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フェイク について -企画展「Material, or 」を見て-

ファッション界や食材の世界における「フェイク」は「代替」という言葉に置き換えられ、限られた資源を補う社会的価値を持ち始めた一方で、
依然として建築やインテリア界隈でのフェイクのヒエラルキーは、少なくとも私が実務に関わっているなかでは低いように感じます。

設計者との打ち合わせするなかでは私も盲目的にホンモノの木材を使いたがり、
木目がプリントされた化粧板だと『小口の収まりが偽物丸わかりで…』などとそれらしい常套句を使ってフェイクを非採用にする言い訳を捏造したがる。
でも予算上、ホンモノを採用できる場所は限られていることが十中八九。

今まさに担当させていただいているPJTでも、内装仕様とコストの調整をしており、こんな場面と幾度となく対峙しています。

そんな折、7/15(土)から21_21 DESIGN SIGHT にて始まった企画展「Material, or 」を早速見に行ってきたのですが、
ここで目に留まった『尊い偽物。』というキャッチコピーと、展示されたプロダクトに心を奪われました。

本多沙映さんという作家さんの「Cryptid」という作品で、フェルティング技術を応用し、廃棄されるはずだったフェイクファーのはぎれを、毛を絡ませながら繋ぎ合わせたものとのことです。
ランダムネスを内包する複雑なパターンはフェイクでありながらどこか自然発生的で、「代替」であることすら超越し、リアルファーでは持ちえない価値を提案されていました。

今までの私のメンタリティを言語化すれば、「ホンモノという権威への憧れが捨てられないけど、コストや機能性の視点で、ホンモノを放棄せざるをえない場合の足掻き」をしていたのだろうと顧みました。

素材の作り手によってフェイクがホンモノとは別の感性価値を帯びたのが先の企画展の事例です。
もう一方で、あらゆるホンモノが入手しにくい昨今では、フェイクをどう使うか、設計者の方々や私のような採否に関わる人間たちの編集力も求められる時代を迎えているのだとハッとさせられました。
まず一歩目は、フェイクという言葉をネガティブな意味として捉えない、使わないことからかなあ、、、。


2023年3月に開業したOMO関西空港のOMOベースには、巨大な飛行機のオブジェがあります。
映画のスクリーンのようにチェックイン家具によって細長くトリミングされたなかで燦然と輝く「フェイク」。前泊後泊で利用されるエアポートホテル特有の「旅とは分断された退屈な夜」をひとつ押し上げてくれる装置になってくれると期待しています。

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