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13.くさいはっぱ
前から両親に聞いてはいたが、新事実発覚した話。
我が父は、和の薬味にするもの…葱に柚子、茗荷、三つ葉、そして紫蘇等を好んで食べる。
それ故なのか、私は、ようやくひとり歩きを始め、覚えたての言葉でおしゃべりする幼児の頃には、既に「くさいはっぱ」として紫蘇を認識していたそうだ。
紫蘇は青紫蘇、スーパーでは「大葉」として売られてるあれだ。
かつて聞いた話では、「パパのすきなくさいはっぱ」と言って、どこかから種が運ばれて道端に自生している紫蘇を、よいしょと引っこ抜いて、父のために家まで持って帰ってきてたというものだった。
が!
つい最近聞いた話は、だいたいの筋は合っているのだが、ちょっとだけ内容が違っていた。
「小さい子どもなら、紫蘇の匂いなんか嫌がりそうなのに、自分から近づいてって匂い嗅いで『くさいはっぱ』って言って引っこ抜くぐらい、紫蘇の匂いを気に入ってる変わった子だったんさね」という具合に。
「父のために」という親孝行な話は、長い年月の中でいつしか「紫蘇の香りが好きな幼児」と変化していた。
それは母曰く、私が小さい頃は両親も20代前半。紫蘇を薬味として、料理に使うということを知らなかったから、私が引っこ抜いたところで当初は使い方がわからず途方に暮れていた…ということなのだ。
どっちにしても、私が成長する過程で、ポプリにハマったり、ハーブを買ったり育てたり、アロマが好きだったりするルーツは、道端に自生してたその紫蘇にあったということなんだろう。
そして、駄洒落みたいだが、その紫蘇の子孫は、今も我が家の庭に自生している。
父が幼児だった私が引っこ抜いてきた紫蘇を鉢に植えておき、家を引っ越するたび、新居に紫蘇も引越しさせていたんだそう。
もちろん、常に鉢植えではなくて、庭に植えて放ったらかしだから、種がこぼれて自生して、毎年必ず育っていく…この繰り返して50年弱。
「うちの紫蘇は、おまえが道端に生えてんのを引っこ抜いたやつが元なんさな」
父が楽しそうに話す。
私自身には子どもがいないけれど、自分では無意識のうちに紫蘇の命を紡いできたようだ。
そして、私も薬味が大好き。
父からの遺伝子はしっかりと受け継いでいる。