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平凡なワーママが不倫沼にハマった。
私が婚外恋愛に足を突っ込んだのはかれこれ10年ほど前のことだ。
あの頃私は30代半ば、まだまだ性欲が旺盛で夫にもっとかまってもらいたかった。
自分から夫を誘ったことも何度もある。
応じてもらえる時もあったが、断られることも何度もあった。
まだまだ女性として見られたいお年頃だった私にとって、自ら誘ったのに夫に断られるというのは、かなりショックで傷ついた。
そんな時の憂さ晴らしに使っていたのが、ツーショットチャットだった。
こんな悩みはリアルの友達にも打ち明けられないので、どこぞの見知らぬ誰かに聞いてもらうのが一番気楽だった。
お相手の男性はみんな、優しい言葉をかけてくれた。
そして大半の男性は言うのだ。
「僕の悩みと同じだね」と。
ツーショットチャットにやってくる既婚男性もまた、奥様と仲が悪いわけではないのだけど夜の生活に満足していなかったり、中には関係が冷えていたりと、心のどこかにすきま風が吹いている人がほとんどだった。
同じ悩みを共有して、下ネタをちょっと話して、その場限りのチャットを楽しんだら「じゃ、さよなら」と別れる。
これだけなら別に問題はなかった。
ある時、ツーショットチャットにふらっと遊びに行くと、気になる待機メッセージを見つけた。
待機メッセージとは、ツーショットチャットルームで待機している人がどんな人に入室してほしいかを掲げているものだ。
どこかに入室してお話しようと思っている人は、この待機メッセージを見て、楽しい会話ができそうだな、普通の会話ができそうだな、というのを判断する。
だからこの待機メッセージというのは結構手腕が問われるのだ。
ツーショットチャットにハマっていた私からすると、
「雑談しませんか?」
のような毒にも薬にもならないようなものは相手の個性が全く見えないので即スルー対象だった。
ちなみに「雑談しませんか?」も、
「雑談しましょう」
「雑談しよー」
「雑談しよ」
のように書き分けられる。
「雑談しませんか?」とか「雑談しましょう」のみの人は、初対面の人にいきなりタメ語では話さないくらいの常識は持ち合わせていますよアピールくらいにしかならない。
これだけのメッセージの人は雑談しましょうと言っているのに会話が弾まない人がまあまあいた印象だ。
次に「雑談しよー」のみの人。
これは若い人の可能性が高くて敬語とか関係なくフランクに話したいタイプかな、と判断していた。
「雑談しよ」のみの人も同じような感じなんだけど、「雑談しよー」よりは若干軽くなく、若いとも限らないイメージだった(個人の感想です)。
「雑談しませんか?」のみのひと言メッセージの場合、即スルーなんだけど、この中でどこかに入室しなさいと言われたら、私なら「雑談しよ」の人のところに行く。
なんとなく堅苦しくなく優しそうな印象を持つから。
つまりたったひと言のメッセージでも、入室する側にこれだけのことを想像させるものなのだ。
だから待機メッセージはとっても重要。
ちなみに、私がチャットルームを作り待機したこともあるが、女性の待機ルームは争奪戦になってしまうため、すぐに話し相手は見つかるけれど話したいタイプの人が入室してくれる可能性は低かった。
話がずいぶんそれた。
ある日見つけた気になる待機メッセージは、
「いけないと思いつつもここへ来ちゃった人」
というものだった。
これだけのメッセージだったけれど、このメッセージから「この人は多分普通の人」と嗅ぎ分けた。
結果は、大正解。
ごくごく普通の子持ちサラリーマンの方だった。
チャットでの話口調も優しく、思いやりもあり、いい意味でとても普通だった。
それでいてノリも良く、話も合うのですぐに意気投合した。
この人とまた話したい、と思った。
だけど連絡先の交換などはせず、また話せたら話そうね、で退出した。
夫に公表できない間柄の男性と連絡先を交換するというのは、この当時の私にとってルール違反だったからだ。
チャットで見知らぬ男性と会話するのはセーフだけど、それ以上はダメという線引きだった。
その後、また憂さ晴らしでツーショットチャットルームに訪れた時。
私は見つけてしまった。
「いけないと思いつつもここに来ちゃった人」
というメッセージを。
彼だ!
チャットルームではいつもその場限りの会話をして、同じ人と話すということはほとんどなかった。
意気投合した彼とまた話せると思い入室すると、彼も歓迎してくれた。
家庭の話や夫婦関係の話、今までに話したチャット住人の変人の話などで盛り上がっていた時、彼が教えてくれた。
「『いけないと思いつつもここに来ちゃった人』という待機メッセージにしておけば、既婚者なのにツーショットチャットに遊びに来てしまっていることを「いけないこと」だと認識してる人が入室してくれるでしょ?罪悪感ゼロの人はちょっとイヤだな、と思って」
なるほど。
彼も女性をうまくふるいにかけていたのだ。
彼と話せば話すほど、彼がごくごく普通のいいパパでいい夫であることがわかった。
だけど私と同じように夜の生活に不満があり、心にすきま風が吹いていた。
話せば話すほど境遇も似ていて、どんどん彼に惹かれていき、そしてとうとう私たちはメッセージアプリのIDを交換してしまった。
チャットで見知らぬ男性と会話するのはセーフだけど、それ以上はダメという自分の線引きを超えてしまった。
だけどこの時は、
「500㎞以上離れてて会えるような人じゃないんだし、文字で会話するだけならいいよね」
と思っていた。
人間、一度自分で線を越えると、
「このくらいならいいでしょ」「このくらいなら大丈夫」と思ってしまう。
そして恐ろしいことに、線を越えることに慣れてしまう。
それを繰り返していると、最初に引いていた線から少しずつ少しずつ遠ざかっていることに、その時は気づけない。
そして。
私は最終的にその彼と寝てしまった。
会うはずがない、会えるはずがないと思っていた500㎞以上離れている彼と、だ。
その話はまた後日。