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「子育てペナルティ」トレンド入りで思うこと
昨日の夜から、Xで「子育てペナルティ」という言葉がトレンド入りしています。
稚拙かもしれませんが私の考えを書いてみたいと思います。
東京大学の山口教授らが発表した研究結果で、出産した女性は出産していない女性と比べて賃金が大幅に低くなることが示され、それが「子育てペナルティ」として夜のニュースで取り上げられたそうです。
Xでの投稿を見るとほとんどがネガティブな反応で、
「そんなことわかってて産んだんでしょ?」
「こどもがかわいそう」
「働く時間が減っているのだから当たり前」
「子持ちと子無しの分断を煽るな」
といった書き込みが多くみられました。
まずこの「子育てペナルティ」という言葉は今回急に出てきたものではありません。
働く母親と、こどもを持たない女性との間に賃金格差が生じる状況を示す「チャイルドペナルティ」という学術用語が以前から存在しており、2023年にノーベル経済学賞を受賞したゴールディン教授もこの言葉で同じ現象を説明しています。
おそらく、「チャイルドペナルティ」という言葉は、「チャイルド」=「こども」によってもたらされるペナルティ、というニュアンスが強すぎるために、今回は「子育てペナルティ」という言葉に置き換えられたのかな、と想像ですが思いました。
また、日本においても末富芳先生・桜井啓太先生が著者「子育て罰 『親子に冷たい日本』変えるには」の中で「チャイルドペナルティ」を「子育て罰」という言葉で捉え直し、批判的に説明しています。
私自身、子育てを始めて、「子育てしながら働くって、なんでこんな無理ゲーなの…?」と思っていた頃にこの「子育て罰」と言う言葉に出会い、自分が置かれている状況は社会現象なんだなと腹落ちした部分があったので、今回この「子育てペナルティ」という言葉が、こどもがいる人・いない人双方からこんなにもネガティブな反応を浴びているのが不思議に思いました。(批判的な人が積極的に発信しているから目立つというのもあるかもしれませんが)
私が今回の報道に関して思うのは、「こういう現象がある、ということを、ネーミングの良し悪しはさておき、みんながまずは受け止めよう」ということと、「その上で、日本に待ち受ける労働力の不足、少子高齢化という問題を考えたときに、社会はどう変わっていくべきなのか(変わる必要はないという選択肢もあるけど)をみんなで考えようよ」ということです。
今の社会に「子育てペナルティ」は確かに存在する。「そんなもん、わかってて産んだんでしょ?」というのも、子育てが自己責任とされる、今の社会ではある意味現実なんだと思います。
でもその社会は、変わる必要はないのですかね?
「女性活躍」の号令のもと、働く女性が増えたはいいが、女性は家庭と仕事との両立に引き裂かれるような思いをしながらなんとか日々をこなし、労働市場では「安い労働力」として買い叩かれる。
子持ち男性は労働市場において有利で、子持ち女性は不利になる。
男性が育児に参加したくてもそれを許さない労働市場。
私は変わるべきだと思いますよ。
子育てに限らず、介護や自身の病気などで、誰もが当たり前に長時間労働をこなすことができなくなる可能性があります。そういった人たちをあらかじめ想定した働き方の設計が必要ではないでしょうか。
また、「子育てかキャリアか」の2択を迫られる社会では、ますますこどもを産みたいと思う人がいなくなり、シンプルに社会が終わります。
また、働き方改革と併せて、育児による収入減があっても安心してこどもを産み育てられるような経済的支援もあるべきだと思います。
日本のジェンダーギャップ、幸福度の低さ、こどもの自殺の多さ、出生率の低さ。
これを見ても「社会は変わらなくていい」と思いますか?
「子育てペナルティ」という言葉の強さに反射的にネガティブ反応をするのではなく、今の社会でこの子育てペナルティが存在するという事実を受け止めながら、今後の日本社会をどうデザインするべきかという、建設的な議論になったらいいなと思います。