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<CDを売ろう!>その6

~制作予算について~

さてCDを売って”利益を上げる”ためには「予算管理」されたCDを作らなければならない。

「5曲入り1500円で目標販売数300枚、売上額45万」という例を今までも使っているので、これに乗っ取っていこう。

「曲も出来た。アレンジも考えた。よーしレコーデイングだ!」

ちなみにあなたがDTM(今時はDAW、なんの略だ?)に精通しているならば、全てそれで作るという手がある。

「自分には音楽の才能がある。コンピュータもお手のもの。シーケンスソフトも自由自在。アレンジ能力だって負けちゃいない。ピアノもギターもちょっと弾ける。自宅でシコシコ打ち込むぞ、だって今までの機材の投資額ハンパないし」
と言う方は、後はスタジオ借りて、歌とどうしても必要な生楽器を入れるだけで音源なんて出来ちゃう。

MIXも自分、マスタリングも自動。CDRに焼くのが大変だけど、毎日少しづつやればいい。ジャケットだって手書きかPCでちょちょいさ。

これなら、45万なんて掛かるはずはない。

4~5万で出来る。
リクープラインが30枚に下がる。なんと10分の1!

それで良いと思う方は、今すぐこのページを閉じるか、このシリーズその1から読み直してください。
でもまあ稀に、それで素晴らしい音源作っちゃう方もいますよね。ついでに何百枚も売っちゃうような。
あなたがそういう方なら、全く構いません。

また「何でそれじゃダメなの?」と思う方は、本当に正しい音楽を作ってるか自問自答してみて下さい。
前回その5に挙げた「良い演奏」や「良いアレンジ」がその音源に含まれるかどうか、考えてみてください。
子供の頃、音楽が大好きになった時の曲やアルバム、もう一度聴いてみてください。

さて、話は戻して、予算は45万だ。

内容(やりたい事)と費用はたいてい相反する。

あなたがシンガーソングライターの場合、名うてのプロミュージシャン使って、リズム録りが出来るスタジオ押さえて、ベテランエンジニアに録って貰えば、その金額は一日で消える。

でも、きっと良い極上のリズムトラックが録れる。

ええ、ちょっと無理すれば5曲くらい録れますよ。
あとは各種ダビングして、歌入れして、MIXして、マスタリングだけ。
それであと幾ら掛かるかな?アレンジ料含めて150万位かな?

うわ!自分で書いてビックリした!やすっ!めちゃリーズナブル!
5曲入りミニアルバム、そんなんで出来ちゃうの?最高じゃん!

なーんて思えるのは、ふた昔前の話。でもそういう時代だった。

今、メジャーメーカーでもノータイアップ新人では、この5曲入りミニアルバムの制作費200万弱をリクープできない。
営業・販促・宣伝頑張っても、全国でイニシャル数100枚行かない。
これ現実です。売れるのはアニメ・ゲーム系だけ。トホホですな。

なので真っ当な音楽で自主制作を考える方たちは、5曲を45万で完パケして、上記のようなレコーデイングクオリティが得られる方法を考えなければいけない。
「費用対効果」の効率を数倍上回る方法をだ。

まず45万からジャケット制作費とプレス費用を引く。安くて早くて良いレベルの業者を見つけて、500枚作ってまあ10万かな。

残り35万。これで5曲の音源作ってマスタリングまでやる。
ここから先は緻密な作業が必要になる。

レコーデイングで最も重要な事は、音源制作と予算管理の主導権を誰が持つかである。
バンドがメンバー間でアイデア出しながら、曲や音源を仕上げていくのは、珍しくはない。バンドの経験があれば、あなたもよくご存じだろう。

あのビートルズもそうであった。

ただし彼らの録音現場には常にジョージ・マーティンが存在した。

ジョージ・マーティンはプロデューサーという役職だったが、紛れもなくアレンジャーでもあったし、エンジニアですらあった。
彼はジョンやポールの曲のみならず、レコーデイングすべき曲を選び、彼らと一緒に様々な歌詞やアレンジのアイデアを提案し、録音し、判断し、修正し、そしてMIXやシングルやリリース日を決断した。

ビートルズのデヴューアルバムは「予算管理」上、10曲をたった一日で録ったんですよ、知ってますかー?

まああっという間に売れたので、その後はお金は使い放題だっただろうが笑。

このようなソングライターとミュージシャンとそれ以外のスタッフによる役割分担は「予算管理」含めて、古今東西どこでも行われてきた。

リスナーなど第三者の視点を持ち、ミュージシャンだけのレコーデイングに陥りがちな「オーバープロデュース」と「エゴ」を防ぎ、無駄を省くことにも目が向けられ、より良い方向性を指し示す存在。

日本では「ディレクター」と呼ばれた。

そしてヒット曲を輩出するチームとして、彼らは結果を残してきた。
もちろん英米では今でも当然の如く、インディからメジャーに至るほとんどのレコーデイングが、そのようなチームで行われている。

なぜ、あなた方はその有効性を利用しないのだろうか?

答えは簡単だ。そんな予算管理まで含めたプロデューシング(ディレクション)が出来るスタッフが、日本にほとんど居なくなったからだ。


現実として、今現在自主製作レヴェルのレコーデイングの費用内訳は、ほとんどアレンジ担当者(ミュージシャン)の采配による。

バンドでみんなが、好き勝手言ってやり直ししてたら、まず予算内に収めるのは無理だ。
あなたやあなたのバンドがアレンジャーを兼任する場合はまだしも、他の誰かにアレンジやプロデュースをお願いするのなら、まずそのギャラ設定だ。

予算すら用意しないで、多くを望むのは必ず失敗に終わる。

ここで挫折する人が多いが、最も重要で考慮すべき部分なのだ。

ギャラを取ってアレンジする人はあなたが思ってもみなかった素晴らしいサウンドを構築・提供してくれる場合がある。

すなわち「良いアレンジと演奏」だ。

まあ、バンドの場合、弾けないメンバーが出てくる可能性は有るが笑。

信頼できる「プロデューサー・アレンジャー」がもしもあなたの周りに居て、その方が「予算管理」能力をお持ちならば、残り35万をえいやっと預けるのも手である。

もちろん「予算管理」能力には「コネクション力」が相当量含まれる。
ミュージシャンやスタジオやエンジニアのコネクションである。
バラバラで組み合わせて収める方も、スタジオすらお持ちで、そのほぼ全てを一人で行う方も存在する。

これはどれが良いとは言えない。あまりに選択肢が広がるからだ。

実は35万あれば、5曲をマスタリングまで仕上げてくれる方は、数多くいる。
ヘタすれば10万でやってくれる人も居るかも知れない。

しかし、それで果たして「良い音源」になるかどうかの保証は無い。

満足する「良い音源」にするためには、少なくともあなたに完成音源に対する「具体的な要望」が見えており、それを「聴き分ける耳」と、様々な音楽の「共通言語」を「プロデューサー・アレンジャー」とお互い持っているかの確認が必要となる。

そうでなければ、あなたの自宅での打ち込みデモ音源の方が、まだましという笑えない事態になる可能性もある。

あなたやあなたのバンドが満足する外部の方と出会えるのは、もはや「縁」次第と言うしかない。

さて、ミュージシャンはプロデュース能力及び「予算管理」を含むマネジメント能力を自ら持つのが圧倒的に得策なのだが、あなたは「内容の良い」CD制作を予算内で出来るであろうか?

このシリーズいつまで続くんだろう?笑

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