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-Colorful本屋- エピローグ

 不思議な本屋は、数日後にその場所に行ったが無くなっていた。
そこだけぽっかりと切り取られたように。
ただの空き地があるだけ。

(古い建物だったし、こんなに早く解体できるわけがないんだが)
不可思議な体験だった。
確実に私のためだけに存在していたような。
なんだったんだろう。

 それからの日々はまるで真っ直ぐな道が現れるように
私は忙しさに翻弄し続けた。
……しなければ、居場所がない。
私一人で、一体何ができるのか?
そんな疑問は生まれてこなかった。
ただ、私が創らなければならないという、使命感。

 クラウドファンディングであらゆる人を支援する会社。
特に社会で生きづらい人たちのために。
どんな相手でも色眼鏡で見たりしない。

 私の会社の従業員は、ほかの場所で働くことが難しい人ばかり。
たとえば、私の部下は戸籍上、男性の性別でありながら、
女性と見間違えられることが多い。
化粧もきっちりしてるし、服装も女性っぽい。
もちろん有能であることは、間違いない。
ただ、前職場ではそんな服装が認めてもらえなかったし、
カミングアウトもできなかったそうだ。
 
 営業部長は、婚前の戸籍上では女性だったらしい。
カレの部署は特に優秀な営業力が高い人が多い。
女性率は高いが見かけは、どちらか分からない。

 男性同士、女性同士のカップルもふつうにいるし、
社員の誰ひとりとして、変な目で見るやつはいない。
当たり前がココでは違うのだ。

 ひとり親の割合も多い。働き方は自由なので
出社の時間も退社の時間も決まっていない。
生き方も様々でいい。本当に働きたいのに
就職が難しい年代も積極的に雇っている。
定年制度もない。

 給料形態は、完全成果主義にしている。
資格手当も充実しているので
社員はいつも自己研鑽に励んでいる。
自分がしたい仕事を自分で探してくる。
 
 同じようなカラーの人が自然と集まってくる。
以前の私では、こんな会社形態にできず、
きっと今頃は、人材不足で倒産していただろう。
あの時、本屋の建物を見つけていなかったら。
不思議な体験で考え方を変えたおかげだ。

 私があの本屋に行くことになったのは、
たぶんアイツのことがあったからだ。
突然、大学生から一人暮らししたいと言い出して。
高校まではふつうの生活をしていた、と思う。

 家庭の事情が複雑とはいえ、まさか息子が同性としか
恋愛できない体質になっているなんて。
びっくりしたが、本に出てきたセンパイは、
私の子どもだった。

 私の名前は、藍原 虹霓(こうげい)。
レインボーという意味がある名前だ。
この名前が私の役割を示していた。

 Colorfulな会社を今は経営している。
これからも多彩な人材と一緒に事業に取り組んでいく。

※最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

この物語はフィクションです。

文中の人物名は、すべて色の名前になっています。
(漢字は当て字もあります)
萌樹色(鮮やかな黄緑)海松色(茶・黒をおびた黄緑)
美果色(オレンジ色)常和色(少しくすんだ黄色)
志棔色(深みのある濃い紫色)
浅緋色(浅く染めた緋色)伎按色(やや緑みの明るい青)

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