自分のために新幹線に乗るのはたぶん初めてです。 -2024年9月6日の日記
今、新幹線に乗っている。
出発は東京。目的地は仙台。
モナ・リザの横顔―明日行われるadoのライブ―に向かう。いわゆる遠征と言うやつだ。
全国ツアーで千葉や東京にも候補地はあったが、この度チケットを取れたのが仙台公演のみだったため、まさかの仙台ひとり旅。
西は香川県から、東はそれこそ仙台まで。車で向かったことはあるが、それは僕以外の思惑も絡む、いわば巻き込まれ型の遠征だった。
それらの旅も得難く楽しいものだが、今回は100%自分のためだ。自分で企画し、自分で旅程を吟味し、自分だけで向かう。
自らの趣味のために自らこんな遠くの地へ赴くのは初めてだ。
今までの趣味の遠征最高記録は大学生の時候。東京に住んでいた頃、ウイスキーにハマったのが高じて山梨の白州蒸溜所に足を運んだ時だった。その最高到達点でさえ、電車とバスのみで行けた。
故に今日、新幹線に初めて自らの意思で乗ることになった。
もちろん、誰かに連れられたり、古くは学校の修学旅行だったり、新幹線に乗ることはこれが初めてというわけではない。
しかし、連れられて乗るのと自分で切符を用意して乗るのとでは、だいぶ心持ちが違う。
東京から仙台までは電車で向かうことも可能だし、何なら車やバスでも行ける。
その中で値段の高い新幹線を選択することに、特別感を感じずにはいられない。今回の旅は特別なんだ。
特別なのでより思い出に残るように駅弁も買った。選んだのは東京弁当という、東京中の老舗がそれぞれの得意分野を持ち込んでできた、オールスター的弁当。
よしよし。特別な旅に相応しい弁当だ。値段は2000円。
高い……!しかし、ここで中途半端な1300円くらいの弁当で妥協するのが一番良くないことを、僕はなんとなくわかっている(この特別な場においてのみふさわしくないだけで、その手の弁当が味値段ともに優れていることまで否定するわけではない)。
こういうときはとびっきりの贅沢品か、安く最低限、簡易的な食事の二択だ。今日は前者を選んだ。
身に余る「贅」を携えて新幹線に乗りこむ。
現金ながら自分の金できっぷを買ったので、新幹線の時間には普段より注意深くなってしまう。
席につくと、まわりの乗客が次々と駅弁を広げ、食事を始める。
この状況って、新幹線ならではだ。電車とは明らかに違う、圧倒的なレジャー感。
みんなが食べ始めてくれるおかげで、知らぬ人が隣にいるにも関わらず、僕もそこまで気負わず食事を楽しむことができた。
プシュッと、お酒を開ける音もちらほら聞こえる。…僕も買っておけばよかったか。
せっかくの東京弁当の味がぼやけるからと飲み物は水にしたが、いざプシュを聞くとそんなの関係なしに自分もちょっと飲みたくなってしまう。人間は単純。
オールスター弁当(意訳)なだけあって、それぞれのおかずのパワーが強い。弁当には、このおかず手が込んでてうまいね〜という、当たり枠みたいのがたまにあるが、この弁当は全てのおかずが当たり枠に該当する。爆発力はないが、しみじみと、うまいね〜。と思う。そんな弁当だ。
煮物のかぼちゃ、ごぼう。それと銀だらの西京漬けが特に美味しかった。
僕は幕の内弁当のような、いろんな具材があるのをゆっくりと楽しみながら食べるのが好きだ。
ちょっと高いが東京弁当にしてよかったな。苦手な具材もなく、だいぶ好きな部類だった。
ただ、おかずパワーが強すぎて、ご飯がもっと欲しい!となったのは唯一の玉に瑕ポイント。
全部味濃かったし、お酒のアテにしながら食べることも想定されてたんかなぁ…と思っていると、またプシュの音。
くそ…やっぱり僕も、お酒買っておくべきだったか…?
いやいや、今回の旅の本番はこれから。
翌日のライブも楽しみで仕方がないが、今日は久しく会えていなかった友人と2年ぶりくらいに会うことになっている。
お酒は彼と食事をするときにでもまた検討すればいいだろう。
初めての新幹線、初めての駅弁。久しぶりに会う友人。一度しかない特別な旅は始まったばかりなのだからなのだから、ほろ酔いになるにはまだ早い。
そうこう書いてるうちに、もうすぐ仙台だ。
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