僕と君 2 きまぐれねこ
僕はあいにく、ねこを飼ったことがないけど
もしも飼ってたら、こんな風なんじゃないかなって、君を見てる。
じゃれるけれど、べたつかない。
気が向かなければ、よってこない。
その惑わすような気まぐれ。
その容赦のない強情さ。
*
君は赤ちゃんのくせに、起きている時はじっとだっこされるのがきらいで
すぐにするりと僕の手から逃げて、ころがっていく。
まだやっと首がすわって、寝返りをはじめたばかりのくせに
独立心いっぱいの、めんどうな赤ちゃん。
いやだと思えば去っていき
気が向けば、ほっといてもそばによってくる。
僕がねむくてソファーで転がってたら
いつのまにか胸の上にのって、すぅすぅ寝ている。君はねこ。
*
夜、君を寝かせるのは一苦労。
昼間とまるで逆で、だっこしてあげないと寝なくて。
寝たかなと思って、ベビーベッドに置こうとすると
とたんに、ぱちんと目を覚ます。
そのままゆっくり撫でてあげても、わーっと泣き出す。
あのね、そこは独り立ちしてもらっていいんだよ。
結局、また抱きあげなくちゃか。
ママは毎晩、この子をだっこしては着地に失敗して
腱鞘炎にかかってしまって、腕に包帯ぐるぐる。
しまいには諦めて、自分のベッドの中で体に乗せたまま
朝まで一緒に眠ってしまっている。
ああ、ゆうべも何もできなかったって、斜め上を見つめる。
睡眠たっぷりとれてよかったねと言うと、にらまれる。
今夜はリビングで、いつのまにかひざの上で寝たから
寝かしつけ成功と、ベッドに持ってくと
ああ、また。背中にセンサーでも入っているのかな。
*
ママのお気に入りのだっこ紐は
生成り色に紺のラインが入っていて、赤ちゃんを入れると
まるで宇宙飛行士のよう。
僕はおもしろがって
「2001年宇宙の旅」や「スターウォーズ」のテーマを歌いたくなる。
そのまま階段を一気に駆け上がって
2階の寝室の銀河に、連れて行ってあげよう。
ほら、お腹の中を思い出して、宇宙遊泳の夢でも見て
しずかーに揺られて、ゆっくり眠ってごらん。
この任務が完了したら、僕はだいすきな珈琲を飲むんだ。
そんな邪念が入ったことがばれて
また君は、ぱっちり目を開けた。