10月17日であり2021年で130周年を迎えた。美術史美術館の向かい側には、美術館と対になる形で自然史博物館がある。博物館については次回調査していく。
Webサイトの内容
〈開館時間〉※月曜日は休館 ※木曜日は21時まで開館
10月15日~1月19日の期間中は毎日開館している。
火・水・金・土・日曜日 10:00~18:00
木曜日 10:00~21:00
〈チケット〉当日券も販売している。
日本語での公式Webサイトもあるため基本情報を確認してから訪問することが可能だ。また日本語の他8ヶ国語に変換した音声ガイドもある。
【1】オンラインツアー・オンライン講義
専門知識などを学べる講義や様々な角度から展示品を見ていくことができるオンラインツアーなどを開催している。それぞれの講義は有料である。
【2】毎週木曜日の講義
毎週木曜日には、ガイド付きツアーや講義、ディスカッションなどを開催。美術館の仕事である修復、建築、アーカイブ、研究についての内容についても、美術館と現代を結びつけるための活動として積極的に行われている。
基本的に講義はオフラインで行われているが、見逃し用としてYouTube上に講義の一部がアップされている。一つの展示品に深掘りしていくオンラインツアーや音楽団の生演奏を視聴することができる講義など好きな角度から芸術に触れていくことが可能だ。
【3】一人で参加できるツアー
美術館でのツアーは多くの場合10人ほどのグループを組み案内されるが、美術史美術館では1人で参加できるオンラインツアーを予約することができる。美術館スタッフから様々なアドバイスを受けながら、チャットを通して質問することもできるものや、アラームをトリガーすることなく、細部までズームインして作品を閲覧できるものも。
【4】130周年記念ビデオシリーズ
2021年で130周年を迎えた美術史美術館では、スタッフと博物館をつなぐ非常に個人的な話とハイライトをビデオに残している。何度も何度も魅了するオブジェクトについて、美術館の秘密のお気に入りの場所...舞台裏を紹介し、美術史美術館を日々作り上げている人々を紹介している。
【5】3Dコンテンツ
美術史美術館にはティツィアーノとして知られるイタリア人アーティスト、ティツィアーノヴェチェッリオの作品が展示されている。有料の3Dツアーでは、最高の解像度でアートを楽しむことができるため、自宅の部屋から特別な雰囲気を楽しんだり、ティツィアーノの芸術を間近で体験することができる。またズーム機能(+および-)を使用することで、絵画を間近で表示することも可能だ。
SNSでの活動
美術史美術館では2つのSNSとSpotifyを利用して情報を発信。YouTubeも積極的に活用している。様々な媒体を使って作品紹介を発信しているため、自分の好きな媒体で情報をチェックできる。
イベントと作品についてが発信されている。
主に作品について投稿されている。
●Spotify
展示会ごとのポッドキャストが投稿されている。
YouTube
〈チャンネル登録者数〉不明
〈本数〉1000本以上
〈配信開始〉1,642 回視聴2009/05/19(12年前)
〈最高視聴〉690,894 回視聴
内容:皇后エリザベスの服-皇后エリザベスのファッション(シシィ)
Store情報
こちらからは美術史美術館でしか買えないようなアイテムを紹介。オンラインでも購入可能だ。
●美術史美術館で作られたハチミツ
以前の調査でもあった美術館で作られた蜂蜜。KHMでも屋上で育てられたハチの作る蜂蜜を販売している。
●スパイス
様々な料理で活躍する本格的なアジアンスパイスを販売。調味料を販売しているミュージアムショップはなかなか珍しいのでは?
●リップクリーム
側面に作品がプリントされたリップクリーム。防腐剤やミネラルオイルを含まず、日焼け止め効果もある。
まとめ
▶︎オンラインで体験することができるイベントが多く開催されている
▶︎オンラインイベントでは特に参加型のものが多かった
▶︎有料での開催が多い
美術史美術館では3D展示や個人で参加できるオンラインツアーなど、美術館への理解が深まる参加型のコンテンツが多いため、自分の興味の幅が広がるだけではなく美術館への愛も育まれるように感じました。
次回は美術史美術館と対になっている自然史博物館について調査していきます。美術史美術館とに違いはあるのでしょうか。お楽しみに!