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11.絵本のリズムを感じた⁉︎甥っ子のマンガ初体験

甥っ子が3〜4歳でなんでも知りたがるお年頃だったある日。
私が着ているTシャツの絵を指差して言いました。

「おばちゃん、これなぁに?」

そこには漫画の神様・手塚治虫さんのユニコが描かれていました。

「ユニコだよ」

「ゆにこってなぁに?」

「ユニコはマンガだよ」

「まんがってなぁに?」

「ええっ!そこから教えないとダメ⁉︎」

彼のママ曰く、アニメは観るけどマンガ本の存在はまだ教えていないとのことでした。
物心ついた時には既にマンガを読んでいた伯母の私。
思い立ったら吉日と、甥っ子にマンガを見せることにしました。

無難なところで…と、本棚から『あたしンち』を手に取り、あることに気付きました。

子どもといっても高校生のみかん、中学生のユズヒコが中心の展開なので、例えばお隣の幼児・たっくんがいる話でもユズヒコの視点で描かれています。

あれ?
意外と小さな子ども向きじゃないかも?

そんなことを考えていたら、無言になっていたようで、「おばちゃん…」と私を見る甥っ子も不安顔。
「ごめんごめん、ちょっと待ってて」と慌ててパラパラとチェックした中から「これならわかるかな?」と思った話を見せました。

【甥っ子、初めてのマンガ体験】を共にできることにワクワクする私をよそに、彼は本を静かに見つめています。

やっぱり難しかったかな…
そう思った矢先に彼から出た一言はこれでした。

「おばちゃん、もういっかい」

『あたしンち』が、甥っ子のこれから始まるであろうマンガ読書の門戸を開放した瞬間でした。
甥っ子はあきもせずに、同じマンガをずっと見て、途中からクスクス笑っていました。

こちらがそのマンガです。

朝日新聞出版 けらえいこ
あたしンちベスト6巻【伝説の母】
『はさまる母』77&78ページより

この挟まり続けるタチバナ母が、甥っ子のツボだったようです。
大人だと1回読めば、ドジだなぁ〜で終わる話だけれど、よくよく考えたらこの挟まり続ける展開は、絵本によくあるパターンです。

絵本がお好きな方は思い出してみてください。
起承転結はあれど、絵本って案外、同じテンポやリズムを持つ文章の繰り返しが多いですよね。

絵本作家の方々が、これを意図して制作されているかはわからないけれど、なんとなく絵本のセオリーなんでしょうか。

「起」「承」で流れる同じリズムが、
「転」でちょっとだけ崩れて、
「結」でまた起承と同じリズムに戻って
安心感で終わる♪
国内外問わず、そんな物語が多いように感じます。

『あたしンち』は、絵本のセオリーとは逆に、日常生活の中に起こる些細な起承転結が絶妙におもしろいマンガです。
しかしながら、おそらくこの話だけは絶妙な起承転結の中に、絵本に近い繰り返しのリズムがあったんですね。
それが絵本大好きな甥っ子のハートをぎゅっと鷲掴みにしたのかもしれません。

そう考えると、甥っ子の初マンガ体験に「これ」と、この話を選択したこの時の私の選球眼は、オババカだからなせる天才的本能だったのかもしれません。

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