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公開説教 宇宙人の夫に聴かせたい。

ナインティナインの岡村がラジオ番組で女性蔑視発言をしたことで、1週間後の4月30日に放送された相方・矢部の公開説教。ナイナイのファンというわけでもないし、話題になっていたのでちょっと聴いてみるか、程度の軽い気持ちで、radikoであとから聴いた。

最初の30分ほどは岡村の謝罪の言葉の繰り返し。番組この後、どうするつもりなんやろう、と思ったところに矢部が登場した。
「やってもうたな、お前。2時間もたんやろ。ナインティナインも緊急事態よ。情けないやろ。」これが予定通りだったかどうかはわからないが、そのあと約1時間半、真夜中に、私は期せずして最後まで聴くことになる。

いろんな感じ方があるだろうが、私はこの放送を世の中の「人の忠告を聞かない大人たち」と「これから大人になろうとしている若者たち」みんなに聞いてもらいたいと思った。そして何よりうちの夫に聴かせたい。まあ、素直に聴く男ではないが。

高校サッカー部の先輩後輩で出会い、もうすぐ50になろうかという二人。後輩の矢部が先輩の岡村を誘い、1990年、ナインティナイン結成。あら、私たちが結婚した年だ。

部活のつもりで入った世界だけど、入ったら入ったで負けたくない。
「岡村のビジュアル、個性は突き抜けてる。成功したのはそれやから。俺はどうしていいかわからんかった。お笑いは好きやったけど、自分が面白いと思ったこともないし。」

19,20のころ、悩む矢部に、岡村はタクシーの中で「お前、性格変えろ!」と説教したという。強烈に覚えていると言う矢部が「今49のあんたに性格変えろと言ってる。30年経って。」

ナイナイの来歴や公開説教の詳細はほかで見ていただくとして、夫に聴かせたい矢部の発言を書き留めておくことにした。
※「岡村、矢部」と呼び捨てにしているのは、私が話に入り込み過ぎたからなので。

タイの幸せを招く人

●無意識なんやと思う。え!?と思うようなこと口にするからね。
「(問題発言をした時に)自分がその場にいたら、何かしら言って収めてたかもしれないけど、それで問題が終わってたわけではない。」

自分の口では言いにくいことをマネージャーに言わせたりという逃げ癖もある。そういう無意識の発言は岡村の根本(ねもと)であって、自分のホームでありセリフをガチガチに決めないで喋るラジオだから出てしまった。そういう人間やと思われても仕方ない。致命傷や、と。

私もラジオの深夜放送を聞きながら受験勉強をしていた世代だから、テレビにはない、きわどい内容はラジオならではで、好きだ。しかし、聞いてよかったと思える下ネタと気分が悪くなる下ネタは、ある。

夫も、え?!と思うようなことを時々口にする(下ネタではなく)。
「へ~、そんなふうに考えるんや~。」とびっくりしたり、むなしくなったり。残念ながら、なるほどと感心することは少ない。だから矢部の言っていることがよくわかる。

そんな食い違いが積み重なり、矢部は岡村と次第に距離をとるようになる。しかし、岡村は何の悪気もなく、今回説教されてもまだ気づいていないことがいっぱいあるという反応。まさしく「天然やねん。」

●俺も大した人間やないし、40までふらふらしてたけど、なんか気づいたの。
「彼女ができたり、結婚していいと思うのは、言われるから。間違ったところを。子どもにも言われるからね。一人やったら、本当に言われなくなるからね。」

人間は年をとればとるほど周りから注意されなくなる。一時代を築いた岡村には、ほとんどが年下となったスタッフは強く言えない。社会的に変なことをしていても、50になろうかというおじさんに敢えて忠告する者はいない。高校のころから続く岡村と矢部の関係だからこそ、今回、言えたのだ。

耳の痛いことをはっきり、しかも今日までの縁を大事に振り返りながら。
「年いくほど。さすがにもう自分で考えられないと、どんどんずれていくと思う。気づいていかな、いかんのよね、一つひとつ。」

●みんなに助けられてやって来られた。けど、景色変えた方がいいわ。
「ラジオを長く続けてるのはすごいことなんよ。でも、リスナー、スタッフ含め、全員がなーなーにした。芸歴が長くて偉くなったから。」

2010年にパッカンしたとき(精神的に疲れて休業したこと)、岡村は頑張ったけど、周りが気を遣って、さらにぬるま湯になり、なかなかの「かわいそうさん」になっていった。誰かが言ったら炎上することでも岡村が言ったら炎上しない。なぜなら「かわいそうさん」やから。「体調を崩して変われたかと思ったけど、甘えてたんやろな。」と岡村。

だれもが守られていると安心だし、環境を大きく変えることは不安で気が進まない。超保守派の私の夫は景色が変わることを嫌がるけど、私はその正反対。でも、誰にでも景色を変えなければならないときがある。

●仕事以外で自分に責任を課した方がいい。
「結婚してるからいいということではなくて。」と断りを入れながら、矢部は仕事以外の経験で自分の考え方が変わったという。多くの者は、責任をとるという状況はできるだけ避けたい。仕事、結婚、子育て・・・。でもそこから逃げていては、高校生のままだ。大人になるということは、いざという時は責任をとる覚悟で発言し、行動するということなんだろう。
夫は、責任をとることを意識しすぎて思い切ったことをしない。贅沢な悩みかもしれないが、面白くない。加減が難しい。

●笑われたくないって言うやん。笑われてええやん。
岡村は女性に関してかなりのコンプレックスを持っている。そのきっかけになった出来事も矢部は知っているという。お笑い芸人として笑われることと、一人の人間として笑われることが、心の中でごちゃ混ぜになって、どうしたらいいかわからなくなっているように、私は感じた。自分に自信がないと、人から笑われていないか気になって、とてもつらい。

夫は世間体を気にして、私や娘が目立つことをすると機嫌が悪くなる。でも、30年観察していて分かったのだが、その裏には「ちょっとうらやましい。」という気持ちが見え隠れする。「そんなことはない!」と夫は言うだろうけど。

5月7日は「公開説教」第二夜だった。コンビを組んで30年、何の悪気もなく信じられないことを言う岡村(夫)にイライラしている矢部(私)。二人の間に距離を置くようになった矢部(私)とそれでも矢部の本当の気持ちに気づいていない岡村(夫)。まるで私たち夫婦だ。ぼんやりラジオを聴きながら思った。

人は「見たいものしか見ない」という。それは未知のものに対する不安や恐れがあるから。岡村は夫であり、私自身かもしれない。でも、失敗してもいいから、まだ知らない世界を見て、新しい何かに気づきたいと私は思う。

人間はそう簡単に変われるものではないけれど、景色を変えると、自分のまずさにハッとするようになる。2017年の夏、結婚生活最大の大げんかをした時の夫のように。



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