『月の光に照らされて』【ハピバレ2015】
――バレンタインに紹介したい曲に、自作の短編を添えて。
深夜、嫌な夢に目が覚めて、僕は隣に眠る君を見る。
カーテンの隙間から差し込む月の光に照らしだされた君の幸せそうな寝顔と、かすかに空気を揺らしている、穏やかな君の寝息が、思い出したくもない夢の余韻を穏やかに消し去っていく。
(――良かった、夢で)
ふとそんな想いが脳裏をよぎって、僕は自嘲気味に笑ってみる。
夢は、しょせん夢だ。
僕がどんなことになろうとも、君はきっと僕の傍に居てくれる。
優しく微笑みながら、僕の傍に。
(――ありがとう)
僕は、どこか楽しげに眠っている君に、声に出さずに感謝する。
(――きっと誰も、僕を見ていないと思ってた)
僕の目に映る誰も彼もが自分のことばかり考えているように見えていた。
そんな人々の中で、自己主張の出来ない僕は、ただの石ころと同じようなものだと思っていた。
(ありがとう、こんな僕を選んでくれて)
なんのとりえもない、雑踏に紛れたら存在すら消えてしまいそうな、ちっぽけな僕。
60億分の1っていう、小麦粉の粉よりも区別がつかないようなそんな僕を、君はずっと見ててくれて、そして選んでくれた。
(――そういえば、明日はバレンタインだっけ)
君が僕に告白してくれた日。
呼び出された喫茶店のコーヒーの香りと、テーブルの向こうで俯きがちにしていた君の姿。
そして、テーブル越しに差し出されたゴディバのロゴの付いた小さな紙袋と、初めて聴いた君の泣きそうな声と、そして――。
(――たまには僕からあげてみるかな)
ゆっくりと遠のく意識の中で、僕は君を見つめながらふと考える。
薔薇の花束って、いくらくらいで買えるんだろうか、って。
(了)
Inspired By 『もしも僕が……』(Permanent Fish)
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