3.会話は言語も時間も越える?
できることなら、誰かと会話する時は絶妙なキャッチボールが理想だと私は常日頃思っています。
ワンバウンドになっても、暴投でも、緩急ついても、相手がパシッとキャッチできて、相手からの返球も絶妙ならば、なんでもアリでいいのです。
その、なんでもアリの「アリ」について、とても興味深い現象が今までにありました。
例えば…
2人いる姪っ子達が、幼児だった頃のこと。
1人は、口が達者でおしゃまさん、とにかくびっくりするほど饒舌で、もう1人は1歳年下なのもあるけれど、まだ話せる語彙が少ないので、割とリアクション表現。
そんな2人が一緒に遊ぶ様子は、大人から見たら全然全く話が噛み合っていませんでした。
でも、一定の会話が終わるとそれぞれがお互いの顔を見て「ね〜♪」と笑い合うのです。
2人の間ではどうやら通じ合ってるようなのです。
目と目で会話する『アイコンタクト』とも違う、ハートのキャッチボールとでもいいたくなるよななんでもアリ会話をしてました。
そして私自身の体験。
カナダのプリンス・エドワード島へ一人旅した時、お世話になったB&Bのおじさんと、なんでもアリな会話がありました。
彼の日本語は「コンニチハ」「アリガト」ぐらいです。
そして、私の英会話といったら、同じ宿に泊まっていた日本人女子が「よく一人旅する気になりましたね…」と呆れる程度。
それ故に私は、女子たちに通訳頼んで日本語で話していたのですが、彼女たち曰く、それを伝える前におじさんが、私の日本語を理解して、即、答えていたそうなんです。
「おねえさんとおじさん、私が通訳しなくても日本語と英語なのに、明らかに会話が成立してる!それでみんな通じるなら、留学必要ないですよ!」
女子たちはそう驚いていました。
私たちは、お互いの母国語を超える会話をしていたのかも知れません。
そんな記憶を思い出したのは、タチバナ家・お父さんの会話の返事から。
普段から無口であまり喋らないし、時々お茶目なことしたり、家族が呆気に取られる行動もするけれど、昭和チックな家族愛を持っているお父さん。
なんですが!
家族(特に母)との会話には答えるのに時間がかかるんです。
それも翌日、もしくは数日後、全くその話題となんの脈絡もない関係ないところで、ヒュッと答えるんです。
たいていの人だったら、「あの時のアレは…」とか前振りが付いて、相手がわかってから話が始まると思うんですが、前振り一切なし。
言われた方はなんのことやらとポカーン…。
思いっきり時間軸がズレていますけど、本人は全く気にしてません。
家族との会話に律儀に答えているだけ。
時間という概念にとらわれず、言葉が空間を旅しているかのように自由なスピードで会話するキャッチボールもアリなんですね。
あなたはどんな会話のキャッチボールが好きですか?
朝日新聞出版 けらえいこ
あたしンちベスト3巻 父の愛情編
『夫婦の会話』52ページより