『きみと私のGarbage Day』
『きみと私のGarbage Day』
原作 灰谷魚『ごみの日』
作 ならさき@むつろ
絵 cometiki
© TEAM sentimentalist
役所というか政治というのは本当に何を考えているかわからなくて、だからわからないまま放っておいた私の自宅のマンションに貼られていた、
ゴミ出しのルール変更と
それにともなうゴミ集積所の面積縮小について
という張り紙を見てもこないだ拡張したばっかだろなんて思うこともなく放っておいたのだけど、そしたら次の日本当にゴミ集積所が東京ドーム4つ分から猫のひたいにまで縮小され、前の日まで大量に貼られていた『~のゴミ』という分別のプレートがたった二つにまで減っていた。
『必要なゴミ』と『必要じゃないゴミ』の二つに。
どう考えてもおかしい。
そもそも『ゴミ』に『必要』とか『不必要』とかって区別をつける人間がどこに居るんだとか今私が手に持っているこの昨日までは『哀愁ただようゴミ』と分別されていたゴミの入った袋はいったいどっちに置いておけばよいのかとかそんなことを考えているうちにきみが――そう、私の部屋のソファで丸くなっていたはずの『拾っても良いゴミ』だったきみが私の隣に立って私と同じようにバカみたいな顔で二枚のプレートを覗きこむ。
「なに、これ?」
「なに、って――」
なんて答えて良いのかわからない私が曖昧な笑みを浮かべると、きみはふうん、と何を納得したのか分からない声を出してプレートの『必要』と『不必要』を交互に見比べている。
「『必要なゴミ』って何?ゴミなんだから不必要じゃないか普通」
「まあ普通は不必要だよね」
至極まっとうなきみの意見に至極まっとうに頷いた私に、でもきみは私の応えなんてお構いなしにスタスタとその猫のひたいくらいに狭くなったゴミ集積所に近づいて振り向いてその場にしゃがみこんで私を見上げた。
「――で、今日はどっちに入ればいいのかな」
「え?」
唐突なきみの問いに私は思わず手に持った『哀愁ただようゴミ』の袋ときみを交互に見る。
この『哀愁ただようゴミ』だってどっちに捨てればよいのか分からない私にきみがどっちなのかなんてわかりようがないというかそれ以前にもう一週間も一緒に居たらきみをゴミだなんて思えるはずもなくて、さんざん迷った挙句にしゃがみこんでるきみの右手をゴミ袋を持ってない左手で掴んでよっこいせ、と引き上げる。
「――とりあえずリユースするので、持ち帰ります」
そう言った私にきみは下から見上げるようにしながら、ふうん、と口の端だけで薄く笑った。
――そして、後日談。
明らかにおかしいと思ったこの分別は、『必要なゴミ』に捨てようとした人たちが結局家に持ち帰ってリユースする事例が増えたという予想外の効果をもたらして、結局この街からゴミが半減したらしい。
そして私の部屋には、未だ『拾っても良いゴミ』のきみが住んでいる。
『哀愁ただようゴミ』といっしょに。
(了)
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Comic version
of
Cometiki
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AVFT 1st Tribute
~ 5人のnoterによる、灰谷魚の解体と射出 ~
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