【政策】妊娠期からのオンライン相談の導入について
こんにちは、鎌倉市を「もっと!子育てが楽しいまちへ」を目指して活動している久保田むつみです!
この記事では、「産前産後の孤独孤立をなくす」ための政策のひとつとして、「妊娠期からのオンライン相談の導入」について書いていきます。
私が力を入れていきたい政策のひとつが、「産前産後の親の孤独孤立問題」に関することです。
私も、自身が出産してみて初めてわかったのですが、産前産後って女性にとっては本当に変化が大きく、長い人生の中でも最も大変な時期のひとつだと思います。
妊娠期から出産後まで、身体も精神も不安定、そして常に睡眠不足の中での育児。特に初産だと初めての育児でわからないことだらけで、命を守り育てることに対するプレッシャーもすごい。こうした心身の負担の中で、妊産婦は多くの葛藤を経験します。
10人にひとりが「産後うつ」になる
「産後うつ」という言葉を、ご存じの方も多いと思います。
産後うつとは、気分の落ち込みや楽しみの喪失、自責感や自己評価の低下などの症状が現れること。
発症の背景要因としては、うつ病の既往の他、パートナーからのサポート不足など育児環境要因による影響も大きいとされています。
(出典:公益社団法人 日本産婦人科医会HP)
この「産後うつ」、なんと10人にひとりはかかると言われています。
鎌倉市は年間約800人の出生数があるので、ざっくり年間80人の妊産婦がこの「産後うつ」になっていることになります。(多胎の場合などで必ずしも出生数=産婦数ではないので、だいたいですが)
そしてこの「産後うつ」は、産婦の自殺や、母親とこどもの間の愛着障害やこどもの発達の遅れ、こどもへの虐待とも関連するとされており、この産後うつの発症を未然に予防することは非常に重要です。
(出典:公益社団法人 日本産婦人科医会「妊産婦メンタルヘルスマニュアル)
妊娠期からの介入で「産後うつ」のリスクを減らせる
この「産後うつ」は、妊娠期からの介入によってリスクを減少させることができることがわかっています。
2021年に横浜市で行われた研究によると、「妊娠中からオンライン健康医療相談サービスが利用できる妊産婦」と「利用できない妊産婦」では、「利用できる妊産婦」の方が産後3か月時点での産後うつの発生リスクが約3割低くなり、また「孤独感」を感じる割合も低くなったそうです。
出典:横浜市 令和 2・3 年度オンライン健康医療相談 モデル事業における 妊産婦産後うつ予防効果に関する研究委託 研究結果報告書(2022)国⽴⼤学法⼈東京⼤学 ⼤学院医学系研究科
※わかりやすい資料はこちら↓
「オンライン健康医療相談サービス」とは何か?というと、妊娠中~産後の期間、LINEやビデオ通話などで産婦人科医、助産師、小児科医などに妊娠中の身体のことや、産後の育児について相談できるサービスのこと。使い慣れたLINEで相談できるので、「病院に行くほどでもない」「ちょっと気になる」くらいの相談や悩み事を、仕事終わりのわずかな時間や、移動中など、気軽に相談できます。
妊娠中は仕事をしていていると通院や電話での相談もなかなか時間が取れなかったりしますし、産後も赤ちゃんを連れての通院や電話相談はハードルが高いので、LINEで気軽に相談できるのはかなりありがたいサービスだと思います。
わからないことだらけの初めての育児に不安になり、「検索魔」になったり、SNSで同じ月齢の赤ちゃんと比べてしまって焦ってしまったり。そんな経験がある方も多いのではないでしょうか。
そんなとき、LINEで気軽に専門家に相談できたら、心強いと思いませんか?
今の周産期のサポート体制はどうなっている?
では、現状の鎌倉市の周産期のサポート体制はどうなっているのでしょうか?
手厚くなってきているサポート体制
私自身、2020年に第2子、2024年に第3子と2回の出産を鎌倉市で経験しましたが、第2子、第3子の出産を比較して、とてもありがたいことに行政からの支援体制は「厚くなっている」と感じています。
手厚くなったことのひとつ目が、「妊婦健康診査の追加券」ができたこと。妊婦健診は、補助券があっても手出しが発生することが多いのですが、2024年4月以降、今までの補助券に加えて30,000円分の「追加券」がもらえるようになりました。出産はお金がかかるので、これは本当にありがたいです。
ふたつ目は、「産後のお母さん向け配食サービス」が始まったこと。1食あたり500円の「サ―ビス利用券」が30食分もらえ、地域の事業者さんがお弁当を届けてくれるというサービス。これも第2子のときにはなかったサービスなので、とてもありがたいなと思いました。
そして三つ目は、「伴走型相談支援及び出産・子育て応援給付事業」が始まったこと。これは、2023年から全国的に実施されている事業になりますが、自治体が妊産婦に対して、妊娠期に2回、出産後に1回の面談等の相談支援を実施し、また併せて10万円分の「出産・子育て応援給付金」がもらえるというもの。
鎌倉市では、「妊娠の届け出時の面談」「妊娠8か月頃のアンケート回答」「出産後の乳幼児全戸訪問」の3回、面談やアンケート回答が用意されています。
このように、手厚くなってきている出産前後の支援。鎌倉市で子育てする親としてもとてもありがたいなと思います。
では、「オンライン相談」はどうでしょうか?
「妊産婦へのオンライン相談」は抜け落ちている
現在、鎌倉市独自で導入しているオンライン相談はありません。
神奈川県で行っている近しい事業として、「プレコンセプションケア相談」や「妊娠SOSかながわ」というオンライン相談サービスはありますが、「プレコンセプションケア相談」は妊娠前の男女を対象とした相談サービス、「妊娠SOSかながわ」は予期しない妊娠に関する悩みを抱えた方への相談サービスとなっており、妊産婦がちょっとした困りごとや気になることを相談できるサービスはありません。
先ほども触れた3回の「伴走型相談支援」はあるものの、そのうち1回はアンケート回答のみ、対面での相談は2回だけ。
刻一刻と変わる妊娠期の身体や、出産直後の赤ちゃんのケアや発育について、気軽にオンラインで相談できる事業は鎌倉市ではないのが現状です。
もちろん、通っている産院や、市の保健師さんに電話等で相談することは可能ですし、私自身も市の保健師さんに赤ちゃんのお世話や生活の困りごとについて相談させていただいた経験もあります。
しかしそこからさらにひとつ支援の輪を広げて、オンラインでの相談支援を実施することが、妊産婦の産後うつの発症を未然に防ぎ、妊産婦のこころとそのこどもを守ることに繋がります。
この記事の中で触れている妊産婦を対象としたオンラインによる相談サービスは、すでに全国で多くの自治体で導入されており、神奈川県においても南足柄市、大井町、箱根町で導入されているようです。
同様のサービスの導入を、鎌倉市でも導入してほしいなと思います。